インフォームド・コンセントの要約
日本ではとくに医療の現場で一般化してきた概念。
病状や治療法、処方される薬、検査などについて、患者やその家族が医師から正確かつ適切な情報を与えられた上で(=informed)、治療の方針に同意をする(=consent)ことをいう。
医師からの情報があったとしても、一方的な説明や家族や患者からの疑問に対する答えのない説明、適切な選択肢が示されていない説明などは、インフォームド・コンセントのあり方としては不十分なものとみなされる。
インフォームド・コンセントの意味
インフォームド・コンセントは日本語に直訳すると、「知らされたうえでの同意」です。
もともと海外で広がっていた言葉ですが、1990年頃、日本ではインフォームド・コンセントを「説明と同意」と表現。
その後、患者の知る権利や自己決定権を保障するプロセスのひとつとして、医療従事者の努力義務となりました。
インフォームド・コンセントは医療の現場で使われることが一般的で、患者やその家族が病状や治療方法について理解、納得したうえで、治療やケアを開始することを目的としています。
本人が十分に理解していないのに、かたちだけの合意とする行為はインフォームド・コンセントに反します。
医師は、現在の病状や治療による副作用、危険、他に方法はないのかなどの十分な説明を行い、理解を得る必要があるのです。
また、患者や医療従事者のみならず、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど、患者のケアに関わる全ての人が情報を共有し、合意することも求められます。
なお、基本は医療従事者と患者本人を対象としますが、意思表明が難しい場合や未成年の場合については、法定代理人や家族の代表者などが代理を務めます。
インフォームド・コンセントの必要性
インフォームド・コンセントが必要な理由は、大きく分けて2つあります。
患者や家族が納得して治療を受けられる
医療を受ける際は、病状や治療方法、薬の内容などさまざまな説明を受けます。
しかし、「内容が難しくてよく分からない」「専門用語がたくさん出てきて理解できない」ということもあるかもしれません。
その場合、病状はもちろん、治療方法やそれに伴うリスクなどを患者が理解できていない可能性があります。
本人が理解していない状態で治療を開始してしまうと、薬の副作用や治療結果について「こんなはずではなかった」と患者や家族がつらい思いをすることも考えられるのです。
医療従事者と患者との間に信頼関係を育める
医療従事者の説明に対して腑に落ちない場合は、相手だけでなく治療方法についても不信感が生まれてしまう可能性があります。
適切な医療の遂行に加えて治療効果の達成には、患者と医療従事者とのコミュニケーションが必要不可欠です。
医療従事者は、患者の治療に対する不安な気持ちや疑問点を重要視し、寄り添う気持ちでケアに当たります。
このようにインフォームド・コンセントは、患者が自分自身の病状を十分理解し、納得したケアを受けるために大切なプロセスといえるでしょう。
インフォームド・コンセントは介護の現場でも
また、医療の現場だけでなく、日常生活、特に介護の現場などでも同じことが言えます。
たとえば、介護施設での事例を1つ挙げると身体拘束です。
利用者が認知症を患っている場合、歩けないことを忘れていたり、車椅子のブレーキを掛けずに立ち上がってしまったりするなど、車椅子やベッドからの転落でケガをすることが多くなります。
高齢者は骨密度が低下している傾向があるため、低位置からの転落でも骨折する恐れがあり大変危険です。
そのため、施設では「見守りを強化する」「ベッドを低くする」などの対策を行います。
しかし、それでも転落のリスクが高いときは、ベッドに柵を付けたり、安全ベルトなどで身体と車椅子を固定したりすることを選択せざるを得ないケースもあるでしょう。
この場合、事前に本人はもちろん家族にも事情を「説明」し、「同意」を得ることが必要です。
これは、介護におけるインフォームド・コンセントといえます。
このように、医療だけでなく介護においても「説明」と「同意」はどんな場面にも登場します。
ケアを行う者と患者(要介護者)は、話し合いを密にし、どのようなケアを行うのかを決めることが大切です。