高齢者の所得に応じた、介護保険や医療費の負担額を見直し
介護保険サービスの自己負担割合に2割負担が導入されてから3年。2015年8月から、一定以上の所得がある人は2割負担の対象となっていました。
今度は2018年8月から、2割負担となった人たちのうち、より所得の高い人たちの負担割合が3割に引き上げられます。
所得に応じた一定額以上の自己負担分が月々還付される「高額介護サービス費」も、すでに2017年8月から市民税非課税世帯以外は月額4万4400円に引き上げられています。
一定以上の所得があると、毎月最高4万4400円までは負担しなくてはならないということです。負担は、徐々に重くなってきていますよね。
では、今後、利用者の負担はどうなっていくのでしょうか?
2018年6月に経済財政諮問会議で示された「経済財政運営と改革の基本方針2018(仮称)」、いわゆる「骨太の方針」では、医療、介護の利用者負担や保険給付の適正化について、以下のような記述が見られました。
・高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討する。
・団塊の世代が後期高齢者入りするまでに、世代間の公平性や制度の持続性確保の観点から、後期高齢者の窓口負担の在り方について検討する。
・介護のケアプラン作成、多床室室料、介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する。
・年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討する。
「検討する」という言葉が並んでいますが、ここでのキーワードは、「負担能力に応じた公平な負担」です。
介護保険について言えば、「現役並み所得」や資産があり、費用を払うことができる人は現役で働く人たちと同じように払ってください、ということですね。この「現役並み所得」の基準についても見直しを検討していくとのことです。
ケアプラン有料化、軽度者への生活援助サービス廃止も検討
2018年度の介護保険制度改正では、買い物や調理、掃除などといった訪問介護の「生活援助サービス」について、過剰な利用への歯止めがかかりました。2018年10月から、「基準回数」を超えた訪問回数を設定したケアプランは、ケアマネジャーが市町村に届け出ることが義務づけられたのです。
基準回数は、要介護1で月27回、要介護3で月43回など。この基準通りであれば、要介護1では、毎日の利用ができなくなります。ケアマネジャーなどからは、要介護1で見守りが必要な認知症を持つ一人暮らしの人には、毎日見守りが必要な人もいるのに、という声も上がりました。
といっても、基本的には、これは基準回数以上の利用ができないということではありません。ただ、市町村にケアプランを提出しなくてはいけないとなれば、ケアマネジャーは本当にそれだけの回数の訪問が必要かどうかを再考することと思います。
そうしたプレッシャーをかけることで、過剰な訪問回数を見直してもらう。それを意図した給付の適正化措置と言えます。
利用者の中には、残念ながら、介護保険がその人なりの「自立」を支援するためのサービスであることを忘れて(あるいは知らずに)、利用できるものはできるだけ利用しよう、と考える人もいます。
そうした人たちに、「介護保険のサービスは必要な時に必要なだけ使うもの」であることを、理解してもらうための方策とも言えます。
冒頭で挙げた「骨太の方針」の検討事項の中には、「介護のケアプラン作成」「介護の軽度者への生活援助サービス」について、給付のあり方を検討するという項目があります(*)。
現在、自己負担なしで作成しているケアプランについては、有料化することで利用者にコスト意識を持って、ケアプランの善し悪しをチェックしてもらいたいという意図があるようです。
一方、軽度者への生活援助サービスについては、いずれ介護保険の給付からは除外する方向だと言われています。
使っていたサービスを削られれば、生活に大きな影響が出る場合もあります。自費でのサービス利用が必要になれば、経済的なダメージもあるかもしれません。「骨太の方針」がどう具体的な施策となっていくのか。注意深く見守っていきたいですね。
同時に、利用者サイドも介護保険の半分は公費で支えられていることをもう一度意識した方がよいのかもしれません。過剰なサービス利用を重ねる人がいることで、結果的に財源が不足する事態に陥り、サービスが削られ、負担が重くなる。
回り回って利用者に不利益が返ってくることを認識したいものです。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*ケアプラン作成「給付の在り方検討を」―政府の骨太方針(ケアマネジメントオンライン 2018年6月6日)