「車椅子の使い方」。今回のテーマは、“目線や揺れの体験”について。介護者自身が実際に車椅子に乗ってみることで、いろいろなことが見えてきます。まずは体験を通して車いす介助を学んでいきましょう。
取材協力・明正会グループ http://www.meisei-g.com/
<取材・文/橋本範子>
目線、揺れ、傾斜、段差の感覚を確認しよう!
車椅子に乗る事で、さまざまな事への感じ方の違いが起こります。筆者が実際に車椅子に乗った事で、感じた事をまとめてみました。
○目線
当たり前ですが、今まで見ていた景色とは異なり、視界が低い場所に移動します。普段はさほど気にならない自転車や歩行者の人とのすれ違いですが、真横を通られると萎縮してしまいました。上からの目線には、圧迫感を感じてしまいます。
○揺れ
普段、歩いている道では、よほどの体調不良やお酒の飲み過ぎ以外でゆらゆらと揺れを感じるようなことはありません。それが車椅子上だと、道が凸凹しているような箇所や、マンホールの上など障害物があると、揺れをダイレクトに感じてしまいます。
○スピード
介護者が普段歩いているようなスピードで車椅子を押すと、私自身の体感速度はその倍近くになっていたと思います。急な飛び出しなどの際、スピードが早いとこちらも不安になってしまいました。
○傾斜
普段、何気なく歩いている歩道は、決して平坦ではありません。だからといって、不便を感じたり気になったりすることはありませんでした。しかし、車椅子に乗る事で傾斜に敏感に反応。自分の体が斜めになっていることを感じました。
○段差
段差は角度が高ければ高いほど、恐怖心があります。まず上る時、体が後ろに沿ってひっくり返そうな感覚に。まるでジェットコースターの頂上へと向かうような気分です。段差を降りる時は、そのままのスピードで押されてしまうと、勢いがあって、これまたビックリしてしまいました。

画像左:身長156cmの筆者からの普段の目線
画像右:身長156cmの筆者が車椅子に乗った時の目線

車椅子での横断歩道の移動は、人通りが多いと大変です

マンホールや視覚障害者向けの点字ブロックは、少なからず振動が。できれば避けて通りましょう
実践して体感することで、気持ちを理解しよう!
実際に自分自身が体験することが、相手の気持ちを少しでも理解するのには最適な方法。“恐かったこと”“不快に思ったこと”“嬉しかったこと”“助かったこと”などを忘れずに、心にメモしておきましょう。そうすれば、より快適な車椅子の使い方ができるはず。
例えば「段差があるので、少し揺れます」「スピードは速くないですか?」など、ちょっとした一声があるだけでも、安心感を感じられます。介護者は、普段より気持ちゆっくりめで車椅子を押してあげるのが良いと思います。ちょっとした気遣いとコミュニケ−ションが大切なんだと改めて感じることができました。
次回は「車椅子の使い方“準備と特に気を付ける事”」をご紹介していきます!
プロフィール
よっし~
介護福祉士、ガイドヘルパー(全身性・視覚)。東京都葛飾区にある「ケアサービス新小岩」にて所長を務める。
