老人ホーム選びのポイントを、プロの知識と経験から教えてくれるこの企画、小川利久さんの4回目のテーマは「看取り援助」です。特別養護老人ホームだけでなく、有料老人ホームや認知症グループホームでも、看取り援助を行うところが増えてきました。まさに「終の棲家」です。最期まで過ごす場としてふさわしい老人ホームとは……? 専門家の意見にじっくり耳を傾けてください。
*このインタビューの1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
○●○ プロフィール ○●○
小川 利久(おがわ としひさ)さん エイジング・サポート実践研究会 代表

新潟大学農学部林学科卒業後、現 (株)長谷工コーポレーション入社。住宅販売・企画、有料老人ホーム・シニア住宅の事業企画等を担当。民間企業創生期の有料老人ホームを立ち上げる。その後、民間シンクタンクにてマーケティング手法に基づくシルバー事業等の企画やコンサル業務を経験し、2001年、現 社会福祉法人きらくえん法人事務局長に就任。ここでは個室ユニット型のモデル的事業として特別養護老人ホームけま喜楽苑を立ち上げる。2006年より社会福祉法人ファミリー理事 法人本部長。東京都公募に採択され特養「ハピネスあだち」を立ち上げ、施設長を8年間務めた後、退職し、エイジング・サポート実践研究会設立。東北大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センター東京分室(SAIRC東京分室)スマート・エイジング・カレッジ東京事務局長、NPOエイジング社会研究センター理事、一般社団法人日本ウエルエージング協会理事。エイジング・サポート実践研究会 代表
利久(Rikyu)の「エイジング・サポート実践研究会」ブログ
看取り援助を“きちんと”行える老人ホームを選びたい

施設長当時、行っていた「看取り援助家族座談会」。看取りを控えた家族と、施設長や看護師が一緒に語り合う。家族の揺れる気持ちや不安に寄り添い、情報を共有しながら看取り援助に向き合う場。
介護はいのちに寄り添う行為だと私は思っています。その総まとめとも言うべきサービスが、「看取り援助」です。
かつて、看取りは、自宅で最期を迎えることでした。あるいは、入院中に病気を治しきれなかった人に対して病院が行うものでした。しかし、老人ホームが「住まい」になった今、自宅の代わりに、ホームで看取り援助を行うことが増えてきました。私が施設長をしていた特別養護老人ホームでも、150人のご入居者のうち、70人に看取り援助対応をしていました。
看取り援助には、ご入居者本人やご家族の意向確認能力も含めた技術や経験が必要です。嚥下の状態の観察、医療の見極め、連絡のタイミング、そして最期を援助するための死生観。経験の少ない介護職員では、落ち着いて対応することができず、ご家族以上に動揺したり、あとあとひきずったりしがちです。
――つまり、「看取り援助」がきちんとできる老人ホームは、質が高いと言えるのでしょうか?
もちろんです。看取り援助がきちんとできるということは、さまざまな過程を経て、終の棲家としての機能を最後まで果たしていることになります。ただし「きちんと」というのが重要。老人ホームでお亡くなりになるという物理的な「数」だけでなく、その内容が重要だと思います。
迷いや不安、時には、痛みや苦しさを感じるご本人・ご家族の心によりそいながら、安らかに死を迎える。複雑な思いを重ね、悩みながら決断するご家族に、説明やアドバイスを行い、少しでも後悔のないようにサポートする。それらをきちんとできるホームであることが重要なのです。
老人ホームが看取り援助を行うにあたって、まず必要なのは、ご家族との深いコミュニケーションです。看取り援助の実績があったとしても、詳しい説明ができなかったり、質問に真摯に答えてくれない場合は、質が高い看取り援助が行われていない可能性があるでしょう。
良い看取り援助をするホームは、介護職員と看護師などが連携できている

小川利久さんが、百数十名の看取り援助の現場に立ち会ってきた経験やその事例を綴った著書。ご家族に人生の最期が近づいた時に、判断の助けになりそう。
――看取り援助では、医師や看護師とのやり取りも多いですね。
看取り援助はさまざまな専門職と連携をし、協働することが求められます。特に、老人ホームの看護師の判断をあおぐ場合が多いでしょう。
配置医師との連携もまた、欠かせないものです。ご入居者おひとりおひとりの気持ちになってケアを徹底すること、ほかのご入居者にも看取り援助を理解してもらうことなど、本当にさまざまな人との関係性を良い形にすることが必要なのです。
そうして、たくさんの人たちと連携し、協働する力がある老人ホームは、よい看取り援助ができるといえるでしょう。
――看護や介護の深い知識も必要ですね。
そうですね。ですから、看取り援助がきちんとできる老人ホームは、誤嚥性肺炎や転倒、その原因で起きる入院も少ないと言われています。看取り援助を繰り返すことで、個別ケア技術も上がっていくのですね。
<今回のまとめ>
小川利久さんが思う「良い老人ホーム」とは…
・きちんと看取り援助を行っていること
・利用者家族と良い関係を築いていること
・介護職員・看護師などの関係がよく、連携がとられていること
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4回にわたった小川利久さんのインタビュー、いかがだったでしょうか?老人ホーム選びのヒントが、たくさんあったと思います。是非、参考にしてください。
次回のインタビューは映画監督・作家の安藤桃子さん。お父様は奥田瑛二さん、お母様は安藤和津さんという芸能一家の中で、家族の介護を経験され、その経験から発想を得た小説「0.5ミリ」を出版、映画化。主演の介護ヘルパー役に実妹の安藤サクラさんを迎えた話題の映画のお話や、ご自身の介護観などをご紹介します。
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