「高齢期のお金を考える会」に所属し、老後の暮らしのアドバイスを専門的に行うファイナンシャルプランナー藤村紀美子さん。ホームへの入居の資金についても詳しく教えてくれます。もし、資金が足りなければどうしたらいい? それも、さまざまな方法を提案してくれました。必読ですね!
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
○●○ プロフィール ○●○
藤村 紀美子(ふじむら・きみこ)さん ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(CFP)。宅地建物取引士。立教大学文学部、中央大学法学部卒業。結婚し、2人の子どもをもうけた後、ファイナンシャルプランナーに。その後、夫の赴任をきっかけにアメリカに転勤。子どもたちが成人して以降は、気に入ったアメリカに移住し約8年を過ごす。2007年に帰国した後は、セカンドライフの住まい、住み替え、お金の問題を中心にセミナー、執筆、相談を受けている。「高齢期のお金を考える会」メンバー。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(鈴木暁子氏と共著、有楽出版社刊)がある。
持てる資金の範囲内で、老人ホーム選びを
――入居にかかるお金は、ホームによってさまざまです。ホームの形態や種類によっても違いますね。

藤村さんが所属する『高齢期のお金を考える会』のホームページ
そうですね。公的な施設である特別養護老人ホームなら、年金額その他に応じ、月々の費用が決まるので、資産を取り崩さなくても入居できる場合が多いでしょう。2015年8月からは、資産が1000万円以上ある人、年金額の多い人などは、これまでとは違って利用料金が引き上げられる場合がありますが、安心できる範囲だと思います。また、介護付きケアハウスも、比較的安価に利用できます。
認知症型グループホームですと、入居金が数十万円、月々の利用料が15万円程度というところが多いですね。ところが、有料老人ホームですと、ホームによって、料金もサービスも本当にさまざまです。
入居金ひとつとっても、50万円ぐらいのところもあれば、数千万円のところも。これは、建設費や設備費を入居費用に転嫁する形をとるためでもあります。したがって、高級を売りにするところと、親しみやすさを特徴とするところとでは、入居金も利用料も、かなり変わりますね。
見学すると、やはり利用料金が高いところのほうが、総じて居心地がよさそうに思えてきます。しかし、例えば入居金が1500万円、月々の利用料金がひとり25万円だとして、夫婦で84歳から入居するとなると、
1500万円+(25+25)万円×12カ月×15年として、100歳までに1億500万円必要になります。
この金額から、
年金額×15年+預金
を引いた金額が、マイナスになれば、資金が足りないことになります。あなたの場合はいかがでしょうか。
ホームによっては、入居金がもっと少なくて、月々の利用料金をもう少し高く支払う払い方や、入居金ゼロで月々の利用料金にその分をすべて反映させるところもあります。しかし、どれをとってもトータルで考えるとそれほど差がない場合もあります。いずれにしても、有料老人ホームの場合は、持てる資金の範囲内で入居先を決めたいですね。
資金が足りないときは? JTIやリバースモーゲージを利用
――しかし、それにしても資金が足りないこともあると思います。そうした場合に、何か方法はありますか?
もし、不動産を持っているなら、それを資金にすることができます。総務省の調査によれば、65歳以上の世帯の84.9%は持ち家なのだそうです。資金繰りに利用できるご家庭は多いということですね。
一番簡単なのは売却することかもしれません。または、自宅を賃貸する方法もあるでしょう。このほかに「一般社団法人 移住・住み替え支援機構(JTI)」の「マイホーム借り上げ制度」を利用し、自宅を終身借り上げてもらう方法もあります。一般の賃貸とは違い、最長35年で受け取り額を定額保証したり、借り手がつかない空室時にも賃貸料を保証してくれたり、安心材料が多いのが魅力です。一般の賃貸よりも賃貸料は低くなりますが、3年ごとに解約することもできます。解約すれば、また自宅として利用できる可能性も高くなります。
ただし、この制度を利用する場合、50歳以上であることが条件になります。ほかにも、「新耐震基準」(1981年6月)の適用以前に建てられた住宅の場合は、耐震診断、水回りの不具合、雨漏りの検査を受け、必要な場合は補修しなければならないなど、条件がありますので、注意しましょう。
また、もうひとつ、リバースモーゲージという仕組みを使うこともできます。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にしてお金を借りる方法です。公的機関、ハウスメーカー、銀行などが取り扱っています。預金はないけれど家はある、といった場合には非常に有効です。お金は生きている間には、返す必要がありません。亡くなった後、遺族などが手続きをして担保不動産を売却し、その代金で一括返済することになります。
ただ、課題としては、老人ホームに長期間入居し、リバースモーゲージを利用する期間が長くなればなるほど、借りるお金は多くなります。借入額が不動産の評価額を超えてしまうと、融資がストップすることも考えられます(各社ごとに条件は異なります)。
私がお勧めしたいのは、自宅を売却し、一部屋程度の小さな中古マンションを購入して賃貸すること。売却と購入の差額は有料老人ホームの入居一時金に、マンションの賃貸料は有料老人ホームの月々の支払いの一部に充てる方法です。万が一の場合、ホームからマンションに戻ることもできます。
自宅に帰れる選択肢は、できたら残しておきたいですね。

『100歳まで安心して暮らす生活設計』より
<今回のまとめ>
藤村さんが考える「老人ホーム入居のための良い資金計画」とは
・JTIの「マイホーム借り上げ」で賃料保証をしてもらいながら賃貸する
・リバースモーゲージを上手に利用。お金を使いきらないように注意する
・できれば小さな住まいを残して入居すると、万が一の場合、帰宅することができる
最終回の次回は、藤村さんが考える良いホームの選び方をお伝えいただきます。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
*藤村紀美子さんの著書『100歳まで安心して暮らす生活設計』を、オアシスナビ書籍紹介記事で詳しくご紹介しています。
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