老人ホームへの入居を検討する時には、いろいろな疑問や悩みが生じるもの。老人ホームに期待することや、ゆずれない条件は十人十色、人それぞれ違います。よくあるお悩みからその人ならではのこだわりまで、老人ホーム入居に関する疑問に、オアシスナビ編集部がお答えします。
今回は、「認知症の親が老人ホームに入居するなら、どんなところがいい?」というご相談についてお答えします。
<相談者のお悩み>
母はおらず、ふたり暮らしの父は軽度の認知症です。いまは一人でも過ごせていますが、私には仕事があるので、症状が重くなったら心配です。近い将来、老人ホームへの入居も考えています。認知症に適した老人ホームはありますか? (相談者:娘)
認知症には、できるだけ症状の進行を遅らせるケアが重要
認知症とは、脳の細胞が死滅したり衰えることで、記憶や判断力などの働きが低下し、社会生活などに支障が生じた状態のこと。原因はさまざまです。
意識ははっきりしていても、目の前の家族が誰だかわからなくなる場合があるなど、社会生活全般に支障が生じます。
とはいえ、あらゆることがわからなくなるのではなく、脳の働きが部分的に失われているだけなのです。失われずに残った能力(残存能力)を見極め、生かし、できるだけ症状の進行を遅らせるようにしていくのが認知症ケアのポイントとなります。
そのプロセスでは、「相手の尊厳を傷つけない」「徘徊や妄想など認知症特有の言動に適応する」などの対応が求められます。また、認知症の人は、「大人数で人の出入りが多いような環境では、落ち着いて生活しにくい」といわれています。
では、認知症の人が安心して過ごせ、症状の進行をできるだけ遅らせるには、どんな老人ホームを選んだら良いのでしょう?
まず、おすすめなのは、なじみのある地域で、気心の知れた少数のスタッフや入居者と家庭的な環境で心穏やかに過ごすことができる「グループホーム」です。
家族的な環境で日常を送れる「グループホーム」
グループホームは、「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれています。その名のとおり、認知症の人が介護スタッフのサポートを受けながら、5~9名前後の少人数単位で共同生活を行います。なじみのある地域を離れず、家庭に近い環境で生活することができます。
入居者は能力や状況に応じて、洗濯、掃除、食事の準備や片付けの手伝いなどをして暮らします。自立に近い形で、家事などの役割を持ちながら生活することにより、認知症の進行を遅らせるなどの狙いもあります。
そういった趣旨の施設であることから、入居対象者はそのグループホームがある市町村の住民が基本。また、身の回りのことは自分でできることも求められます。
●「グループホーム」についての詳細は、下記のページも参考にしてください。
→「グループホーム」の特徴・メリット・費用
認知症ケアに力を入れる介護付き有料老人ホームも増えている
グループホームのほかには、認知症ケアに力を入れる介護付き有料老人ホームも、候補となるでしょう。高齢になると、物忘れや認知症に近い症状は多くの人が持っていますから、ほとんどの介護付き有料老人ホームで対応が可能です。
中には、特色ある認知症ケア、先進的なケアを行っている介護付き有料老人ホーム、または住宅型有料老人ホームもあります。
また、介護付きや住宅型有料老人ホームは、設備や食事、料金などがホームごとに大きく異なるので、入居する本人にマッチするところがある可能性も高いでしょう。
医療ケアが必要となった場合は
グループホームには、看護師がいないことがほとんどです。そのため、医療面でのケアが必要になると、退去しなければならなくなることもあります。
その場合は、認知症ケアと医療ケアが受けられる、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームに転居するのがよいでしょう。
なお、認知症の受け入れが難しいと思われがちな、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でも、中には認知症のケアを得意とするところもあります。このように認知症のケアに優れている施設があれば、入居の候補に入れてみるのもよいでしょう。
いずれにしても、行っているケアの内容や、認知症の入居者の割合など、詳細については、それぞれの施設に確認するようにしてください。
<構成・文:髙橋光二>
老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
●本人と家族にぴったりの老人ホームを探すには → 良い老人ホームの「見つけ方・選び方」
●介護業界の著名人や有名人にインタビュー → 私が思う「良い老人ホーム」
