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高齢者とペットの暮らしのリスクマネジメント~ペットから見る高齢者問題5

2017年5月1日

高齢になっても、ペットと暮らしたいというニーズは根強いものです。
でもそこには、高齢者であるがゆえのリスクがあります。ペットと高齢者が幸せに暮らすには、リスクマネジメントが必要です。

 

高齢者自身や家族が生活上のさまざまなリスクをきちんと把握すること。抱え込まずに周囲に相談できること。
そして高齢者の周囲の人々が、ペットは高齢者のかけがえのない伴侶であると理解すること。
それがリスクマネジメントの要であり、ペットと一生幸せに暮らせる社会につながります。

 

ペットとの暮らしにひそむリスクに寄り添い、高齢者やその家族とともに解決していこうとする人たちの活動を通して、改めて高齢者が暮らしやすい地域づくりについて考えます。

 

註 このシリーズでは、事例は取材事実にもとづき、当事者のプライバシーに配慮して、適宜改変してあることをお断りさせていただきます。

 

<取材・文 椎崎亮子>

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

 

ペットについて「困ったときに相談しよう」では遅すぎる

三浦真美さんは、2015年に要介護・要支援高齢者とそのペットの暮らしをサポートしようと市民活動グループ「どうぶつがかり」を立ち上げた

三浦真美さんは、2015年に要介護・要支援高齢者とそのペットの暮らしをサポートしようと市民活動グループ「どうぶつがかり」を立ち上げた

「高齢者はみなさん『ペットとの生活は、何かあったらそのときに考えればいい』っておっしゃるんです。でもね、『どうにもならない状況』って突然来るんですよ。
ある方は病院に受診に行ったらその場で入院を言い渡され、一時帰宅も不可になりました。飼っていた猫は家中の食べられるものを漁って人間用のおせんべいを食べて生き延びていたんです。
また、出先の事故で病院に救急搬送されて1週間後に意識を取り戻した方は、自宅に取り残された犬が水を飲めなくて衰弱死していました」

 

聞くだけでも心が痛むこんな話をしてくださったのは、新潟市で市民活動グループ「どうぶつがかり」(*)を主宰する三浦真美さん。2015年4月、同グループを立ち上げた理由は「高齢者とペットとの終末が悲しいものであってはいけない。さまざまな事情でペットとの暮らしがうまくいかなくなったお年寄りを支えたい」ということでした。

 

*市民活動グループどうぶつがかり

 

介護サービスの隙間に落ちてしまう「ペットの世話」

「どうぶつがかり」のスタッフは動物と人の専門職。左から、吉田美愛子さんの職業はペットフードなどのデリバリーサービスでトリマーの資格を所有、栗原真希さんは動物看護士やトリマーなどの資格を所有、中野のり子さんは動物のボランティアと人間の介護士としての経験が長い

「どうぶつがかり」のスタッフは動物と人の専門職。左から、吉田美愛子さんの職業はペットフードなどのデリバリーサービスでトリマーの資格を所有、栗原真希さんは動物看護士やトリマーなどの資格を所有、中野のり子さんは動物のボランティアと人間の介護士としての経験が長い

「どうぶつがかり」のサービスは、新潟市内在住で、要介護・要支援認定を受けた方と介護保険申請を予定している方、64歳以下でも生活に支障をきたす病気やケガをされた方を対象としています。
対象となる方がペットの世話などで困った場合に、有償でサポートを行います。価格は、一般のペットシッターサービスなどの半額以下です。

 

飼い主さんの緊急時のペットの世話、動物病院などへのペットの送迎、ペットの清潔のケアやトリミング、ペットフードやペットシーツなどの買い物など、ペットとの生活に関するあらゆる相談に乗ります。

 

サービスを提供する「どうぶつがかり」のボランティアスタッフは、動物看護士、ペットシッター、トリマーなどの動物関係の専門資格の保持者や愛護団体でのシェルター運営経験者、人間の介護職、介護経験者がそろっています。

 

三浦さんは、「どうぶつがかりは、制度の隙間を埋めているんです」と話します。
「介護保険のサービスにはペットの世話が含まれません。高齢者(あるいは病気や障がいを抱える人)の生活の大事な一部でありながら、制度の隙間に落ちてしまうのです。
その隙間を、有償のボランティアという形で埋めようというのが、どうぶつがかりの考え方です」

 

元気なうちに「もしも私に何かあったら」を考える集い

2017年3月4日、新潟市内で、どうぶつがかりが主催するシンポジウム「ペットと最後まで一緒に暮らすために 元気なうちに飼い主がすべきこと」が開かれました。
登壇したのは、動物愛護団体NDN新潟動物ネットワークの代表で新潟市の動物愛護推進員などを務める岡田朋子さん、行政書士として新潟市内で「終活」に関する相談業務を行っている一般社団法人はまなす代表理事の秋山貴子さん、犬の訪問介護に携わる、ペットケア・りんりん代表の林久代さんです。

 

災害時と同じ発想で、ペットも“もしも”に備える

岡田朋子さんが代表を務めるNDN新潟動物ネットワークは、新潟市で16年の活動歴を持つ。動物のためだけではなく、人間と動物のかかわりを大切に考えてきた

岡田朋子さんが代表を務めるNDN新潟動物ネットワークは、新潟市で16年の活動歴を持つ。動物のためだけではなく、人間と動物のかかわりを大切に考えてきた

このシンポジウムで岡田さんは、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災の経験を踏まえ、「ペットとの暮らしへの備えは、防災と同じ、自助・共助・公助で考えよう」と語りました。
「自助とは、ペットを飼う前に本当に飼えるのかを熟慮すること、飼い主自身の健康管理、そしてペットの健康管理と社会化(*)をすること。そしてペットのことを相談できる人や後見人を探しておくことです」

 

*ペットの社会化とは、人間社会に適応できるよう、さまざまな人や物、場面に慣らしておくこと

 

「ペットは家族の一員を超え、社会の一員になっている」との指摘は、会場からも大きな共感が寄せられました。
また「飼い主がペットとともに暮らす社会を望むのであれば、それを支えるしくみづくり(共助・公助)や地域づくりを、飼い主自らがかかわってやっていくべきです」と述べました。

 

ペットを守る遺言や信託も「信頼できる人」がいてこそのもの

秋山貴子さんは行政書士として、「自分の人生を最後まで自分らしく生きる」ための相談やサポートを行っている

秋山貴子さんは行政書士として、「自分の人生を最後まで自分らしく生きる」ための相談やサポートを行っている

秋山さんは、行政書士という立場から、飼い主自身に何かあった場合にペットを法的に守るための具体的な手続きについて話しました。
まず、エンディングノートを活用して、ペットの行く末についても具体的に書き残しておくことを提案。法的にペットは飼い主の財産(=物)であり、ペット自身に遺産を相続させることは不可能ですが、代わりに、誰かに依頼してペットの生命と生活が飼い主の死後も法的に保証される方法を紹介しました。
遺言、委任契約、後見契約、負担付き贈与契約、信託契約といった手続きとそのしくみについての解説に、来場した飼い主さんたちが聞き入ります。

 

締めくくりとして、「どのような手続きを使うにしても、飼い主さん自身が信頼のおける相手を選べること、元気なうちに法的な手続きや決断を行えることが最も重要です」と語りました。

 

また秋山さん自身が地域で日々生活して感じていることとして、「飼い主さん自身が、地域の中での人間関係を良好にして、ペットとともに地域の中で孤立せずに生きていくことも、ペットを手に入れる前から考えておいてほしい」と述べました。

 

ペットのケアを通じた人脈作りも大切

林久代さんは犬の介護士としてさまざまな飼い主さんと向き合ってきた。飼い主さんの心が疲れ切る前に、もう一歩踏み込んだケアができればと望んでいるという

林久代さんは犬の介護士としてさまざまな飼い主さんと向き合ってきた。飼い主さんの心が疲れ切る前に、もう一歩踏み込んだケアができればと望んでいるという

林久代さんは、犬の飼い主さんに向け、犬が高齢になったときのケア方法を話しました。
犬の認知症の基礎的な知識や、犬を寝たきりにしないための運動や栄養、犬の脳を活性化するコミュニケーションやマッサージなど、暮らしの中で飼い主さんが容易に取り組める具体例がたくさんあげられました。

 

また人とペットがともに老いて老々介護となり、飼い主さんが心身共に疲れ果てて幸せに暮らせなくなる事例を紹介。

 

「長年かわいがってきた犬が老齢のため弱ると、飼い主さん自身の心も弱ります。つらいときや困ったとき、ペットに関わる私たちのような職種に相談してほしい」
林さんはこう語り、犬も人も元気なうちに、犬のケアを介した人同士のコミュニケーション、人脈作りをすることの大切さに触れました。

 

ペットを支えることが、高齢者の生活を支える

後半のトークセッションではパネリストから、「一人で抱え込まずに、周りに投げかけ、巻き込んでほしい」、というメッセージがありました。

 

このシンポジウムを主宰する三浦さんはこれを受け、「ペットとその飼い主さんを助けるには、人と人とのつながりを深くすることが何より大切。ペットを支えることが飼い主自身の生活を支えることにつながると、社会にも広く認識してほしい」と語りました。

 

地域の人同士のつながりが、ペットと高齢者の暮らしを守る

どうぶつがかりは、新潟市地域福祉係による「にいがた安心ささえ愛活動支援事業」に認定されています。福祉行政のバックアップができたことで、ペットという視点から高齢者の暮らしにアプローチしやすくなったと三浦さんは言います。

 

「以前は、ペットに関する行政の窓口は保健所や愛護センターに限られていました。今では、地域包括支援センターや、市民病院、社会福祉協議会から、高齢者とペットについての相談が、どうぶつがかりに寄せられます。行政から認められた効果はとても大きいです。
高齢者とペットの問題のリスクを減らして、最後までペットと暮らしていくには、地域の中で、ジャンルを超えて人と人とがどんどんつながり、顔の見える地域づくりをすることが一番だと思います。これは防災や防犯と全く同じではないでしょうか」

 

終末期を過ごす床には、猫たちとの安らぎがあった

愛猫が枕元に訪れた。関戸亮衛さんの表情がぱっと輝いた瞬間

愛猫が枕元に訪れた。関戸亮衛さんの表情がぱっと輝いた瞬間

関戸亮衛(せきど りょうえ)さん。この写真が撮られたのは、2014年5月18日。その3日後、関戸さんはご自宅で、ご家族と愛猫に見守られながら亡くなりました。

 

在宅医の上條武雄医師が、関戸さんの主治医だった期間はわずか1か月半。
終末期のがんを患っていた関戸さんは、療養していた病院から「もうできる治療がない」と言われ、紆余曲折のすえに自宅で過ごすことをご家族とともに決めました。
在宅の主治医として初めて訪問した日、上條医師は関戸さんがご自宅に帰りたかった理由がよくわかったといいます。

 

「穏やかな風の通る縁側。庭が見えるベッドで寝ている関戸さんの足元に、猫がひょいと乗っかって眠り始めました。『これだから家に帰りたかった』というようなことを、関戸さんはおっしゃった。
関戸さんは脳こうそくの後遺症もあって言葉が不自由。ご自身の意思を思い通りに話すことはできない方だったのですが、その思いは十分伝わりました」

 

犬も猫も在宅支援チームの一員

上條医師は、訪問先の記録をつけるとき、その場にいた家族や関係者とともに、ペットがいれば必ず「同席者」として記すといいます。ペットは、ご本人を支える大切な在宅支援チームの一員だと考えるからです。

 

「関戸さんの初診時の記録にも、ケアマネやご家族の名とともに『猫2匹』と書きました。ペットのことやその名前なども記録に記すことで、チームの他職種にも、ご本人のことをより豊かにイメージしてもらうことができます」

 

ペットもその人の“生”を支える重要なファクター

関戸さんを囲むご家族と猫たち、上條医師。優しくなごやかな時間が流れていた

関戸さんを囲むご家族と猫たち、上條医師。優しくなごやかな時間が流れていた

上條医師は、人の「支え」となることとはどのようなことかを次のように話します。

 

「支えとは、『これがあればがんばれる』という3つの存在です。
1つめは、『自律』。自分で自分のことを決められること。2つめは『時間』。この時間をがんばれば先に良いことがある。例えば、治療の時間をがんばれば、孫の結婚式に出られるというようなことです。
そして3つめが『関係』。家族や友人などです。ペットはここに入ります」

 

終末期になり、自律が失われ、時間もあまりない。けれども家族、ペットとの関係が残されていれば、「生きていてよかった」と感じられるものなのだといいます。

 

かわいがっていた猫たちと、家族に囲まれて穏やかに旅立った関戸さん。たくさんの方を見送ってきた上條医師からみても、関戸さんの最期の1ヶ月半は、幸せな時間だったと感じられるそうです。

 

「終末期は、本来はそんなに医療が介在しなくても、穏やかに過ごせるものなのです。昔ながらの人間と伴侶動物の寄り添いあえる関係は、終末期の方とそのご家族の、心や魂を支える大切なものではないでしょうか」

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

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