老人ホーム入居のきっかけは? 入居者はどんな日常を送っているの? 入居者同士やスタッフ、家族との人間関係は? 外からはなかなか見えにくい、老人ホームにまつわる人間ドラマをお伝えします!
今回紹介するのは、「老人ホーム選びの決め手は夏の風物詩」です。
老人ホーム探しは暗礁に乗り上げた
海水浴、盆踊り、ビアガーデン、夏フェス……夏には夏ならではの楽しみがたくさんありますが、多くの人が楽しみにする夏の風物詩といえば、何と言っても花火大会です。
東京都に住むUさんとその母親は「花火大会」がきっかけで老人ホームを決めたそう。いったいどういうことなのでしょう?
Uさんは10年ほど前に結婚し、現在は夫と暮らす40代の女性。もともと一人っ子で母親と仲が良く、独身時代にはしょっちゅう母親とお出かけをしていたというUさんは、結婚後も頻繁に実家を訪ねていました。
数年前には父親が亡くなったため、母親は一人暮らしとなり、Uさんが実家を訪ねるペースはますます増えました。そして母親の年齢が80代に達した頃には、徐々に足元がおぼつかなくなるように。
「転んでケガをしてからでは遅い」と考えたUさんは、老人ホームに入居してもらうことを検討し始めましたが、施設選びはスムーズには運びませんでした。
Uさんはこう振り返ります。
「いろいろな老人ホームを見学して回ったんですけれども、正直どういう基準で選んでいいのかさっぱり分からなくって……。母も『ここはちょっと……ね』『なんか清潔感がないわね』などと、何らかの理由をつけて嫌がるばかりでした」
老人ホームで花火鑑賞?
そんな時に訪れた、ある介護付き有料老人ホームに、結果的にUさんの母親は入居することになります。それは7月のことでした。
「その時に見学に行った施設は、川沿いに建つ老人ホームだったんです。建物からは川の景色が見えて見通しもよく、母も気に入った様子でした。
一通り見学が終わると、職員の方が『今日は○○の花火大会なんです。ウチの屋上からも良く見えるんですよ』と教えてくれたんです。職員の方は、『もし良かったら見ていかれますか?』と誘ってくださって」
結局その日は花火を見ずに帰ったUさん親子でしたが、帰りの車中では、「花火が見られるのは良いわね」「花火大会の日は○○さんや××さんも呼べばいいわ」「特等席で見られるんだから」と、大いに盛り上がり、結局その老人ホームに決めたそうです。
「年に一度の花火大会の日に、その施設を見学した」という偶然も母親の背中を押したようで、Uさんも「運命の出会い」と感じたのだそう。
老人ホームを選ぶときは、慎重になることも大事です。費用や設備、立地、食事など、吟味すべき点はたくさんあります。しかし、最後の決め手となるきっかけも重要。Uさん親子にとっては、花火大会が見られるというのは、まさにその決め手だったのですね。
老人ホーム選びの中で迷った際には、“インスピレーション”に頼るというのも、それはそれで一つの方法のようですね。
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