すっかり定着してしまった「少子高齢化」という言葉。子供が少なくなった、お年寄りが増えたと実感している方も多いかもしれません。厚生労働省の発表によると、100歳以上の高齢者は全国で7万人を超えているのが現状です。
ただ、「少子高齢化」とは具体的にどのようなものか、それに実際の数字までは意外と知らないものです。わが国における少子化・高齢化の現状を、統計から探っていきましょう。
高齢化率28.1%の衝撃
内閣府がまとめる「令和元年版高齢社会白書」によると、2018年10月1日時点で、日本の総人口は1億2,644万人。このうち、65歳以上のいわゆる「高齢者」の人口は、3,558万人です。
計算すると、高齢化率はなんと28.1%。高齢化率とは、総人口における高齢者人口の割合で、日本は世界1位の数値です。日本における平均寿命の長さも大きく影響しているのでしょう。世界のなかでも日本の高齢化率は圧倒的に高く、今後も少なくとも2060年頃までは日本がトップでい続ける見通しです。
いっぽうで、生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの人口は、7,545万人で、総人口の59.7%となります。
もしかしたら、これらの数値を見ても、いまの状態をイメージしづらいかもしれません。しかしこれを、「6割の現役世代で、3割の高齢世代を支えているのが現状」と言い換えたらどうでしょうか。
現代日本は、2人の現役世代で1人の高齢者を支えているのです。これは、人類史上例を見ない状況だといえます。
意外と古い少子化のはじまり
高齢者が増えたいっぽうで、子供の数は非常に少なくなっています。15歳未満人口は1,542万人で、比率はわずか12.2%に過ぎません。高齢者人口の半分にも満たないのが現状です。
人口を維持するためには2.07の合計特殊出生率が必要とされていますが、実際の数値はどうなっているのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所がまとめている「女性の人口再生産に関する主要指標」にある、1925年以降の合計特殊出生率を見てみましょう。
この統計がスタートした1925年には、合計特殊出生率5.10でした。ところが、第2次世界大戦が終結してから12年後の1957年には2.04と、はじめて人口維持水準を割り込んだのです。
以降はおおむね2.0前後で推移していましたが、1975年に2.0を割り込んでからは、人口維持水準まで回復することなく今日に至っています。
出生関係の数値だけを見ると、1960年以前に日本では人口増加が止まっているはずですが、実際には21世紀に入るまで、人口は増加していました。この理由は、実はこの期間、出生者数は死亡者数を上回っていました。そのため、人口は増加を続けたのですが、この人口増加は、高齢化の進展を伴うものでした。
日本の少子高齢化は将来どうなる?
内閣府「令和元年版高齢社会白書」によると、高齢化率は年々上昇を続け、2036年には33.3%と現在の28.1%より5ポイント超上昇する予測です。33.3%とは、つまり総人口の3人に1人以上が高齢者になるということです。
高齢者人口は、2042年以降は減少に転じます。しかし、分母となる人口は2010年頃にはすでに減少に転じています。そのため、高齢化率は2045年に36.8%に達してからも、ゆるやかな上昇を続けます。
2065年には高齢化率は38.4%と、2.6人に1人が高齢者となります。その頃には、女性の平均寿命は91.35歳、男性も84.95歳に達しています。センテナリアン(百寿者)と呼ばれる100歳以上の人が、周囲に当たり前にいる社会を迎えていることでしょう。
一方で、0歳~64歳の人口も減少していきます。2065年には、1.3人の現役世代で1人の高齢者を支えることになるかもしれません。
▼高齢化の推移と将来推計

*内閣府「令和元年版高齢社会白書」より
秋田県がもっとも高い!都道府県別の高齢化率
高齢化の進展は、日本全国で進むこととなります。2018年時点の高齢化率は全国でおおむね30%前後ですが、もっとも高いのは秋田県の36.4%、もっとも低いのは沖縄県の21.6%です。
これが2045年には、どの都道府県でも高齢化率が上昇します。
2018年時点でもっとも高い秋田県は2045年になっても全国1位で、なんと50.1%と人口の半分以上が高齢者になる予想です。その他の地域も5~14%程度増加し、沖縄県でさえ30%を超えます。
▼都道府県別の高齢者率
|
2018年(%) |
2045年(%) |
高齢化率の上昇(ポイント) |
北海道 |
31.3 |
42.8 |
11.5 |
青森県 |
32.6 |
46.8 |
14.2 |
岩手県 |
32.5 |
43.2 |
10.7 |
宮城県 |
27.8 |
40.3 |
12.5 |
秋田県 |
36.4 |
50.1 |
13.7 |
山形県 |
32.9 |
43.0 |
10.1 |
福島県 |
30.9 |
44.2 |
13.3 |
茨城県 |
28.9 |
40.0 |
11.1 |
栃木県 |
28.0 |
37.3 |
9.3 |
群馬県 |
29.4 |
39.4 |
10.0 |
埼玉県 |
26.4 |
35.8 |
9.4 |
千葉県 |
27.5 |
36.4 |
8.9 |
東京都 |
23.1 |
30.7 |
7.6 |
神奈川県 |
25.1 |
35.2 |
10.1 |
新潟県 |
31.9 |
40.9 |
9.0 |
富山県 |
32.0 |
40.3 |
8.3 |
石川県 |
29.2 |
37.2 |
8.0 |
福井県 |
30.2 |
38.5 |
8.3 |
山梨県 |
30.3 |
43.0 |
12.7 |
長野県 |
31.5 |
41.7 |
10.2 |
岐阜県 |
29.8 |
38.7 |
8.9 |
静岡県 |
29.5 |
38.9 |
9.4 |
愛知県 |
24.9 |
33.1 |
8.2 |
三重県 |
29.4 |
38.3 |
8.9 |
滋賀県 |
25.7 |
34.3 |
8.6 |
京都府 |
28.9 |
37.8 |
8.9 |
大阪府 |
27.5 |
36.2 |
8.7 |
兵庫県 |
28.8 |
38.9 |
10.1 |
奈良県 |
30.9 |
41.1 |
10.2 |
和歌山県 |
32.7 |
39.8 |
7.1 |
鳥取県 |
31.6 |
38.7 |
7.1 |
島根県 |
34.0 |
39.5 |
5.5 |
岡山県 |
30.1 |
36.0 |
5.9 |
広島県 |
29.0 |
35.2 |
6.2 |
山口県 |
33.9 |
39.7 |
5.8 |
徳島県 |
33.1 |
41.5 |
8.4 |
香川県 |
31.5 |
38.3 |
6.8 |
愛媛県 |
32.6 |
41.5 |
8.9 |
高知県 |
34.8 |
42.7 |
7.9 |
福岡県 |
27.6 |
35.2 |
7.6 |
佐賀県 |
29.7 |
37.0 |
7.3 |
長崎県 |
32.0 |
40.6 |
8.6 |
熊本県 |
30.6 |
37.1 |
6.5 |
大分県 |
32.4 |
39.3 |
6.9 |
宮崎県 |
31.7 |
40.0 |
8.3 |
鹿児島県 |
31.4 |
40.8 |
9.4 |
沖縄県 |
21.6 |
31.4 |
9.8 |
*内閣府「令和元年版高齢社会白書」より作成
高齢化率は地方で高くなる傾向で、北日本や東日本では40%を超える道県が目立ちます。西日本では比較的少ないのですが、それでも35%超えの府県がほとんどで、高水準ということは間違いないでしょう。
これまで、高齢化社会の進展が比較的ゆるやかであった大都市圏でも、高齢化が進みます。人口が多いだけに、大都市圏での増加数は大きなものとなり、影響はより大きくなります。
明るい未来像を描くために
ここまでの話で、高齢化社会に不安を感じた方もいるでしょう。ここに描かれた将来像は非常に厳しく思えるかもしれません。しかし少子高齢化は、人々の生活が豊かになり、高度な社会発展が実現したことを意味します。
「数少ない現役世代が、多くの高齢者を支えなければならない社会」への不安はあるでしょう。1950年には、1人の高齢者を支える現役世代の数は12.1人でした。しかし、1950年の平均寿命は女性で61.5歳、男性では58歳。現役世代とされる64歳にも満たなかったのです。これは、現在の「現役世代2人で高齢者1人」と単純比較できる数値ではありません。
現在、高齢者の仲間入りをした人すべてが、支援を必要としているわけではなく、高齢者のなかにも、現役世代とともに支える側に回る人も少なくありません。平均寿命とともに健康寿命も延伸し、その差をいかに小さくするかが、未来像を明るいものにする重要なキーポイントになりそうです。
参考資料
内閣府「令和元年版高齢社会白書」
厚生労働省「平成 30 年(2018)人口動態統計の年間推計」
国立社会保障・人口問題研究所