外出困難な高齢者でも理美容室と同様のサービスが受けられる「訪問理美容サービス」。その2回目は、利用上の注意点と、事業者の例として「trip salon un.」をご紹介します。
介護の知識やスキルがあることが重要なポイント!
「訪問理美容サービス」は、理美容師の免許(国家資格)があれば誰でも行うことができます。そのため、サービス事業者のスタイルやサービス内容、クオリティはまちまちなのが現状。事業者を選ぶときには注意が必要です。
例えば、シャンプー。老人ホームの中には、訪問理美容サービスが受けやすいように、専用の部屋(理美容室)が用意されているところも数多くあります。その理美容室にシャンプー台があればスムーズですが、無い場合には、事業者が持参するポータブルのシャンプー台を利用する必要があります。もし事業者が、ポータブルのシャンプー台を持っていない場合は、洗髪は受けられず、老人ホームの介護スタッフにお風呂に入れてもらうというケースも。
また、持参するシャンプーも、事業所によりまちまちです。サロン専用の上質なシャンプーを利用する事業所もあれば、スーパーに売っているような市販のリンスインシャンプーを使用する事業者もあります。
そして、大きなポイントは、サービス事業者の介護の知識やスキルの有無です。街のサロンの理美容師が出張サービスも手がけるというケースもありますが、介護の知識やスキルを持ち合わせていないと、車椅子一つ動かすにも困ってしまうということになりかねません。
要介護の高齢者は、何かしら体や心に不調を抱えています。耳が遠い、長時間同じ体勢を続けられない、などの高齢者に対し、そうした事情を理解して、座り方を工夫したり、できるだけ短時間で済ませるといった特別な配慮が求められます。また認知症の場合、話がかみ合わなかったり、期待と違う答えがかえってくるのは日常茶飯事。その時にサービス事業者が戸惑ったり、相手の話をいちいち否定すると、利用者に不愉快な思いや、悲しい思いをさせてしまいます。
訪問理美容サービスを受ける場合は、どんな事業者なのかをよく確認することが不可欠なのです。
施術の前後でおばあちゃんの表情が変わる、それが訪問美容の力

「おじいちゃん・おばあちゃん子だった」という湯浅一也さん。
こうした中にあって、「trip salon un.(トリップサロン アン)」は訪問美容専門の会社です。代表の湯浅一也さんは、数多くの芸能人も利用する東京・原宿のサロンで5年間経験した後、2012年8月に独立しました。
「中学時代に美容師を志しました。周囲にお年寄りが多い環境で育ったせいか、自分に何か役に立てることはないかと考えた時、訪問美容を思いついたんです。また、訪問美容ならば多額のお金が必要なサロンを構える必要がなく、小さなオフィスと車と道具があれば開業できます。不要になるコストを、サービスを良くすることに使えると思ったことも大きいですね」と創業の動機を語ります。
スタッフは、3人の社員と十数名の外部の美容師。福祉理美容師の有資格者である湯浅さんらがスタッフ全員に介護の知識やスキルを教えているほか、マナー教育も徹底しているそうです。
「人生の大先輩である高齢者のお客様に失礼な態度を取るなど、もってのほかだと思っていますから」
そんな湯浅さんは、訪問美容の仕事にやりがいを感じる瞬間を次のように話します。
「施術前はどことなく元気のなかったおばあちゃんが、施術が終わって鏡の中の自分を見た時、満面の笑顔になってくれるんです。中には泣き出す方もいるくらいです(笑)。女性を取り戻してくれたんだなと感じて、こっちまで嬉しくなりますね。また、子供や孫のような年齢の私たちと話すことを楽しみにしてくれているおばあちゃんも多いですよ(笑)」
訪問理美容サービスの価値とは、まさにここに凝縮されているのではないでしょうか。きれいでいられることで、気分が明るくなり、人に会っておしゃべりの一つもしたくなる。そして、生きることに前向きになれる。そんな力を秘めたサービスといえるのです。
次回は、具体的なサービスの流れと、気になる料金についてご紹介します。
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