老人ホーム入居のきっかけは? 入居者はどんな日常を送っているの? 入居者同士やスタッフ、家族との人間関係は? 外からはなかなか見えにくい、老人ホームにまつわる人間ドラマをお伝えします!
今回は、「無口で人見知りでも大丈夫?」という話題について紹介します。
「“超”が付く無口」な母が老人ホームに入っても大丈夫?
老人ホームへの入居をためらう高齢者の中には、「人見知りだから」「集団生活が苦手」という理由を挙げる人も多いようです。
現在、都内の介護付き有料老人ホームで暮らす90代の女性Kさんも、家族からの「老人ホームに入ったら?」という提案を頑なに断ったひとり。
ところがKさんは今、施設内でとても充実した日々を過ごしているのだそうです。
20歳で結婚したKさんは、4人の子どもを授かり、人生を通じて専業主婦として生活。夫の死後はたまに自宅に遊びに来る孫に囲まれる生活を送っていました。
しかし、足腰が弱くなったうえ、視力も衰えてきたことを子どもたちから心配され、一人暮らしは無理だろうと老人ホーム入りを提案されました。しかしKさんの答えは「NO」。
当時の状況を娘のYさんが振り返ります。
「最初から『イヤ』って言うと思っていたんですよね。というのも、ウチの母は極端な人見知りで、“超”が付く無口。私が結婚して20年近く経つんですけど、私の夫とまともに喋れるようになるまで10年以上かかったぐらいなんです。
そんな母なので、『知らない人だらけの所に入るなんて絶対イヤだ』と。けれども、だだっ広い一軒家に一人暮らしをさせておくわけにもいかず、なかば強引に話しを進めてしまったんです」
無口な母は実は社交的だった?
入居に関してそんな経緯があったこともあり、母親の入居後は施設を頻繁に訪れていたYさん。
ところがYさんは、そこでほどなく意外な光景を目にするようになったのです。
「あれだけ人見知りだった母なんですが、施設を訪ねるといつも誰かとおしゃべりしてるんですよね。
そこで母に事情を聞いてみると、『一方的に相手が話してるだけよ』と言うんです。
ウチの母親はただ無口なだけなんですが、どうやら周りの入居者の方は、それを『口が堅い人』というふうに捉えてくれたみたいで、自分の家族や他の入居者や職員などへのグチを全部ウチの母に話しているようなんです。
私はてっきりイヤイヤ聞いているのかと思ったんですけど、母は『聞いてて面白いわよ』と。自分で話すのが苦手なだけで、ゴシップ話は好きだったんですね(笑)」
そんなKさんだが、施設では今やちょっとしたアイドル扱いなのだそうだ。
「母はとにかく人のために身体を動かすのが好きな人なんです。お茶を入れたり、机をササッと拭いたり、ちょっとした縫い物をしたりといったことをまったく厭わないんですね。
どうやら施設内でもそういった性格は変わらないみたいで、そうしたことを続けているうちに、すっかり信用を得たようです。
私が施設を訪ねると、他の入居者の方や職員さんから感謝の言葉を言われるようになりました」
Yさんは、こういった母の姿を見て誇らしい気持ちになるそうですが、同時に「本当に母は人見知りだったのか?」と、今さらながら感じているのだそう。
生涯を専業主婦として過ごして来たKさんですが、Yさんは「母は人見知りでもなんでもなく、人と知り合う機会がなかっただけでは?」とも感じているのだそうです。
人見知りを直すのはなかなか難しいですが、心根の優しさがあれば周りはきっと理解してくれるはず。集団生活を上手に過ごす最大の秘訣は「他人への優しさ」のようですね。
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