高齢になってからの住まい選びで気になることは何でしょうか?
介護が必要になったときに安心して生活できる環境なのか、十分な介護を受けることができるのか、という介護の面を気にする高齢者も少なくないでしょう。
特別養護老人ホームなどの公的な施設に入居できればよいかいもしれませんが、競争率が高いという現況もあります。
そこで、民間の介護施設を探すときに確認したいのが、「介護付き」「ケア付き」といった表示です。
実はこの表示、都道府県知事から「特定施設入居者生活介護」の事業者指定を受けなければ使用できないのです。安心の目安になる「特定施設入居者生活介護」について、知っておきましょう。
「特定施設入居者生活介護」とは?
「特定施設入居者生活介護」とは、介護保険法で規定された「特定施設」に入居している要介護者に対し、介護計画に基づいて提供する入浴、排せつ、食事などの介護や、日常生活上の世話、機能訓練と療養上の世話を指します。
「特定施設」とは、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅のうち、厚生労働省が定めた設備・人員・運営の指定基準を満たした施設です。
設備基準は、高齢者が車椅子になっても生活しやすいように全館バリアフリーで、手すりや緊急通報装置が設置されていることや、プライバシーが保護できる広さの個室、それに機能訓練室、共同の食堂や浴室があるなどを満たしていること。
人員基準に関しては、入居者3人に対して介護職員もしくは看護職員が1人以上、入居者50人までに対して看護師1人以上、管理者、ケアマネジャー、生活相談員、機能訓練指導員も1人以上が配置されていることなどが決められています。
そして運営基準となっているのが、「利用者の有する能力や問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営めるように支援すること」を目的とした介護サービスを行うことです。
サービス内容は、利用者の介護計画を立案し、食事、排せつ、入浴(1週間に2回以上の入浴か清拭)、離床、着替え、整容(歯磨きや爪切りなど、身だしなみを整えること)、安否確認、生活相談など日常生活の世話や相談にのるなどのことから、24時間体調の急変に対応するために協力医療機関との提携、機能訓練や療養上の世話を行うことなどが条件となっています。
これらの条件をすべて満たし、はじめて指定が受けられるのが「特定施設入居者生活介護」です。
そして、介護が必要になり、将来、要介護度が重くなったとしても安心して生活ができることから「介護付き」「ケア付き」の冠が付けられるのです。
つまり、「介護付き」「ケア付き」と表示がある施設は、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているということです。
例えば有料老人ホームの場合、「住宅型有料老人ホーム」では指定を受けていませんが、「介護付き有料老人ホーム」では指定を受けています。
施設選びのひとつの基準として、覚えておきましょう。
「特定施設入居者生活介護」のメリット
「特定施設入居者生活介護」のメリットは、特定施設にケアマネジャーが常勤しているため、入居者が自分で介護サービス事業者を探したり、契約する面倒な手間がなく、介護士から手厚い介護を受けられること。
そして、必要と考えられる介護が受けられるように、あらかじめ要介護度によってわかりやすい定額料金が設定されていることです(要介護1〜5の場合、日額500円〜800円程度)。
サービスの提供方法は、「一般型(内部提供型)」と「外部サービス利用型」の2タイプがあります。
「一般型(内部提供型)」は、特定施設のスタッフが24時間常勤して食事、排せつ、入浴から緊急時の対応、介護サービス計画まで行うタイプです。
「外部サービス利用型」は、介護サービス計画や生活相談、安否確認は施設で行い、介護サービスや入浴、リハビリテーション、通所リハビリテーション、福祉用具レンタルなどは、あらかじめ特定施設が契約している事業所が行います。
現状では多くが「一般型(内部提供型)」で、常勤のスタッフから手厚い介護を受けることができるのが、特定施設の大きなメリットといえるでしょう。
有料老人ホームには「介護付き」「健康型」「住宅型」があり、ケアハウスには「介護型」「自立型(一般型)」が、サービス付き高齢者向け住宅にも「特定施設」「一般型」があります。
さまざまな呼び名があり、わかりにくい面もありますが、「特定施設入居者生活介護」を知っていればホーム選びの目安になるでしょう。
介護が必要になった場合には、在宅介護と同じように訪問介護など外部の介護サービス事業所と契約しなければならい施設もあります。
入居者がどれだけ介護を必要としているかによって、どちらのほうが費用を抑えられるのかも変わってきます。将来の状況も考えながら選択するようにしましょう。