ついに、65歳以上の介護保険の保険料が、全市町村平均で5000円を超えてしまいました。
2015年4月末に発表された介護保険の全市町村平均の第1号被保険者(65歳以上)の保険料額は、都道府県別で見ると、これまでと比べて最低でも4.6%(大分県)、最高18.0%(山形県)の伸び率。わずかな年金額の増加分が、吹き飛ぶような引き上げとなった市町村が多いことと思います。
市町村ごとに必要なサービス量等から保険料を算出
そもそも介護保険の保険料はどうやって決められているのでしょうか。
保険料は3年を1期として見直され、2015~2017年は第6期にあたります。各市町村は、1期3年間の介護サービスの必要量を推計。それをもとに「市町村介護保険事業計画」を立てて、必要な予算額から介護保険料を算出しています。
介護保険の財源は、下の図のようになっています。
50%を公費(国が25%、都道府県と市町村がそれぞれ12.5%)で負担。残り50%をその市町村に住んでいる第1号・第2号被保険者の保険料でまかないます。
保険料のうち、28%は第2号被保険者(40~64歳)の保険料、残り22%には第1号被保険者(65歳以上)の保険料が充てられます。
第2号被保険者の保険料は、国が保険料額を決め、各医療保険者が医療保険料と一緒に徴収します。

つまり、介護保険事業予算額の78%分は交付を受けるため、各市町村では残り22%分を、その市町村に住む第1号被保険者の保険料収入でまかなえるよう保険料額を算出するわけです。
このため、被保険者の人数のわりに、保険での給付額が多い市町村は保険料が高くなります。
例をあげて説明すると、以下のようなことです。
市町村内にいる65歳以上の高齢者の人数も要介護者の人数も同じ、A市とB市があるとします。
●A市は、要介護者の平均の要介護度が4
→想定される保険給付額が多いので、それをまかなうための保険料も高い
●B市は、要介護者の平均の要介護度が2
→想定される保険給付額が少ないので、それをまかなう保険料も安くてすむ
つまり、要介護状態になる人ができるだけ少なく、また、要介護状態になっても重度化している人ができるだけ少ない方が、保険料が安くなるということです。そのため、国は介護予防を推進しているわけです。
施設に頼っていたら、介護保険制度は破綻!?
NHK NEWS WEB特集(*1)によれば、第6期の65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、最高額が8686円、最低額が2800円。なんと6000円近くも違います。
また、多くの市町村が介護保険料を引き上げている中、わずかながら引き下げている市町村もあります。
大分県の豊後高田市は、要介護予備軍の高齢者に介護予防の体操を行って運動機能の向上を図り、要介護状態になるのを防いでいます。これにより、介護保険にかかる費用を3年前より減らすことができました。この取り組みを継続させることで、今回、保険料の140円引き下げを実現。
つまり、介護予防を推進→元気を保ち、要介護状態になる人を減らす→介護保険にかかる費用を減らす→保険料の引き下げ、というわけです。
このほか、特別養護老人ホームなどの施設を増やさないことで介護保険料の高騰を防いでいる保険者もあります。なぜ施設を増やさないことが介護保険料の抑制につながるかといえば、施設サービスは在宅で利用する居宅サービスに比べると、はるかに費用がかかるから。
下の表は、2014年12月度の居宅、地域密着型、施設の各サービスの給付額をその月の利用者数で割って、1人あたりの平均給付額を算出したもの。居宅サービスでは月額費用が約10万円であるのに対し、施設サービスは約2.7倍の約27万円。施設利用者が1人増えれば、居宅サービス利用者の3人分近い費用がかかってしまうということです。

*出典:介護保険事業状況報告を一部改編
つまり、施設入所を望む人が多いからといって、どんどん施設をつくっていては、介護保険料は上がる一方だということ。
今のままでは10年後には介護保険料が8000円を超えると言われていますが、施設を増やせばさらに高騰していきそう。この先も介護保険制度が持続できるのかどうか、心配になります。
介護保険制度を持続させるためには、利用者も施設に頼らず自宅で暮らし続けられるよう、まずは介護予防に務めること。そして、在宅介護を長く続けられる体制づくりについても、地域住民みんなで一緒に考えることが大切ですね。
<文:宮下公美子(介護福祉ライター・社会福祉士)>
*1「増える介護保険料 自治体に格差」 (NHK NEWS WEB特集 2015年4月30日)