フリーアナウンサーとしてさまざまな仕事をする岩佐まりさんは、ふたつのデイサービスを使いこなしながら、若年性アルツハイマーのお母様をシングル介護しています。在宅中心の介護ではありますが、デイサービスやショートステイがなければ、仕事との両立はできないといいます。そんな日々の中で、まりさんが考える「良い老人ホームとは?」 忌憚のない意見を聞いてみました。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
○●○ プロフィール ○●○
岩佐まり (いわさ・まり)さん フリーアナウンサー
1983 年、大阪府生まれ。フリーアナウンサー。ケーブルテレビのキャスター&レポーターや、ネットチャンネルの司会などを務める。2003年から物忘れが始まった母を、2009年一時介護、そして2013年から本格的にシングル介護を始める。2009年に、介護の様子や気持ちを綴ったブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」を開設し、介護で苦しむ人をはじめ、これまで介護に縁のなかった人にも感動を与える。2014年以降、数々のテレビ番組でも紹介され話題に。2015年6月にブログと同タイトル『若年性アルツハイマーの母と生きる』(KADOKAWA)の著書も刊行。
ブログ『若年性アルツハイマーの母と生きる』
ふたつのデイサービスをかけもちする
――若い女性が働きながら、若年性アルツハイマーのお母様を家中心で介護するのは、本当に大変ですね。

まりさんのブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」。日々のエピソードが赤裸々に。そうそう!と共感したり、笑えたり、ホロッときたり
はい。デイサービスがなければ、とてもやっていけません。今、母は通常の朝から夕方までのデイサービスのほかに、私の仕事が夜半などになると対応してくれるデイサービスと、ふたつを利用しています。そちらは夜中の12時まで預かってくれるので、仕事が長引いたときなどには助かります。
また、介護士さんにすすめられて、週に1度、緊急でなくても、ホームにお泊りしてもらっています。「介護を長く続けていくためには、特別な用事がなくても、休息や気分転換のために週に1度はお母さんと離れて、ゆっくり眠ったほうがいいですよ」と言ってくれて。
最初は、「私が遊んでいる間に、母が私と離れて宿泊するなんて」と、抵抗感が強かったのですが、いざお願いしてみると、週に1度ぐっすり眠れ、ときには友達と飲みに行ったりすることもできるので、私の健康面でもとてもプラスになっています。
――老人ホームへの入居、というのは、考えていないですか?

出かける時は、いつも二人で手をつないで。積極的に外出する仲良しの二人
入居タイプのホームでは、ひとりひとりに完全に合わせるような個別ケアは難しいんじゃないかと思います。どうしても、ある程度集団で行動することになりますよね。
特に、母の場合は若年性アルツハイマーでまだ67歳。通常の特養やグループホームに入居しても、自分ひとりが若くて体力が余っている、というふうになりますよね。すると、体力を持て余すのではないかな、と思うんです。
デイサービスでのレクリエーションも、母にとってはあまり運動にならなくて。筋力がどんどん衰えて行くんじゃないかと、心配になります。
それに、体を十分に動かさないと、夜眠れなくなることもあって。だから、帰宅後に買い物がてら出かけたり、休日に遠くまでレジャーに出かけたりしています。
若年性アルツハイマーの情報はまだまだ少なくて。通常のアルツハイマーとは違う脳トレの方法があるかもしれないな、と思いますが、実際にはなかなかそうした情報が入ってきませんね。だから、私が母の性格や行動を熟知して、母に合わせた介護をしたほうが、母は幸せなのかな、と思うのです。
――まりさんのように介護力が高い人が家族でしたら、在宅介護はとてもうまくいきますね。でも、家族の介護力が低かったり、介護しているうちに疲れ果ててしまったりする場合には、プロの介護力を頼ってもいいのかもしれません。
そうですね。ホームか家族か、という問題ではなく、要は、安心できる環境を整えれらればいいのかな、と思います。
母は、お風呂に入っているときなどに、「まりちゃんといると安心するのよね」なんて言ってくれます。うれしいですね。母を主役にして、介護の方法を考えているからかな。
経営者より現場の「人」が大事
――まりさんは、「安心できる良い老人ホーム」とはどんなところだと思いますか?
そうですね、デイサービスでも入居タイプのホームでも、結局、スタッフさんの力だと思うんです。ホーム内が清潔であるのは基本ですけれど、べつに、新しかったり、豪華だったり、さまざまな設備がある必要はないんじゃないかな。それまでの生活に近い形で暮らせるなら、十分。
それより、働いている人がどれだけ勘がよくて利用者さんひとり一人の要求や希望がわかるか。マニュアルに添って働いているのではなくて、自分の意思を持って対応してくださる方がどれだけいるか、ということではないでしょうか。生意気ですみません(笑)。
――ホームを運営する事業者や経営者が、きちんとした経営理念を持っているかどうか、ということも大切ですか?
たしかにそうでしょうけれど、私は現場のリーダーに注目します。現場の方が、利用者本位のケアをしてくださっていれば、利用者さんはみんな安心できるのではないでしょうか。
認知症であっても、利用者側は、そのへん、よくわかっていると思いますね。母は普段「イケメン介護士が好き」なんです(笑)。でもイケメンでも、ハートのない人にはやっぱり関心がないみたいですよ。家に迎えに来るスタッフさんでも、「この人はわかってくれる」という方が来ると、ぱっと顔が輝きます。やはり、心が通じ合える介護士さんと出会えるかどうかが、良いホームかどうかの鍵になると思います。
それと、本人のことだけではなくて、家族のことも考えてくれるところがいいですね。私が今、母をお願いしているデイサービスは、どちらも私のことをとてもよく考えてくれます。私に息抜きが必要だからと、お泊りをすすめてくれたり、介護保険の利用点数をオーバーしそうになると、利用のしかたをアドバイスして、負担を少なくしてくれたり。そういう心遣いがあってこそ、こちらも信頼感を持って利用できます。
<今回のまとめ>
岩佐さんが考える「良い老人ホーム・介護施設」とは
・現場のスタッフが、利用者本位のケアをしているホーム
・利用者が安心して過ごせるホーム
・家族の健康や、利用料金の負担減も考えてくれるホーム
最終回の次回は、岩佐さん流の「ホームとの付き合い方」を中心にお話していただきます。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
*岩佐まりさんの著書『若年性アルツハイマーの母と生きる』は、オアシスナビ書籍紹介記事で詳しくご紹介しています。
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現在老人ホームや高齢者向け住宅を検討中の方は、こちらのページも、ぜひ参考にしてみてください。
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