家族のうちの誰かが要介護状態になった場合、その近親者が介護するケースは非常に多くあります。ただその場合、介護をする家族は仕事を休んだり、場合によっては休業したりする必要が出てきます。
そこで利用したい制度のひとつが「介護休暇」。実はこの「介護休暇」制度は使いづらいことで有名だったのですが、利用しやすいよう休暇を取得する時間の単位が見直されました。2019年6月に制度改正へ向けた重要な動きがあり、2021年1月から適用されます。
「介護休暇」とはどんな制度?
「介護休暇制度」とは、近親者のなかで病気やケガ、高齢による身体能力の低下といった理由で要介護状態になった人がいる場合に、その介護をすることになった労働者に対して一定期間の休暇を与えることができる制度です。
「介護休暇制度」の対象となる近親者の範囲は、その労働者の両親や祖父母、配偶者とその父母、子供、兄弟姉妹、孫。要するに、家族内介護をバックアップする制度だと考えておけばいいでしょう。
この「介護休暇制度」は、「育児・介護休業法」という法律にのっとって定められた公的な制度です。そのため、適用条件には雇用形態での制限もあります。
対象となるのは雇用期間が6カ月以上のすべての従業員が基本で、日雇い労働者、1週間の所定労働期間が2日以下の労働者、雇用期間が6カ月未満の従業員などは対象外となっています。
現行の制度では1つの年度で最大5日間、介護対象が2人以上だと最大10日間までを「介護休暇」として取得できます。
1年に取れる休暇期間が5日や10日であることからもわかる通り、この制度は付きっきりの介護や長期間の介護に備えるものではありません。ケアマネジャーとの打ち合わせといった、比較的短期間で済む事案に向いた制度です。
家族の介護のために長期休暇を取りたい場合は、これとは別に「介護休業」という制度を利用します。「介護休業制度」は、近親者の誰かが2週間以上の常時介護が必要な場合に、介護をする家族(労働者)は1年で最大93日間の休業期間を取ることができる制度です。
この「介護休業制度」と「介護休暇制度」の違いを、まず押さえておきましょう。ここを理解しておくと「介護休暇制度」の何が問題なのかを理解しやすくなります。
「介護休暇制度」の変更点とそのメリット、これからの課題とは
ここでは「介護休暇制度」の何が問題だったのかと改正内容について、順を追って説明します。
「介護休暇制度」で問題だった点
介護休暇制度は、基本的に最大で1年に5日間だけしか休暇を取れません。そのうえ、介護休暇は1日か半日単位でしか取得できないのです。
ものの数時間だけ仕事を抜けたい場合でも、わざわざ1日や半日単位で休暇を取る必要があるので、簡単に貴重な5日間の利用上限を使ってしまいます。
5日以上の休みが必要になった場合は、有給休暇などのほかの制度を使うしかありません。柔軟性が必要な制度であるにもかかわらず、使いにくかったと言えます。
改正へ向けた動き
そこで、2019年の6月21日に、政府は閣議決定で介護休暇制度を改定する案を出しました。主な要点は、取得の時間単位が1日、半日単位だったものを1時間刻みの時間単位と半日単位へと変更するというものです。
これによって1時間だけ、半日だけ、あるいは4時間、6時間といった細かな取得ができるようになります。
2019年12月10日に厚生労働省による省令改正案が承認され、2021年1月から適用されることになりました。
改正後のメリットと課題
この改正によって、介護休暇制度はこれまでより使いやすくなり、今後は利用機会がより増えていくと予想されます。短時間での利用が可能となるので、家族がより積極的に介護や看護に関わりやすくなる点は評価されてもいいでしょう。
ただし、問題点もあります。そもそも、短期休暇にどれほどのニーズがあるのかという点を、もう少し細かく検証すべきだと言えます。厚生労働省のデータや素案を見ても、短時間の介護休暇に対するニーズに関する検証がまだまだ不十分という印象です。
さらに、より細かな期間での利用が可能になったぶん、その管理や運用は複雑化してしまうことが予想されます。取得手続きなどが従来よりも面倒になるおそれもあるので、この点で今後運用が広まっていくのかは未知数です。
まとめ
家族の介護や看護などのために、ごく短期的な休暇を取得できる「介護休暇制度」。この制度をより使いやすい仕組みにするための改正は2021年1月です。
家族の予期せぬ病気や事故は誰にでも起こりうることなので、「介護休暇制度」の存在を正しく知っておくことは重要です。うまく利用できると非常に役に立つ制度だと言えるでしょう。