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高齢者は動物を飼ってはいけないの?~ペットから見る高齢者問題4

2017年4月21日

これまでの3回で、高齢者と動物のかかわりが社会的な問題になるケースを、野良猫の餌やり(第1回)や多頭飼育崩壊(第3回)といった事例をもとに紹介してきました。

 

では、高齢者自身は、動物との暮らしをどのようにとらえているのでしょうか? 高齢者が動物と暮らすことへのニーズやリスクを、高齢者自身の視点と、高齢者を見守る家族や社会の視点から考えてみます。

 

註 このシリーズでは、事例は取材事実にもとづき、当事者のプライバシーに配慮して、適宜改変してあることをお断りさせていただきます。

 

<取材・文 椎崎亮子>

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

 

健康な高齢者が、ペットとの暮らしをあきらめる「選択」

高齢になると犬との暮らしにリスクを感じる人が多い

高齢になると犬との暮らしにリスクを感じる人が多い

「もう、この子で犬を飼うのは終わりにしようと思うの」

 

70歳前後の犬の飼い主さんたちからよく聞く言葉です。子どもや孫などの家族と別に暮らす方は特に、「自分に何かあったら犬が残されてしまう」という意識を強く持っていると感じます。
また、犬が年老いたときには、ペットにも介護が必要になります。飼い主にかかるその心身の負担は重大です。老々介護になることは人と動物の間柄であっても大変なことなのです。

 

日本人の平均寿命は、2015年度の数字で男性が80.79歳、女性は87.05歳。対して、健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳(2013年)と10年前後の隔たりがあります。
そのため、まだ体力にも余裕があるうちに、動物との暮らしにキリをつけるという選択を、老後のリスクマネジメントのひとつとする飼い主さんが多いのです。

 

80代半ばの高齢者が、ペットを飼い始めるということ

ホームヘルパーのAさんは、ある利用者が亡くなったとき、あとに遺された小型犬をやむにやまれず引き取りました。

 

「80代半ばのその方から『子犬を飼う』と言われたときは驚きました。
おひとり暮らしで家族もない方なので『犬は15年以上生きる。あなたがもし先に死んでしまったらどうするの』と必死に説得しましたが聞き入れられず、その方はペットショップから子犬を買ってきてしまいました。
数年後、案じていた通りになって……。あのときなんとしても止めるべきでした。保健所行きはあまりにもかわいそうで、犬を引き取ったんです」

 

散歩がいらない猫でも、高齢者が飼育するリスクはある

散歩がいらない猫でも、高齢者が飼育するリスクはある

また、動物譲渡のボランティアBさんは、最近、こんな経験をしました。
若い方から「愛猫をなくして元気がない高齢の祖母のために猫を譲渡してほしい」という申し込みがあり、詳しく話をきくと大家族で飼育のサポート体制も万全。祖母自身も80代半ばと高齢ながら長年猫を飼育してきたことなどがわかり、譲渡を決めたといいます。
ところが後日、その祖母本人から断りの連絡をもらったのだそうです。

 

「『最近足元が弱って不安になってきた。猫が足にすり寄ってきて転ぶのが怖いので、もう猫は飼わないことにします』とおっしゃるんです。
長年猫と暮らしてきたからこそ、リスクをしっかり把握していらしたんですね。お寂しかったでしょうが、ご本人の”勇気ある撤退”を尊重すべきだと思いました」

 

高齢の親にペットを買い与えてしまう子どもたち

横浜市の動物適正飼育推進員として活動する斉田薫さんは、家族が安易に高齢者に犬を買い与えて問題になるケースがあると語ります。

 

「高齢の親が寂しいだろう、散歩で健康を保てるだろうなどと考えて、息子や娘が子犬をプレゼントするのです。両親と一緒に暮らせない罪悪感のようなものも背景にあるかもしれません。
問題は、犬を贈られた親が、高齢のためきちんと世話ができず、飼育放棄したり、行政のセンターに殺処分のために持ち込む原因になったりすることです」

 

犬という動物は、適切な散歩などのコミュニケーションやしつけを怠れば、過剰に吠える、人を咬むといった困った行動が出てくる原因になると斉田さんは語ります。

 

「とある高齢者夫婦は、息子から贈られた犬を庭につなぎっぱなしにして、散歩もろくにさせませんでした。その上、吠えるたびに叩くなどのひどい扱いをしたために、犬が咬みつくようになったそうです。
しかも奥さんのほうはもともと犬が好きではなかったようなのです。犬もかわいそうですし、飼い主も幸せなわけがないですよね」

 

ほかにも、ろくに世話をされていない犬を見かねた地域の人が餌を与えていたり、「犬をなんとかしてやれないか」と斉田さんのところへ相談してきたりするケースがいくつもあるそうです。

 

「動物の福祉と飼い主の責任という観点から、きちんと世話をして一生大事に飼えるかどうか、冷静で常識的な判断が重要です。ペットには命があります。人を癒す道具ではないんです。安易にプレゼントにしないでほしいですね」

 

60歳以上の人は、犬猫の譲渡を受けられない?

行政の愛護センターで保護されている犬たち。定年世代の人たちは犬を飼う余裕があり、保護犬への関心も高い

行政の愛護センターで保護されている犬たち。定年世代の人たちは犬を飼う余裕があり、保護犬への関心も高い

Cさん夫妻(ともに60代)は、元の飼い主に捨てられた犬を動物愛護団体から譲渡してもらおうとして断られ、嫌な思いをしたそうです。
その経緯をご主人は次のように話しました。

 

「私も定年を迎え、ようやく犬を飼う時間や経済的な余裕も出てきたところでした。つらい思いをした犬を迎えてやりたいと思い、妻も賛成してくれていたのですが、譲渡に応募したら『60歳を超えた方にはお譲りできません』と一方的に断られたんです。
まるで『あんたはこの先どれだけ生きるかわからない』と言われた気がして腹が立ちました」

 

実は、譲渡する人の年齢制限を設けている愛護団体やボランティアは少なくありません。譲渡される動物の多くが、前の飼い主に捨てられるなどの前歴を持っています。
ボランティア側は高齢者による飼育放棄などの実例も見聞きしているため、動物が再び不幸な目に遭うリスクを避けようと、年齢制限を敷くのです。
ところがこの「自衛策」が、Cさん夫妻のような「時間もお金も気持ちもある」シニア世代のニーズと食い違ってしまうのです。

 

ペットショップにも求められるモラル

前出の動物譲渡ボランティアBさんのように、より若い家族などの確実なバックアップがあれば、譲渡を受ける本人の年齢にかかわらず譲り渡すというボランティアや団体もあります。

 

しかし年齢を理由に譲渡を受けられず、「うるさい条件がないから」とペットショップで動物を購入するシニア世代も少なくないようです。
ペットショップでは、前出の80代半ばの方のように介護が必要な人や、家族などのバックアップがない人が相手であっても動物を売ります。結果的に高齢者とペットの生活が破たんする原因の一つになっていると考えられています。
ペット業界にも、高齢者の生活と販売する“命”の行く末を見極めるモラルが、社会的に求められています。

 

高齢者施設でペット受け入れをOKにするには?

北野綾香さんは高齢者がペットと住める施設が少ないことに驚き、卒業研究でその疑問を解こうと考えた

北野綾香さんは高齢者がペットと住める施設が少ないことに驚き、卒業研究でその疑問を解こうと考えた

北野綾香さんは2017年春、帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科を卒業しました。在学中は障がいを持つ子どもを対象とした乗馬セラピーに携わり、学外では山梨県上野原市の高齢者施設での動物介在活動にも参加してきました。

 

北野さんは卒業研究で、「高齢者施設での動物の飼育」をテーマとして選びました。

 

「2016年の情報で、日本でペットを連れて入所できる特別養護老人ホームは神奈川県横須賀市の『さくらの里山科』たった1軒だけと知り、驚いたのがきっかけでした」

 

「老人ホームでペットを飼えない理由」(「高齢者施設における動物関与は可能か」北野綾香 横山章光 2016 より)

「老人ホームでペットを飼えない理由」(「高齢者施設における動物関与は可能か」北野綾香 横山章光 2016 より)

 

高齢者による動物の遺棄などは、社会問題としても知られています。高齢者が抱えるペットに関する不安やニーズを明らかにするため、ペット同伴入居が可能な有料老人ホームで、高齢者自身や施設職員に聞き取り調査を行うという手法で研究を進めました。

 

「ペットとの同伴入居がうまくいっている老人ホームでは、職員が『ペットは利用者の大切な家族』と考えていました。
利用者が自力で世話をできなくなったときに、どうやったらペットの暮らしを守れるのかを、職員が利用者本人と一緒に真剣に考える姿勢が印象的でした。
また動物が苦手な利用者とのスペースの区分や、ペットケージ、キャリーをうまく使った“住み分け”を十分に行っていることも成功の秘訣のようでした」

 

施設と行政、地域の人々の連携と費用の捻出がカギだった

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、ペットとの入居が可能なところも増えてきています。
北野さんが気になったのは「お金の余裕のない人、特養を選択したいという人の場合はどうすればいいのだろう?」ということでした。
そこで前出の「さくらの里山科」が、なぜ特養でありながらペット可を実現しているかを分析してみたといいます。

 

 (キャプション) 「ペットを受け入れている特別養護老人ホーム」(「高齢者施設における動物関与は可能か」北野綾香 横山章光 2016 より)


「ペットを受け入れている特別養護老人ホーム」(「高齢者施設における動物関与は可能か」北野綾香 横山章光 2016 より)

 

「動物と高齢者の共生に関して意識の高い介護職員がいて、行政や動物愛護団体、地域の市民ボランティアとも緊密に連携して運営していることが大きな要因だとわかりました。
もうひとつ、動物の医療費などの費用という大きな問題があります。『さくらの里山科』ではクラウドファンディング(*)という方法で調達していましたが、これがどこの施設でもできるかといえば、そうではないと感じました」

 

*クラウドファンディング:インターネットを利用して資金調達をする方法

 

研究の過程で、高齢者の貧困の問題も少し見えてきたと語る北野さん。この春から、介護職として働き始めました。その抱負をこう語ります。

 

「施設に入ったお年寄りたちがさまざまな楽しみを持てる環境づくりをしたい。可能なら将来は、動物と暮らせる施設を増やして、動物のトレーナーなどの動物関連職の仕事場にもなればいいなと思っています」

 

次回は、動物と高齢者の暮らしを支える新潟のボランティア団体の活動を通し、高齢になっても幸せに動物と暮らすために、高齢者自身や家族が取り組みたいことに焦点を当てます。

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

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