男女併せた平均寿命が84歳と、世界一の長寿国日本(*1)。男女別に見ると、男性は80歳、女性は87歳となっています。世界の平均寿命は71歳。男性は68歳、女性は73歳です。
長生きできるかどうかは生まれた場所に左右され、低所得国では平均寿命が世界平均よりさらに10年近く短くなると言われています。
日本は戦争とも食糧難とも縁のない、安心・安全な国。これが、男女とも世界平均より10歳以上長い平均寿命を実現している理由とも言えますね。
平均寿命と「健康寿命」のギャップをできるだけ短く
せっかく長生きするのであれば、「健康寿命」をできるだけ延ばしたいもの。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。
厚生労働省によると、2013年の日本人の健康寿命は、男性が平均71.19歳、女性が74.21歳でした(*2)。このときの平均寿命と健康寿命の差は、男性が平均9.02年、女性が12.4年。平均寿命が長くても健康寿命が短ければ、健康を損なってから人生を終えるまでの期間が長いということになります。これをできるだけゼロに近づけ、健康なまま人生を終えられるのが理想ですよね。政府も2020年までに「健康寿命」を1年延ばすことを目標に掲げています。

その方法として政府が挙げているのは、高齢者の介護予防や認知症の早期支援、高齢者の肺炎予防など。介護予防の推進では介護費6000億円の削減、認知症の早期支援では、医療費1000億円の削減、肺炎予防では8000億円の削減を目指すなど、具体的な医療費・介護費削減の目標数値も掲げています。
健康寿命を延ばす秘訣は、緑茶と仕事?
さて、この健康寿命、都道府県別ではどこが一番長いのでしょうか。
厚生労働省によれば、健康寿命の長い地域では、住民の生活習慣がよいのではないかとのこと。バランスのよい食事をし、適度な運動をして、休養も取り、過度の喫煙や飲酒をしない、といった生活習慣の良さが影響しているということです。
また、その人の経済状態やその土地の気候、地域住民同士のつながり、社会参加の状況、地域の保健予防施策や医療体制の充実などが関係してくることも考えられます。

2010年の厚生労働科学研究の調査によれば、健康寿命のベスト5は表のとおりです。
男女ともベスト5に入っているのは、静岡県と愛知県。この2つの県の健康寿命が長い理由として、静岡県は、子どもの頃から緑茶を飲む習慣があることが指摘されています。緑茶に含まれているカテキンには、体脂肪を減らす作用や身体の細胞や遺伝子の損傷を防ぐ作用があるとの研究成果が報告がされており、1日4,5杯の緑茶が健康維持に貢献すると言われています。静岡県の健康寿命の長さは、緑茶のパワーが影響しているのかもしれません。
また、静岡県、愛知県はともに高齢者も含め、就業率が高い県。特に高齢者の場合、就業率が高い県では医療費が少ない傾向があります。つまり、社会参加の継続が健康維持につながっているということです。そういう意味では、この2つの県は、就業率の高さも健康寿命を引き上げる一因だといえるかもしれません。静岡県や愛知県の人たちにならって、緑茶を飲む習慣をつけ、仕事を長く続けるなど社会との関わりを保って、健康長寿を目指したいですね。
<文:宮下公美子(介護福祉ライター・社会福祉士)>
*1 日本の長寿世界一続く WHO統計、平均84歳 (産経新聞 2015年5月14日)
*2 「健康寿命」延びる 男性71.19歳、女性74.21歳 (日本経済新聞 2014年10月1日)