在宅介護をしている人にとっての悩みのひとつが、「介護を必要としている家族との接し方」です。元気なときを知っているからこそ、「それまでできていたことができなくなった」ことにはがゆさを感じ、つい怒ってしまってつらくなる人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は在宅介護での高齢者の接し方のポイントを紹介します。
【ポイント1】高齢者を叱ったり否定するのはNG
在宅介護で家族がよくやってしまうことが、介護を必要とする人の行動や言動を否定したり叱ってしまうこと。家族は、介護が必要となる前の元気なときを知っています。そのため、今の状態を頭ではわかっていても、「本当は自分でもう少しできるのでは?」とつい声を荒げてしまうこともあるでしょう。
認知症を患っている人の場合には、同じことを何度も言ったり現実ではないことを話すこともあり、「それは違うよ」「さっきも聞いた」とつい言ってしまいがちです。
しかし、介護される人を叱ったり否定することは基本的にしてはいけません。特に認知症の人の場合には、叱ったり否定することで症状が悪化することもあります。
介護を必要とする人に接するときには、「相手の立場を理解する」「否定せずに受け入れる」。この2点を心がけるようにしましょう。
相手の立場を理解する
介護を受ける人は、思うように動けずつらい思いをしています。私たちは、そのつらさのすべてを理解することはできません。しかし、相手の状況を想像し理解することはできます。
難しければ、車椅子に乗ってみるなど、自分でもできる体験をしてみてもよいでしょう。
認知症の人の場合には、「なぜそのような行動をするのか」を考えてみてください。一見おかしな行動でも、実は家事を手伝おうとしての行動だった、ということもよくあります。まずは、相手の立場に立って考え理解するという姿勢をもつようにしましょう。
否定せずに受け入れる
介護を受ける人が不可解な行動や言動をしても、まずは否定せずに受け入れましょう。高齢者は自分のことを受け入れてくれたと感じるだけで、安心感を覚え心身の状態が安定しやすくなります。特に認知症の人の場合には、周りが受け入れてくれることで症状が落ち着くこともあるでしょう。
ただし、コンロの火をつけっぱなしにするなど、その行為を容認することで危険が及ぶ場合には、受け入れると大変なことになってしまいます。安全に過ごすための対策を検討する必要があります。
【ポイント2】話すときにはゆっくりはっきりと
人はある程度年齢を重ねると、高周波数の音域が聞き取りにくくなります。また、早口で話されると何といってるかわからないと感じる人もいるでしょう。
聞こえていなかったり話の内容が理解できていないにも関わらず、聞こえたふりをする高齢者は意外と多いものです。特に介護を必要とする人の場合には、大事なことが伝わらなかったためにトラブルになるということも考えられます。
話をするときは、相手の顔をよく見てゆっくりと落ち着いた声ではっきり話すようにしましょう。また、後々のトラブルを避けるためにも、内容を理解できているかひとつずつ確認したうえで次の話にうつると、より理解しやすいでしょう。
【ポイント3】スキンシップをとろう
高齢者と接するときには、手を握るなどスキンシップをとると安心感を与えることができます。触れ合う人が日ごろ接している家族だと、普段から信頼関係ができているため安心感も一層増し、心身共に落ち着きやすくなります。
スキンシップには、不安やストレスを軽減する働きがあると言われています。介護や福祉の現場では、近年スウェーデン生まれのタッチケアであるタクティールケアを導入することも増えてきているほど、スキンシップがもたらす効果は大きいといえるでしょう。
実際にタクティールケアでは、認知症の人の気持ちが落ち着いたり、夜間の寝つきがよくなるなどの結果が表れています。
→タクティールケアとは?触れることで痛みや不安を緩和
在宅で暮らす高齢者と接するときには、専門的知識はなくとも、手を優しく握りながら話したりするだけでも安心感を与えることができます。はじめは数秒でもいいので、スキンシップをするようにこころがけると信頼関係もでき、お互いが安心して過ごせるようになるでしょう。
【ポイント4】適度な距離感で接する
在宅介護では、どうしても介護者と介護される人の距離感が近くなってしまいがちです。その結果、介護する人が自分の時間を持てずにストレスになってしまい、介護負担も大きくなってしまいます。
在宅介護では、適度な距離感を保つことが非常に大切です。そのためには、デイサービスなどの通いのサービスやショートステイを利用するなど、介護サービスを上手に使いましょう。
また、親族や近所の人など、頼れる人がいる場合には協力を仰ぐのも良い方法です。在宅介護でお互いがストレスにならないためにも、普段から適度に息抜きするようにしましょう。