自宅から日中通って過ごすデイサービス。そのデイサービスに、「アミューズメント型」と呼ばれるものが増えています。これは、麻雀やパチンコ、ルーレットやカードゲームなど、本場さながらのカジノの雰囲気が楽しめるというもの。そうしたデイサービスが、男性利用者の人気を集めていることを、以前の記事で、少しご紹介しました。デイサービスは、たいていどこに行っても女性の方が多いですよね。そんな中、男性利用者が集まる理由は何でしょうか。
男性は無目的な集まり、テーマのない会話が苦手
一般に女性には、目的がなくても集まっておしゃべりを楽しめる人が多いもの。一方、男性は、親しい仲間でもないのに、ただ何となく集まって過ごすのは苦手という人が多いといわれます。男性は目的のある会合、テーマのある会話は得意でも、漫然と世間話をする習慣があまりないからかもしれません。デイサービス利用者に女性が多いのは、そうした性別による違いも背景にありそうです。
そうでなくても、高齢者の絶対数は、男性より寿命の長い女性の方が多数。そのため、これまでのデイサービスは、折り紙やちぎり絵、絵画、生け花など、女性が好むアクティビティがよく行われてきました。そうしたアクティビティに興味のない男性にとって、デイサービスは “ただ1日拘束される場所“となってしまいがちです。機能訓練や折り紙などのアクティビティ、食事、入浴以外は、ただ座ってお茶を飲むだけ。そんなデイサービスでは、おしゃべりが苦手な男性が行く気にならなくても仕方がないですよね。
一方、麻雀やパチンコなどは、男性になじみのあるアクティビティです。ルーレットやカードゲームなどのあるデイサービスなら、カジノ気分を楽しみたい男性が、ちょっとのぞいてみたいという気になるのは良く理解できます。男性がアミューズメント型デイサービスを好んで利用するのは、それだけ惹きつけるものがあるということなのですね。
ところが、こうしたアミューズメントだけを提供するデイサービスが増えてきたことから、一部自治体に規制の動きが出てきたのです(*)。
デイのアミューズメントは、本来、“目的”ではなく“手段”
もともと、デイサービスでのこうしたアミューズメントは、一般的なデイに足が向かない男性にも積極的に足を運んでもらう「きっかけづくり」として取り入れられたものでした。
さらに、例えばカードゲームに取り組むことで、カードの数字を計算したり、手指を動かしたり、他の利用者の手札に注意を払ったり。楽しみながら、認知機能や身体機能の改善につなげるという意図を持って行われていたのです。
つまり、アミューズメントはあくまでも“手段”であり、“目的”ではありませんでした。
一部の先進的な介護事業者が、行ったサービスが評判を呼び、そのやり方を有効だと感じた他の事業者が、やり方を学んで同じように展開する――。そこまではいいのですが、同じようなサービスをする事業者・施設が急速に増えていくと、なかには、当初の意図ややり方を置き去りにして、ただ「利用者が集められるから」という気持ちで運営する施設も出てきてしまいがち。
アミューズメント型デイサービスも、この流れに乗ってしまっているのかもしれません。そのために一斉に規制がかかり、アミューズメント型はダメ、となってしまうとしたら、とても残念なことです。
利用者の中には、閉じこもりがちだったのに、こうしたデイサービスに通うようになって外出が増えた人もいると思います。アミューズメントは「射幸心をあおる」といった、“害”ばかりではないはず。であれば、きちんと“手段”として利用し、機能改善を図れるような仕組みをつくっていけばいい。
アミューズメント型デイサービスの全てをダメとするのではなく、アミューズメントを上手に活用する仕組みづくりにも目を向けてほしいと思います。
<文:宮下公美子(介護福祉ライター・社会福祉士)>
* 介護保険事業のアミューズメント型デイサービスの規制 (神戸市・平成27年8月11日)