老人ホーム入居のきっかけは? 入居者はどんな日常を送っているの? 入居者同士やスタッフ、家族との人間関係は? 外からはなかなか見えにくい、老人ホームにまつわる人間ドラマをお伝えします!
今回は、「引越したいけど老人ホームがネック」という話題について紹介します。
どうしても老人ホームにいる父の近くに引っ越したい
年を取った親の面倒を見るのが大変になった時、頼りになるのが特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの施設です。
そういった施設に親を預ければとりあえずは一安心ですが、なるべくなら頻繁に顔を出したいもの。そうなると施設の近くに住むのが得策ですが、それが難しそうな場合、どうすれば良いのでしょうか?
Tさんは現在40代で、昨年に子どもが生まれたばかり。これまでは新宿区の1LDKに夫婦で住んでいたTさんですが、3人ではいよいよ手狭になったため、引越し先を探し始めました。
Tさんはすでに母親を亡くしており、80代の父親は数年前から世田谷区の介護付き有料老人ホームで暮らしています。
引越し先は、Tさんの会社がある港区と、父親が住む世田谷区の中間地点あたりが候補となりましたが、そこで引越し先探しは暗礁に乗り上げます。
当たり前のことですが、払える家賃には人それぞれの上限があります。
Tさんの予算で「港区と世田谷区の中間地点」で「親子3人が住む広さの家」を探すと、見つかる物件はとてつもなく築年数が古かったり、著しく日当たりが悪かったり、駅から20分以上歩くようなものばかり。
Tさんは「毎月10数万円の家賃を払っても、こんな物件しか借りられないのか……」と溜め息をつき、日々成長する子どもを見て「どうすれば良いのか」と頭を抱える毎日を送っていました。
父親が老人ホームを引っ越せばいいのでは?
そんなある日、Tさんが仕事で常磐線に乗った時のこと。ふと車内広告に目をやると、葛飾区の新築マンションの広告が出ており、広さ・値段ともTさんの希望に合致したものでした。
調べてみると、そのマンションから会社までの通勤時間は、現在住んでいる家とほとんど変わりません。
さらにそのマンションの情報を調べてみると、驚くべきことに気づきました。
Tさんはこう語ります。
「パソコンでそのマンションの立地の地図を見てみたら、マンションのすぐ裏に老人ホームがあって、その老人ホームが父の入居先と同じグループだったんです。
そこで初めて、『父の施設の近くに引っ越すのではなく、自分が住みたい場所の近くに父を連れてくればいいんだ!』と気づいたんです。
何でそんな簡単なことに気づかなかったんだろうと自分でも思うんですけど、その時まで『父を移動させる』っていう発想がまったくなかったんですよね」
そこから先はトントン拍子に話が進み、めでたく新築マンションに住むことになったTさん。
父親は孫と頻繁に会えるようなったことに大変満足しているうえ、「同じグループなのに、世田谷区から葛飾区に移ったら、老人ホームの月々の費用が10万円近くも安くなった」そうで、Tさんは「まさに一石二鳥です」と、語っています。
『父親の近くにいたい』という“初心”を貫いたTさんの優しさは、見習いたいものです。
慣れ親しんだ地域から動きたくないという気持ちはよく理解できますが、もう少し柔軟な発想を持つことも大事なのかしれませんね。
●老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
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