ケアマネジャーから地域包括支援センター職員、ホームの管理者層から現場リーダーまで、幅広い層を対象に研修を行い、介護現場を元気にしている高室さん。人づくりと仕組みづくりを通し、「共存と共生」ができる社会を築くことをめざしています。
今回は、全国の老人ホームを見学してきた経験から、「良い老人ホーム」の選び方を、わかりやすく4回に分けて教えていただきました。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
○●○ プロフィール ○●○
高室 成幸(たかむろ・しげゆき)さん ケアタウン総合研究所代表
1958年京都府生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。講演やセミナーの対象はケアマネジャーから地域包括支援センター職員、老人ホームの管理者、民生委員まで幅広い層。むずかしいことをわかりやすく伝える講師として高く評価されている。著書・監修書多数。雑誌の連載も多い。主な人気の監修書に『もう限界!!』シリーズ(自由国民社)がある。施設向けのコンサルティングを行う日本ケアサポートセンターの理事長でもある。
まず、老人ホームの種類と特徴を知ること
――ひと口に老人ホームといっても、種類が多くて、違いがわかりにくいですね。

高室さんは、2010年に『もう限界!! 施設介護を考えるときに読む本』を監修。その他、多数の著書・監修書がある。
そうですね。みなさんが、一番よく聞くのが、「特養」という名前だと思います。特養、つまり特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体などによって運営される公的な介護施設で、現在では要介護3以上の方でないと入れません。中度から重度の寝たきり状態など、常時介護を必要とする要介護者の方が対象です。
この施設は「生活の場」として、入浴・排泄などの身体介護から生活の援助、レクリエーションまであり、看取りをしてくれるホームも増えています。
入居一時金は不要で、月々の利用料金も年金収入に応じて抑えられています。それゆえに入居待機期間が長く、都市部では1施設あたり100~300人もの入居希望者が待機しているところもあります。「なかなか入れない」と言われていますが、地方では待期期間が短い施設も出てきています。
入居しやすいのは、有料老人ホームでしょう。施設数も多いし、入居の要件も特養のように細かくありません。中でも、介護付き有料老人ホームならば、介護が必要な方でも安心できます。介護保険法では「特定施設入居者生活介護」という呼称になっていて、介護保険制度を使って身体介護や生活介護、機能訓練などをトータルに受けることができます。
ただ、最近は住宅型有料老人ホームも増えています。これは、介護サービスなどを「外付け」にするタイプです。住宅型では、ホームは食事や清掃などの生活支援部分のみを提供し、介護サービスは訪問介護や通所介護、福祉用具などを別途契約し利用します。お元気なときは介護サービスを使わず、必要になったらあとでプラスすればいいという利便性があります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も、介護を外付けするという面では同様ですね。ただし、サ高住は「賃貸式」なので、入居一時金がなく敷金のみ。介護や医療・看護サービスも自由に選べます。
今、住宅型有料老人ホームとサ高住の人気が高まっています。自由度が高いという点と入居時の費用が比較的低いからです。ただ、自由度が高いということは、「選ぶ目」が求められます。本人(家族)にそれなりの知識や決断力が必要となります。
入居一時金のチェックと見学は忘れずに
――有料老人ホームは、入居一時金が発生するところが多いですね。
そうですね。最近は、入居一時金が発生しないプランを設けているところもありますが、入居金を月額利用料に算入しているケースがほとんどですね。入居金や月々の利用料金が高額なところは、おおむね設備のよいところが多いのではないでしょうか。
入居一時金が1000万円以上するようなところは優雅で高級ですから、憧れる方は多いでしょう。ですが、ご本人の年金収入や資産に照らして、最期まで暮らしていけるのか、見極めることですね。100歳までお元気な高齢者が多い時代です。月々の利用料金が高額な場合は特に、長期間そこで暮らし、介護を受け続けていけるのかどうか、しっかり計算し決めてほしいと思います。
とはいえ、お金だけで決めるわけにはいきません。お金だけを判断基準にして、なじみのないところに行くのは、入居するご本人も、ご家族も大変です。なにかしら、「自分にとってなじみのあるホーム」(例:思い出の土地、憧れの土地)が探せたら、よいのではないでしょうか。
もちろん、老人ホームを決めるときには、必ず足を運んでください。見学だけでなく昼食などを試食させてもらうのもよいでしょう。ご本人もご家族も「お試し宿泊」ができるホームも案外と多いので、何日か過ごしてみると夜間の様子もよくわかりますからね。
<今回のまとめ>
高室さんが考える「良い老人ホームを選ぶために必要なこと」とは
・100歳まで生きることを視野に入れ、費用を計算する
・なにかしらなじみの要素がある老人ホームを選ぶ
・自由度が高い老人ホームを選ぶ場合は知識や判断力をつけておく
次回は、「良い老人ホーム」を、ハードの面から具体的に語っていただきます。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
*高室成幸さんの監修本『もう限界!! 介護費用を「1円でも安くしたい」ときに読む本』を、オアシスナビ書籍紹介記事で詳しくご紹介しています。
老人ホームを検討される方は・・・【初めての老人ホーム探しガイド】
現在老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
●本人と家族にぴったりの老人ホームを探すには→ 老人ホームの「見つけ方・選び方」





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