有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム……老人ホームの種類はさまざまです。
どの老人ホームを選ぶか、どんな基準で選ぶか迷ったら、以下のような3つの視点で考えてみましょう。
視点1.老人ホームの費用で考える
施設による費用の違い
どうして老人ホームってこんなにも費用に違いがあるのだろう? そう感じる人は少なくないでしょう。
「老後の家」には2つの側面があり、それが費用にも影響します。
ひとつは基本的な生活を支える「福祉」の側面。もうひとつは暮らしやすさに配慮した「利便性や快適性」の側面です。
このふたつのどちらを重視するかは、事業者の理念や考え方などによって比率が違ってきます。
「福祉」の考え方からは、「基本的なサービスを備えつつ費用負担の小さい福祉施設」が生まれました。主に自治体などの公的機関が運営しており、特別養護老人ホームなどがこれにあたります。
「利便性や快適性」の考え方からは、「快適な居住空間と十分なサービスを備えた自宅感覚の住まい」が生まれ、有料老人ホームなど、主に民間事業者が運営しています。
また、立地や建物の仕様、提供されるサービスも、費用を大きく左右する要素です。
例えばまったく同じ建物でまったく同じサービスを提供する施設であっても、都心のほうが地方よりも高くなる傾向です。これは地価や人件費にかかる費用などが異なるためです。
提供されるサービスの手厚さによっても費用が変わってきます。
施設の種類別でみると、費用にはさほどこだわらずに施設や付加サービスの充実度を望まれる方にはシニア向け分譲マンションや有料老人ホームあたりに選択肢が広がっています。
他には賃貸方式のサービス付き高齢者向け住宅は手頃な費用のものも多くあり、幅広い費用設定がみられます。 認知症を抱える方にはグループホームの検討もおすすめです。
捻出できる費用が少ない場合には、経済支援を主目的にしている養護老人ホーム、要介護度の重い方中心に低額で利用できる特別養護老人ホーム、自立型の軽費老人ホーム、要介護の方向けのケアハウスなどが検討できるでしょう。
老人ホームでかかる費用
かかる費用の意味を理解すると、入居者本人にとって何が重要・不要かの判断がしやすくなります。
費用は大きくは「入居時費用」と毎月かかる「月額費用」のふたつに分かれ、さらに細分化すると以下の4つに分けることができます。
1. 入居時費用
2. 月ごとにかかる施設利用料
3. 月ごとにかかる食費を含む生活費
4. 月ごとにかかる介護や医療のサービス費
「1. 入居時費用」は、有料老人ホームの場合は「入居一時金」と呼ばれます。「ホームに対する利用権と介護などのサービスを受ける権利の取得費用」です。
金額は、数十万から数千万まで幅広く、最近では入居一時金0円という施設も増えています。施設によって、費用負担が少ないところから高級ホテル並みまで、選択肢にも大きな幅があります。
なお、サービス付き高齢者向け住宅などといった賃貸の場合も、敷金のような扱いで入居時にまとまった費用が必要な場合がほとんど。分譲マンションの場合は、最初に物件の購入費用が必要です。
「2. 月ごとにかかる施設利用料」は、いわゆる家賃のようなものです。居室の広さなどによっても変わります。
「3. 月ごとにかかる食費を含む生活費」は、生活をする際に発生する費用です。食費は、施設によって基本の施設利用料に含む場合と含まない場合があります。
安いと思ったけれど「食費が含まれていなかった!」ということもあるので、必ず確認しましょう。
「4. 月ごとにかかる介護や医療のサービス費」の介護サービス費は、要介護度によって設定されています。どのような老人ホームや高齢者住宅を選択しても、介護費用(介護保険適用サービスの場合は1~3割負担)は実費として見ておくべき経費になります。
医療サービスも、血圧や体温測定などの日常的な健康管理であれば、介護保険サービスの範囲で提供が可能です。また、24時間看護師が常駐し胃ろうなどにも対応できる老人ホームも増えてきました。
月日が経てば要介護度が上がるかもしれませんし、医療への依存度も高くなるかもしれません。将来を見越して費用を計算しておくとよいでしょう。
視点2.老人ホームの介護サービスで考える
介護サービスがある?ない?
「自立して日常生活が送れる方」。老人ホームや高齢者向け住宅の入居条件には、しばしばこのような条件が含まれていることがあります。
「自立できているかどうか」とは、食事作りや入浴の補助など部分的な援助はしてもらうとしても、就寝・起床、身のまわりのこと、食事をとるといった日々の生活の大半を自分の力でできることです。「自立型」と呼ばれる各種の住宅や施設は、こうした方々をイメージしています。
一方で、寝たきりではないにせよ、日常生活の多くの時間に介護を必要とする場合は、「自立」ではなく「介護が常時必要な状態」と考えるべきでしょう。
「介護型」と呼ばれる施設は、こうした方々の生活をサポートするために、施設内で常時介護サービスを提供できるような仕組みをとっています。
「自宅で過ごす感覚で日々を暮らし、介護サービスは必要に応じて利用する」という方には、シニア向け分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどのタイプが視野に入るでしょう。費用負担はタイプによって違いますが、いずれも生活自由度の高い施設です。
介護サービスは基本的に訪問介護サービスなどを利用する形態ですが、施設として医療機関や介護サービスとの連携を図っているところもあります。
「介護を提供する施設に入居する」場合には、介護付き有料老人ホーム、グループホーム(認知症の方限定)、特別養護老人ホームなどの施設で、施設による介護サービスを提供しています。
視点3.老人ホームの医療サービスで考える
医療ケアは必要?
医療と介護……わたしたちの「安心」に大きな役割を持つこのふたつの分野は、どちらも社会保険制度に支えられたサービスです。
以前は、「医療は病気の治療をするもの」、「介護は生活を助けるもの」として分けられていましたが、近年は両者を連動したものとしてとらえながら、その境界で働くつなぎ役として「介護施設」に期待する流れが生まれています。
介護保険が適用される在宅介護サービスの中に、補助的な医療を提供する訪問看護や訪問リハビリなどの医療系サービスが組み込まれているのもその一例です。
医療ケアが必要な方が老人ホームへ入居するときには、その施設で受けたい医療ケアが受けられるかを事前に確認する必要があります。ただし気をつけたいのは、老人ホームは病院ではなく生活を送る場です。看護師が常駐していることはあるものの、病院のようなケアを受けることはできないので、注意しておきましょう。
近年は、より高度な医療の要請にも応じられるよう近隣の医療機関などと連携をとる老人ホームが増えてきました。どのような医療機関との連携がなされているかは、各施設が情報として公開しています。
「医療サービスが必須・必須ではないがあれば安心」と考えるときの施設種類は、有料老人ホームや特別養護老人ホームなどが選択肢にのぼります。ただし施設によって提供できる医療ケアの内容には違いがあるので、対応可能なケアを事前に確認しておきましょう。