成年後見とはどんな制度?
成年後見制度とは、認知症などで判断能力に不安がある高齢者、知的障がい者、精神障がい者などの方々(以下「本人」)が安心して生活できるように、法律的に支援する制度。
本人の財産管理や契約を補助したり代理する援助者を選ぶことです。
本人がすでに判断能力に不安がある場合に利用する「法定後見制度」と、本人の判断能力が十分なうちに契約する「任意後見制度」があります。
・法定後見
契約や遺産分割などの法律行為に対する判断能力が不十分な認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などに対し、家庭裁判所が法律に従って本人を援助する後見人を選任し、代理権限を与えることで本人を保護します。
・任意後見
本人が自己の判断能力が不十分になったときのことを考え、前もって後見人を指名しておき、公正証書によって締結された契約(任意後見契約)に従って本人を保護します。
それぞれ、対象となることができる援助者や、手続きの流れなどが異なります。
Q. 成年後見制度を利用したいのですが
A. 「法定後見」と「任意後見」は、それぞれ以下の方法で利用ができます。
・法定後見
申立書など必要書類を揃え、本人の住所地の家庭裁判所に対して申請し、審判を受けます。申請できるのは本人(成年後見開始の審判を受ける者)のほか、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人など。
審判は、原則として本人の精神の状況について鑑定を行い、結果、法廷後見が必要と判断された場合に、家庭裁判所は後見開始の決定をします。
・任意後見
申立書など必要書類を揃え、本人の住所地の家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任の申し立てを行います。これは本人によって指名された後見人を監督する立場の人間を選任します。
本人の判断能力が不十分と認められた場合、裁判所は任意後見監督人を選任し、そのときから任意後見契約が効力を発します。
Q. 後見人等にはどういう人がなるの?
A. 2017年のデータによると、約26%が子どもや兄弟姉妹、配偶者、親などの親族。残りは、司法書士、弁護士、社会福祉士などの第三者です。研修を受けた一般市民の方(市民後見人)が選任されるケースもあります。
(最高裁判所事務総局家庭局資料より)
Q. 後見人等には誰でもなれるの?
A. 家庭裁判所が、最も適任だと思われる後見人を選任します。
本人に対して訴訟をしたことがある、以前に後見人等を解任された、破産者など一定の事由に該当する人は後見人等にはなれません。
親族間に意見の対立がある場合や、本人の流動資産の額や種類が多い場合、後見人等候補者が、健康上の問題がある場合・今後の後見人等としての適正な事務遂行が難しいと思われる場合などは、候補者以外の方が選任されたり、成年後見監督人等が専任されることがあります。
Q. 後見人等にできないことは?
A. 遺言・婚姻・離婚・養子縁組などの通常本人しか行えない行為はできません。
また、基本的には手術や延命治療などの医療行為の同意、本人死亡後の葬儀や埋葬の手続きは職務ではないとされています。
食事の世話や実際の介護、入院・入所時の身元引受人や保証人なども同様です。これらは親族後見人等が親族の立場で行うことは問題ありません。
Q. 手続き費用はいくらかかるの?
A. 主な費用としては、申立手数料や切手代、登記手数料などで約1万円、鑑定費用に5~10万円くらいかかります(鑑定は省略の場合あり)。
*後見人等への報酬は含みません。
Q. 後見人等が決まるまでの期間は?
A. 家庭裁判所に申し立てをしてから、およそ8割が2ヶ月以内に決定。わすかですが6カ月を超える場合もあります。
(最高裁判所事務総局家庭局資料より)
Q. 後見人等がついたら報酬が必要なの?
A. 第三者後見人には報酬がかかります(監督人も同様です)。後見人等は、本人の財産の中から報酬を受け取ることができます。その時には、働いた期間やその内容、本人の財産などを考慮して、家庭裁判所が報酬額を決定します。このような手続きをしないで報酬を受け取ることはできません。
*報酬額のめやすは月額2万円程度(東京家庭裁判所ホームページより)
Q. 後見人等の任期は?
A. 本人の判断能力が回復し、後見人等が必要なくなった場合には終了しますが、通常は本人が亡くなるまで後見人として責任を負うことになります。申立てのきっかけとなった当初の目的(保険金の受領や遺産分割など)を果たしたら終わりというものではありません。
*成年後見制度の種類・権限の範囲などはこちらで詳しく紹介しています。