便利さに欠ける現在の介護保険申請
親が急に倒れ、介護保険の利用が必要になった時。どこでどんな手続をしていいのかわからないという方は多いのではないでしょうか。
インターネットで調べて手続自体は把握できたとしても、仕事が忙しくて、平日、役所に申請には行けないという方もいるでしょう。こうした悩みが、これから少し軽減されるかもしれません。
今、政府が、2018年度中に介護関係の申請のオンライン化を進め、ワンストップサービスを実現しようとしているからです(*)。
現在、介護保険の申請は、月曜日から土曜日まで運営している「地域包括支援センター」や、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)が代行してくれます。
「地域包括支援センター」とは、中学校区に1つ程度設置されている、高齢者や介護についての総合相談窓口。介護のことで悩んだとき、まず相談したい機関です。
一方、ケアマネジャーは、要介護者が在宅でできるだけ自立して暮らしていけるよう、介護保険サービスなどをコーディネートしてくれる専門職。居宅介護支援事業所に勤務しています。
地域包括支援センターやケアマネジャーに依頼し、要介護認定を申請すると、自宅等を訪問して認定調査を行い、通常1ヶ月程度で要介護度が通知されます。
しかし、申請者が多く混み合っているなどの事情で、なかなか通知が来ないことがあります。いつごろ認定が下りるのかを知りたいと思ったら、地域包括支援センター(あるいはケアマネジャー)から役所に問い合わせてもらわねばならず、煩雑です。問い合わせを受ける役所の方も、この対応に手を取られることが少なくないと言います。
オンライン化を検討する介護保険申請の項目
介護関係の申請のオンライン化が検討されるようになったのは、申請者、それを支援する介護事業者、行政のそれぞれにとって省力化のメリットがあるからです。
今、検討されているのは、利用者証明用電子証明書を搭載したマイナンバーカードがあれば利用できる政府のサイト「マイナポータル」を活用したオンライン申請です。「マイナポータル」では、児童手当など子育て関係の申請の一部がすでにオンライン化されています。
介護関係では、下記の申請のオンライン化が検討されています。
(1)要介護・要支援認定申請
(2)居宅(介護予防)サービス計画作成(変更)依頼の届出
(3)負担割合証の再交付申請
(4)被保険者証の再交付申請
(5)高額介護(予防)サービス費の支給申請
(6)介護保険負担限度額認定申請
(7)居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給申請
(8)居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給申請
確かに、これらが自宅から申請できるようになれば、日中、働いている人にとってはありがたいことですね。
行政手続きのオンライン化は普及する?
しかし、検討されている「マイナポータル」でのオンライン申請には、まだ課題があります。最も大きな課題は、記事にもあるように、現状、「マイナポータル」が活用されていないことです。
そもそも、2016年1月から交付が始まったマイナンバーカードの交付率は、2018年6月時点でわずか11.5%。マイナンバーカードを持っていなくては利用できない「マイナポータル」が活用されていないのも、当然と言えば当然のことです。
今後、介護関係の申請だけでなく、死亡・相続、引っ越しの際に必要となる様々な手続についても、オンライン化によるワンストップサービスの実現が検討されています。これが実現すれば、マイナンバーカードの交付を受けようとする人が増えるかもしれません。
特に引っ越し関係では手続きすべきことが多く、自宅からオンラインで申請できれば、かなり時間と手間が省けるからです。
介護関係で言えば、市町村を越えての引っ越しの際は、引越先の自治体で介護保険証の切り替えが必要になります。介護保険は医療保険と違い、住民票のある市町村等が保険者となる地域保険だからです。
オンライン申請が整備されるのであれば、様々な申請関係を一気に進めてほしいですね。そして、パソコンに不慣れでも使いやすいシステムとなることを期待したいと思います。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*介護手続きネットで可能に 18年度中に実施へ(毎日新聞 2018年10月1日)