老人ホーム入居のきっかけは? 入居者はどんな日常を送っているの? 入居者同士やスタッフ、家族との人間関係は? 外からはなかなか見えにくい、老人ホームにまつわる人間ドラマをお伝えします!
今回紹介するのは、「入居者の活躍で施設の問題が解決」です。
ご近所さんから施設にクレーム!
老人ホームに入居する高齢者の多くは、基本的に「人の手助けを必要とする人」。
職員が入居者の手伝いをするのは当たり前ですが、入居者が施設のために何かをするというケースはなかなか考えにくいものです。
しかし東京都のある介護付き有料老人ホームでは、施設で起きたトラブルを入居者が見事に解決しました。
その介護付き有料老人ホームは、入居者数が20人あまりという小規模の施設。そんな施設にある時、近所の住民からクレームが入りました。
職員のNさんは、その時のことをこう振り返ります。
「そのクレームとは、『ウチの子どもが、お宅の施設のあたりで虫に刺された』というものでした。そこで職員たちが調べてみると、施設の周りを取り囲んでいる生け垣に虫が発生していたんです。
気持ち悪い虫が大量に発生していて、みんなにパニックになっちゃって……。施設内が大騒ぎになりました」
入居者の知恵で一発解決!
「するとSさんという男性の入居者が『何を騒いでいるんだ?』と、尋ねてきたんです。
最初は『何でもないです』『いや、大丈夫ですから』とゴマかしていたんですが、Sさんが繰り返し尋ねてくるので事情を説明すると、Sさんは『(現場を)見せてみろ』と言うんです。
こちらとしては『刺された』という情報も聞いていましたし、『危ないですから』と言ったんですが、『いいから見せてみろ』と。そこで現場に案内すると、今度はSさんは『(携帯)電話を貸せ』と。どうやら自宅に電話をしているみたいなんです。
すると奥様が何かを持ってきて、Sさんは『この薬を吹きかけろ』と。すると瞬く間に“虫問題”は解決したんです。
実は誰も知らなかったんですが、Sさんはもともと園芸店を営んでおり、“虫関係”についてはプロ中のプロだったんです。
問題の虫は『チャドクガ』といって、Sさんによれば『珍しくもなんともない』虫。Sさんは奥さんに殺虫剤を持ってくるよう指示したんです」
Sさんはさらに、「かゆい箇所にガムテープを貼って虫の針を抜いて、その後、水で洗い流せ」と、処置方法も教えてくれたそう。誤って刺されてしまった職員は感謝しきりだったのだとか。
それ以来Nさんは、当り障りのない範囲で、入居者の過去を把握するようになったそうです。
老人ホームに入居している高齢者は、職員よりも人生経験が豊富です。高齢者本人がその知恵を活かし、「一緒に施設をより良くしていこう」と思ったなら、老人ホームはもっと快適な空間になるかもしれませんね。
