介護の主な担い手は、同居家族が6割、事業者は1割のみ
2000年に介護保険制度が創設されてから、間もなく丸18年。家族の介護負担は介護保険創設以前に比べれば、かなり軽減されたことでしょう。
認知症を持つ身内のことなどもオープンに語る人が増え、家族だけで介護を抱え込むことは減っているイメージがあります。
しかし、平成28年の「国民生活基礎調査」によると、主な介護者を「事業者」とした回答は、わずか13%。今も主な介護者は、58.7%が同居家族だという回答です。抱え込んでいるかどうかはともかく、介護の主な担い手は今もやはり家族なのですね。
介護する「同居家族」の内訳は、配偶者が25.2%、子が21.8%、子の配偶者が9.7%となっています。以前は「嫁」が介護を担うイメージがありましたが、そこはずいぶん変わってきたようです。
この調査によると、介護が必要な人の約38%が核家族世帯。そのうちの約20%が夫婦2人暮らしです。配偶者が介護を担わざるを得ない状況も多いのだと思います。
3世代同居はわずか約15%。家族の構成人数が少なくなっている今、実は1人の介護者にかかる負担は大きくなってきているのかもしれません。
介護の苦労を分かち合える「ケアラーズカフェ」
介護をしている家族からは、自分の時間がない、という声がよく上がります。また、介護の悩みを相談したり、愚痴をこぼしたりできる相手がいないという声もよく聞きます。
同じように介護をしている友人がいれば、互いに励まし合って気分転換ができるかもしれません。
しかし、周囲に介護を経験している友人がいないと、話をしてもなかなか理解してもらえず、かえってストレスがたまってしまうこともあります。介護の苦労を分かち合える人の存在は、介護負担を和らげ、在宅介護を続けていく上ではとても重要です。
そこで、最近、地域で増えてきたのが「介護者カフェ」「ケアラーズカフェ」などと呼ばれる、介護をしている人たちの居場所です(*)。
飲物や軽食を楽しみながら、おしゃべりをする。愚痴をこぼす。介護の苦労を分かち合う。情報交換をする。そんな場を、NPO法人や介護事業者、地域の専門職、地域住民などが提供しているのです。
認知症介護に悩む家族には「認知症カフェ」も
自宅で介護をしていると、他の人がどんな介護をしているのかを見るチャンスはあまりありません。この介護方法でいいのだろうかと、不安を感じながら介護している家族もいることでしょう。
特に認知症を持つ高齢者の介護などでは、お風呂に入りたがらない、トイレではないところで用を足してしまうなど、様々な困りごとを抱え、相談相手がいないためにストレスを募らせてしまうことがあります。
そうした困りごとを他の介護家族と共有し、対処方法を情報交換ができるだけで、介護負担はかなり軽減されます。
認知症を持つ人、その介護者に対しては、地域に「認知症カフェ」「オレンジカフェ」と名付けられた居場所も増えています。
介護は、いつまで続くか、なかなか先が見えません。それだけに、できるだけ抱え込まないことが大切です。
自宅近くの介護者カフェ、認知症カフェの開催場所については、役所や最寄りの地域包括支援センターに問い合わせると教えてもらえます。
上手に利用して、無理をせず、息長く在宅介護を続けていっていただければと思います。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*介護家族 独りで悩まないで 「カフェ」で悩み相談、負担緩和(日本経済新聞 2018年2月21日)