老人ホームへの入居を検討する時には、いろいろな疑問や悩みが生じるもの。老人ホームに期待することや、ゆずれない条件は十人十色、人それぞれ違います。よくあるお悩みからその人ならではのこだわりまで、老人ホーム入居に関する疑問に、オアシスナビ編集部がお答えします。
今回は、「老人ホームの場所はどこにすべき?」というご相談についてお答えします。
<相談者のお悩み>
父親が亡くなってから10年ほど、母は生まれ育った遠い雪国で1人暮らしをしています。80歳を過ぎ、本人も「不安だ」と口にするようになってきました。話し合った結果、老人ホームに入居することに決まったのですが、母は「寒いのはもうイヤ。どうせなら気候の良い土地で暮らしたい」と言っています。
娘である私の家の近くで暮らしてほしいという思いもありますが、私が住むのもまた寒さの厳しい地域。つまり、あまり知り合いも馴染みもない土地に行きたいと言うのです。母が住み慣れた土地、娘の近く、まったく別の母の望む場所、どこに決めるのが一番いいのでしょうか? (相談者:娘)
老人ホームの場所を決める5つの選択肢
老人ホームの場所を決める選択肢としては、主に以下のような分け方ができます。
(1)入居する本人が住み慣れた地元
(2)家族が暮らすエリア
(3)生活に便利な都会
(4)静かで落ち着く郊外
(5)自然に囲まれて暮らせる田舎やリゾート
これら5つの選択肢には、それぞれメリット・デメリットがあります。
入居する本人が住み慣れた地元ならば、知り合いが多いというメリットがある半面、家族が遠くに住んでいる場合には、行き来が簡単ではないというデメリットがあります。
高齢者本人と家族の住む場所が実際にどれだけ離れているのか、また、行き来の時間や交通費がどれぐらいかかるのかによっても違いがあります。
家族が暮らすエリアならば、家族はいつでも行き来でき、いざという時も安心です。
しかしその半面、高齢者の住む地元から離れていれば、昔からの友人との交流がしづらくなります。家族のいる地域では、新しい環境になかなか馴染めないということもあるかもしれません。
都会は便利でも静かではなく、郊外は静かでも不便と、裏表の関係にあるものです。
田舎やリゾートは、空気もきれいで自然が好きな人には絶好でも、加齢とともに病院通いが大変になるなどのデメリットがあるでしょう。
さらに、費用面では概ね便利な都会は高くつき、不便な地方は安いといった傾向もあります。
老人ホームの場所選びでは、5年後、10年後の想定を
老人ホームは入居にまとまった費用がかかる場合もあるため、簡単に退去できないこともあります。そのため、現在の気分だけで決めてしまうのは危険です。
5年後、10年後の本人の身体状況や家族状況などの変化を想定し、その時にどんな環境にいたいのかを想像してみることです。
また、その老人ホームを“終の棲家”とするのか、それとも状況に応じて住み替えることも前提とするのかによっても決め方は変わります。
もしリゾートなどを希望するのであれば、その土地の宿泊施設などに季節ごとに長めに滞在してエリアを歩くなどすると、居住イメージがより明確になるかもしれませんね。
温暖だと思い込んでいた場所が、冬は思った以上に寒いといったこともあるかもしれません。
できれば、希望する老人ホームに長めの体験入居ができればベストです。
さらに、「長く雪国に暮らしてきたから温暖な場所に行きたい」と思うのであれば、その雪国である地元を離れるデメリットができるかぎり薄くなる方法を、家族みんなで一緒に考えてみるのも良いでしょう。
例えば、地元の友人とのコミュニケーションは、スマートフォンのテレビ会議機能を使う、などです。
いずれにしろ、老人ホームの場所はどこがいいのかは、本人の希望や家族の状況によってさまざまです。
本人の希望を一番に、そして家族も納得できるように、メリット・デメリットを十分に理解し、話し合った上で決めることが不可欠といえるでしょう。
●老人ホームの場所選びについて、こちらの記事も参考に
→老人ホームを探す時、考えておくべき条件「どんな町・場所で老後を過ごしたい?」
<構成・文:髙橋光二>
老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
●本人と家族にぴったりの老人ホームを探すには → 良い老人ホームの「見つけ方・選び方」
●介護業界の著名人や有名人にインタビュー → 私が思う「良い老人ホーム」
