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地域の野良猫問題は、高齢者問題でもある~ペットから見る高齢者問題1

2017年3月31日

お年寄りが猫を抱き、窓辺で暖かな陽射しを楽しんでいる姿。老犬とお年寄りが、互いに気遣い合うような足取りで公園を散歩している姿。見ているこちらまで癒されるような幸せな光景です。
最近では高齢者施設で、レクリエーションや医療の一環として、アニマルセラピー(詳しくはこちら)を導入するところも増えてきました。

 

一方で、入院や施設入所が必要となったお年寄りが、共に暮らしていたペットを手放さなければならなくなるようなことが日本中で起きています。
手放された動物が行政による殺処分に追いやられたり、高齢者が動物の世話を適切にできずに動物との暮らしが破たんしたりすることは、いまや社会問題として認識されるようになってきました。

 

高齢者がペットと最後まで幸せに暮らすためには、何が必要なのか。このシリーズでは、高齢者と動物をとりまくさまざまな立場の人々に取材し、この問題を考えます。

 

註 このシリーズでは、事例は取材事実にもとづき、当事者のプライバシーに配慮して、適宜改変してあることをお断りさせていただきます。

 

<取材・文 椎崎亮子>

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

 

野良猫に餌を与える、心優しいお年寄りたち

image001昼下がりのコンビニ裏手の公園。80歳代後半とおぼしき男性が、コンビニの袋から揚げ物を取り出し、震える手で小さく割いている。その足元には、野良猫が。
与えた餌を一心に食べる猫を、男性は目を細めて見つめてましいた。

 

「もう年でね、猫を飼うことはできないから、ここの猫に餌をやりにきてるの」

 

同じ場所で数回、二言三言の会話を交わしたでしょうか。
いつのまにか、男性はふっつりと姿を現さなくなってしまいました。転ぶのではと心配になる足取りだったことを考えれば、入院や施設入所といった事情で、もうここには来られなくなったのかもしれません。
公園には、そんなお年寄りが入れ代わり立ち代わり訪れます。夕方暗くなると、餌の袋を持って住宅地の中を歩き回る人もいます。野良猫たちを見かけると、餌を道端にばらまいて去っていくのです。

 

猫へのやさしさと、地域の中での孤立

「あそこの家の人は猫が庭に来たら、真冬なのに冷たい水をかけるんだ。あっちの家の人は、薬を撒いて、そのせいで猫が死んだんだよ!」

 

一方的にまくし立てている女性は70代後半ぐらいでしょうか。
自宅の庭で10頭ほどの野良猫に餌を与えています。すると、餌に集まった猫が近隣の家の庭で糞尿をする。庭木で爪をとぐ。車を傷つける。毎年子猫が生まれ、どんどん増える。
町内会には、近隣の家からそんな苦情がたくさん寄せられていました。

 

この女性は、何年もの間、猫のことで近隣とトラブルを繰り返していました。
近所の人には、口を開けば餌やりをすることへの文句ばかり言われるために、女性は心を閉ざし、被害妄想のような言動が目立つようになりました。薬を撒かれたというのも、どうやら事実ではなさそうでした。

 

町内会が住民の苦情を受けて女性宅に注意をしにいったことから、女性は町内会からも抜け、ますます孤立を深めてしまったのです。
他人へのとげとげしい言動とは裏腹に、猫たちには柔和な表情を見せるその女性は、1頭1頭の性格や、現れる時間など、細かいことまで全部把握していました。

 

猫好きも猫嫌いも、ともに高齢者が多い

NPO法人「ねりまねこ」副代表、亀山嘉代さん

NPO法人「ねりまねこ」副代表、亀山嘉代さん

「猫の餌付けと糞尿の問題は、当事者のほとんどが高齢者です。餌付けをしているのも高齢者なら、猫が嫌いだ、糞尿で汚されると苦情を言いに来るのも高齢者。苦情を受ける町内会の役員も高齢者という場合が多いです」
そう語るのは、東京都練馬区のNPO法人「ねりまねこ」副理事長で、東京都の動物愛護推進員を務める亀山嘉代さん。

 

「猫問題」の当事者がなぜ高齢者ばかりなのでしょうか。
地域に住み着いている猫にかかわれるのは、昼間、よそに仕事に出ることがなく自宅やその周辺にいる人だからです。
猫好きのお年寄りが、寂しさから猫に餌を与える。猫嫌いのお年寄りが、庭仕事の最中に猫の糞尿被害に気付く。
苦情を伝える先の町内会の役員は、これまた仕事をリタイアした年齢の人たち。好悪の感情が絡み、のっぴきならない状況になるのは前述したとおりです。

 

「地域猫」と「野良猫」の違いとは

亀山さんは2010年に、練馬区が公認する「地域猫推進ボランティア」として登録しました。
そのきっかけも、近所に住むお年寄りが餌付けしていた猫が増え、自宅の庭に猫の親子が姿を現すようになったことだったといいます。

 

「あるおばあさんが、猫に餌付けしていました。もちろん不妊去勢手術もしないので30頭ほどに増えていたんです。あるとき、このおばあさんが亡くなると、猫たちは餌を求めて分散し、近所中の人が困っていたんです」

 

「地域猫」活動の概念はこのようなもの NPO法人「ねりまねこ」パンフレットより<クリックで拡大>

「地域猫」活動の概念はこのようなもの NPO法人「ねりまねこ」パンフレットより<クリックで拡大>

「地域猫」という言葉を、見聞きしたことがあるでしょうか。単なる野良猫のことではありません。
飼い主がいない猫であっても、不妊去勢手術を施されて、地域の人々の手で適切に管理され、存在を認められている猫のことを指します。

 

野良猫が引き起こす問題を、猫に餌付けをする人(猫が好きな人)、猫の被害に遭っている人がともに、地域の行政組織や亀山さんのようなボランティアらと協働で、「地域の中の環境問題」として解決していこうという取り組みのことを「地域猫活動」といいます。

 

猫は、犬、ウサギ、馬などとともに「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」(*「動物の愛護及び管理に関する法律」全文)によって「愛護動物」と定められています。
野良猫といえど、みだりに傷つけたり殺したり、どこかに捨てたりすることは、虐待や遺棄とみなされ法的な処罰の対象となるのです。
一方で、主に都市部では、猫は「害獣」扱いを受けることもしばしばあります。

 

「地域猫」が受け入れられやすい理由

不妊手術のため専用の保護器で捕獲された猫(柏市にて)

不妊手術のため専用の保護器で捕獲された猫(柏市にて)

「地域猫」の仕組みはこうです。
(1)猫を捕獲して、(2)不妊手術を施し、(3)元いた場所に戻し、命あるものとして適切に餌を与えて見守る。
これを(1)~(3)の英語表記、Trap、Neuter、Returnの頭文字をとり、TNRと呼んでいます。
そのうえで猫用のトイレをつくって(*)そこで糞尿を始末し、餌場などの掃除をして環境美化を行います。

 

* 猫がトイレとして好むやわらかい土やプランターを物陰などに設置する

 

不妊手術によって猫の繁殖は止まるので、頭数はそれ以上増えません。やがてはそれぞれの猫が寿命を迎えます。中には保護・譲渡されて「家猫」になる猫もいます。
猫の頭数が減るにしたがい、糞尿その他の迷惑も目に見えて減っていきます。
人道的であり、猫が好きな人でも嫌いな人でも受け入れやすく、実際に効果が上がることから、ここ20年程で都市部を中心に概念が定着してきています。

 

亀山さんのようなボランティアは、猫の捕獲や、不妊手術などのために病院へ連れていくことや、地域の人へ「地域猫」の考え方の啓発活動などを行っています。
また、猫をめぐる人同士のトラブルがあれば、間に入って話を聞き、行政と連携を取りながら収めることもしています。

 

注目したいのは、決して猫のためだけのボランティアではないことです。「地域の環境と人の問題を考える」ことこそが、地域猫ボランティアの大きな仕事なのです。

 

「地域猫」活動は、「住みやすい地域づくり」活動

「以前は、猫が嫌いな人にも地域猫のしくみを理解していただくために、『地域の問題』を少々大げさに強調しているようなところもありました。でもふたを開けてみたら、地域の環境問題を超えて、『地域づくり』そのものになっていたんです」

 

亀山さんは活動を始めるにあたり、練馬区の保健所職員と地域の町内会に赴いて趣旨を説明し、さらに地域猫を説明するチラシをもって、近隣の家を一軒ずつ訪ねて歩いたといいます。

 

亀山さんら登録ボランティアが練馬区から交付されるIDカード。このIDのおかげで、地域の中で活動を受け入れてもらいやすいという

亀山さんら登録ボランティアが練馬区から交付されるIDカード。このIDのおかげで、地域の中で活動を受け入れてもらいやすいという

「活動の理解を求める徹底的な広報を行うのが『練馬区ルール』だからです。
行政の推進する活動ですので、行政の下部組織である町内会は非常に協力的ですし、近所の人はボランティアにご苦労様と言ってくださる。猫に困っていた人も、猫の面倒を見ていた人も、こぞって協力を申し出てくれました」

 

亀山さんの庭に来ていた猫の問題は、近所の人々との連携で、瞬く間に解決したといいます。
亀山さんは、自宅近辺だけではなく、駅前にある野良猫の集まる公園に活動の場を広げました。そして、ボランティアという立場から、地域の人間模様やさまざまな問題を肌で感じるようになっていったそうです。

 

「私たちのようなボランティアが間に入ることで、野良猫のことでいがみ合っていた人々の関係がとても平和になるんです。そのうえ、問題を解決するためにどんどん人同士がつながり、協力関係が生まれます。庭に来た猫から始まったささやかな私の活動が、こんなに人の役に立つのかと思いました」

 

次回は、「地域猫活動」がダイレクトに高齢者の見守りにつながっている事例を通し、高齢者を見守る地域とはどういうものかを考えたいと思います。

 

*「ペットから見る高齢者問題」の1回目2回目3回目4回目5回目(最終回)はこちら

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