団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年。
「迫り来る2025年問題」などと言われ、しばしば話題になります。なぜ「2025年」はそれほど問題なのでしょうか。
「団塊世代の高齢化」と「若者の減少」
それは、団塊の世代が日本の人口に占める割合が高く、この世代が後期高齢者になることは日本全体に与える影響が大きいからです。
団塊の世代とは、一般に、「ベビーブーム」と言われた1947年から1949年の3年間に生まれた人たちを指しています。
2015年時点での団塊の世代の人数は、約638万人。全人口の約5%を占めるボリュームゾーンです。
直近の国勢調査で見ると、2013年から2015年の3年間に生まれた子どもは、約293万人。少子化が進んだ今の子どもたちの人数と比べると、団塊の世代の人数の多さは歴然です。
団塊の世代は2015年に、65歳以上の高齢者の仲間入りをしました。
そして2025年には、この全人口の5%の人々が、後期高齢者に加わっていくわけです。
このため、一気に高齢化が進み、総人口の1/3が65歳以上の高齢者、1/5が75歳以上の後期高齢者になると推計されています。
総人口に高齢者の占める割合が高まっていくということは、若者=労働力人口が減っていくということ。そして、出産できる世代も減っていくということです。
日本はすでに人口減少社会に転じましたが、今後はどんどん人口が減っていきます。
2025年の25年後である2050年には、少子高齢化がより一層進展。1人の若者が1人の高齢者を支える、「肩車型」社会になるといわれているのです。
2025年以降は、「要介護」も「認知症」も一気に増加
後期高齢者になると、要介護認定率が高まります。
2013年時点では、65~74歳までは同世代の中で要介護状態の人は3%にすぎないのに、75歳以上になると一気に23.3%に跳ね上がりました。
2017年7月末現在、要介護認定者数は約638万人です。
2025年に団塊の世代が後期高齢者になったときには、この世代だけで要介護者が100万人以上いる計算になります。
また、認知症を持つ人も、75歳を超えると急激に増えていきます。
80歳以降は、5歳年齢が高くなるごとに、2割ずつ認知症を持つ人の割合が増していくと言われています。
2012年時点では認知症を持つ人は約460万人。今後増え続けることで、2025年には約700万人になると推計されています。
2025年問題に向けてできることは
この「大量介護」時代への備えは、十分ではありません。
介護職の数も介護施設の数も、介護サービスの供給量も足りていません。医療の供給も不足すると言われ、いわゆる、「介護難民」「医療難民」が出る恐れがあります。
だから、団塊の世代が後期高齢者になることが、「2025年問題」といわれているのです。
団塊世代は兄弟の人数も多く、跡継ぎの長男以外は故郷を離れ、大都市部に集団就職するケースが多く見られました。いわゆる「金の卵」といわれた中学卒の労働者です。
地方都市から首都圏へ上京してきた団塊世代は多く、そのまま定住して家庭を持ちました。
その人たちがこれから後期高齢者となっていくため、特に首都圏で「介護難民」「医療難民」が出ることが心配されています。
そもそも、日本の社会保障制度は、人口が増え続けることを前提に考えられたものです。
人口減少に転じた今、負担と保障のバランスを考え、新たな制度のあり方を考えていかなくてはなりません。
私たちも「難民」にならないために、自分なりにできることをしていく必要があります。
毎日の食習慣を見直し、運動を心がけて、「健康寿命」を伸ばす。そうして、要介護状態にならないまま天寿を全うすることを目指す。
人口減少局面に入った超高齢社会の日本では、それが、国民が最低限、果たすべき役割になっていくのかもしれません。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>