ダブルケアとは、介護と子育てを両方すること。このダブルケアの問題は、今にはじまったことではありません。
しかし少子高齢化が進む現在では、より多くの人が直面し、大きな課題となることが考えられます。
そのことから、一部の自治体では相談窓口を設けるなどの動きが出ています。今後、国や各自治体によって、さらにサポート体制が整えられていくことが期待されます。
他人事ではないダブルケア
介護と子育てを両方するダブルケアを行っている人は、2016年の内閣府による発表によると25万3千人。その中の約8割が30~40代で、平均年齢は39.7歳です。
ここ数年で、男女ともに初婚の年齢が上昇していることもダブルケアが起こりやすい原因でしょう。
▼初婚年齢・第一子出産年齢の平均
|
1975年 |
2015年 |
40年での差 |
男性 |
27.0歳 |
31.1歳 |
4.1歳 |
女性 |
24.7歳 |
29.4歳 |
4.7歳 |
第一子出産 |
25.7歳 |
30.7歳 |
5歳 |
*内閣府「平成29年版 少子化社会対策白書」
特に第一子出産年齢は、この30年で5歳上がっています。ダブルケアをする人の平均年齢39.7歳は、まさに子育て世代。以前より子どもが遅く生まれる傾向にあるため、必然的に子どもが幼いうちにダブルケアがはじまるケースも増えるのです。
晩婚化・出産年齢の高齢化に加え、日本人の平均寿命が延びていることを考えると、ダブルケアの期間がより長くなることも懸念されます。
これらのことから、子育てと介護を同時にする「ダブルケア」世帯が増加傾向にあるといえるでしょう。
ダブルケアは突然やってくる
介護が必要になる原因としてよくあるのは、脳卒中や認知症、高齢による衰弱、骨折・転倒などです。
このうち、「脳卒中」と「骨折・転倒」は突然起こるケースがほとんどで、”ある日突然介護が必要になった”という人も少なくありません。
ダブルケアとなる状況はさまざまですが、2つのケースを紹介します。
ケース1 Aさん(30代・女性)
Aさんは、小学生と幼稚園に通う息子2人と夫との4人暮らし。近所に住む夫の両親は夫婦二人暮らしで、認知症を持つ姑を舅が介護する、いわゆる“老老介護”でした。
あるとき病気で舅が入院してしまい、Aさんは姑の介護、舅のお見舞いなどに追われる生活が始まりました。
数か月後、舅は亡くなり、Aさんは姑の介護を続けることに。息子たちの面倒をみながら、姑の病院付き添いや食事介助、デイサービスへの送り出しなどをしています。
ケース2 Bさん(40代・女性)
Bさんは、夫と姑、中学生の息子、小学生の娘の5人暮らし。ある日、姑は転倒し骨折したことがきっかけで一人での外出ができなくなり、Bさんが病院への付き添いや入浴のサポートをするようになりました。
さらに後日、実家で一人暮らしをしていた父親が外出時に「家に帰れない」と警察に保護され、認知症であることが分かりました。
Bさんには姉がいますが住まいは遠方です。介護の協力をお願いすることが難しいため、Bさんは家庭のことをやりながら、デイサービスや配食サービスを利用して、週に1~2回父親の家で掃除や洗濯などをしています。
老老介護をしている世帯では、介護者が体調を崩したり病気になると、Aさんのように2人を同時にサポートする必要に迫られることも少なくありません。
またBさんのように、夫の親と自分の親を両方サポートするケースもあり、子育て中の人には大きな負担となってしまいます。
ダブルケアの負担を軽減するために
ダブルケアをする人の平均年齢は39.7歳。そして40歳になると、介護保険制度の第2号被保険者として、介護保険料の負担をすることになります。40歳は、介護が身近に感じられる年齢ともいえるでしょう。
2000年に介護保険制度がはじまりましたが、2016年の内閣府の発表によると、介護を必要とする心身の状態の人のうち、17.4%が「要介護認定を受けていない」、4.9%は「要介護認定についてわからない・知らない」と答えています。
介護が必要かもと思ったら、要介護認定を受けて必要なサービスを利用することが、ダブルケアの負担を軽減する近道となります。
両親や身近な人に対して介護の不安があれば、地域包括支援センターに相談してみるのもよいでしょう。
困ったことや悩みがあれば相談し、一人で抱えこまないことが大切です。