2012年10月14日に開催されたNPO法人パオッコ*主催のセミナー、「遠距離介護をしても仕事は続ける」のなかで行われた「お悩み軽減! 遠距離介護アドバイストーク 自分の仕事も生活も大切に」の様子を、前回ご紹介しました。今回はより具体的な体験談とそれに対するアドバイスが飛び交った、トークライブ後半の様子をご紹介いたします。
>>トークライブ前半の様子はこちら
<文 椎崎亮子>
*:NPO法人パオッコ
親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として立ち上げられた団体。「ひとりの経験はきっと誰かの役に立つ」を理念として、子どもの視点からの介護の情報や体験を共有し遠距離介護をフォローするための活動を行っています。
介護にかかるお金はだれが出す?
遠距離介護でもやはり一番問題となるのは、介護にかかる費用をどうするか。これはきょうだいや親せきとの関係にも直結します。ふかやさんの場合は、帰省にかかるお金は親に出してもらったそうです。「親にお金をもらう申し訳なさはあっても、出してくれるものは出してもらい、その分頻繁に帰れると割り切る。死んでから遺産をもらうより、生きているうちに親が子のためにお金を使うことで、親にも喜んでもらえる」と語ります。
基本的には親の介護にかかるお金は、親本人のお金で賄うべきものとのことですが、実際には子どもたちにも負担が発生します。きょうだいで費用を分担するときには、きょうだいの配偶者の意見などもあり、もめることもよくあるそうです。アドバイザーの桶谷さんからは、「介護家計簿」をつけることでトラブルを回避することができると提案がありました。
きょうだいとのメール・電話は要注意
たかぎさんは、きょうだいとの関係がうまくいかず、いさかいがあったと話します。それに対し前出の桶谷さんは、きょうだいとのやりとりのコツとして「メール・電話など顔が見えないツールで決定的なことを話さないようにする」ことを挙げました。膝を突き合わせたときに、真摯に冷静に話をすることで、誤解を生まないように努力をするというものです。相続などがからむことで、きょうだいとの関係は親の介護を契機に複雑化する問題点が明らかになりました。
都会と地方の「感覚の差」をどう埋めるか
会場からは、「地方のケアマネ、施設に遠距離介護について理解してもらえない」との意見が出されました。質問者は「介護者の将来を全く考えてくれず、親のために帰ってくるのが当然だという対応をされた」と辛い胸中を語りました。
これに対してアドバイザーの岩澤さんは、親のそばにいるケアマネとの間に情報のギャップがあると話しました。子は親の日常を見ていないため、支援する側の事情が見えない。反対にケアマネは親の日常しか見ていないため、子の事情が見えないのです。その質問者には親の主治医という理解者がいるとのことだったので、岩澤さんは「理解者である主治医とケアマネの間で情報共有してもらう」ことを提案。そのためには、情報を紙に書いて残る形で双方に渡すのがよいと話しました。
岩澤さんによれば、ケアマネが家族に期待するのは「何かあったときにどうするかを責任もって判断すること」だといいます。もちろん、子はケアマネには事情をざっくばらんに話して状況を分かってもらい、互いに歩み寄る努力をする必要もあります。反面、今後は、個別のニーズに応えられるよう、ケアマネの質の向上も必要だという結論になりました。
職場の同僚に迷惑をかけないためには
最後に、セミナー前半の講演で「介護があっても仕事をやめないで」と提案していた桶谷さんから、再度介護を理由に仕事を急にやめてしまわないようにというメッセージがありました。休業制度の知識を持ち、上手に使うことで仕事を続けることができます。ただ、介護休業を取得できる会社であったとしても、休めば同僚に迷惑をかけるため、誰しも遠慮がちになってしまうといいます。
「同僚には、迷惑は必ずかかってしまうものです。でも、介護は誰にもおこる問題。同僚とは、介護の話をして、共感を育てておくことをお勧めします」
親、きょうだい、ケアマネなどの介護支援者、会社、同僚。遠距離介護をうまくやっていくためには、周囲とどうコミュニケーションを取っていくかにかかっている、という課題が見えてくるセミナーでした。
こうした遠距離介護の特徴や現状をふまえ、遠距離介護の今後のあり方、課題などを知るべく、パオッコ理事長である太田差惠子さんにお話を伺いました。そのお話は次回ご紹介いたします。