現在巷で増加しつつあり、今後も普及する見込みの介護タクシー。前回は介護タクシーの定義や運行状況を紹介しましたが、今回は介護タクシーの料金について、具体的に考えていきます。
<取材・文 興山英雄>
介護タクシーの料金は?
まず、介護タクシーの料金設定は一般タクシーとどう違うのでしょうか?
一般タクシーの場合、国土交通省が地域ごとに上限を定めた運賃が掛かります。東京都23区の場合、初乗り分(2km・730円)+加算分(以降、280mごとに90円)が利用者負担となりますね。これに迎車料や深夜割増が加算されることもあります。
一方、介護タクシーの場合は『運賃+介助料』で料金が構成されているのが一般的。「各事業者のニーズに合わせて独自の料金体系を導入できる」(日本福祉タクシー協会)点が、一般タクシーとは大きく異なるところです。
では、まず介護タクシーの『運賃』について。「一律1000円」などの定額運賃や、「10分=700円」などの形で時間制運賃を採用している業者もありますが、「一般のタクシーと同程度のメーター料金を徴収しているケースが多いのが実情」(日本福祉タクシー協会)とのこと。メーター料金とは前出の国交省の認可運賃のことで、ここに『介助料』が加わることになります。
次に、その『介助料』について。こちらは業者によって料金設定が異なります。理由は「介護タクシーには介護保険(自己負担1割)が適用される業者と、適用されない業者があるため」(日本福祉タクシー協会)。
ではまず、介護保険が適用される業者(介護保険適用業者)の『介助料』は? 厚生労働省の担当課の方が説明してくれました。
「介護タクシーで介護保険が適用されるのは、車両への乗り降りや病院、自宅への移動の際に必要となる『通院等乗降介助』の部分。介護報酬(介護サービス費)は100単位です」
地域によって額は異なりますが、1単位=10円で換算した場合、介護タクシーの介助サービス費は1000円、自己負担額は100円となります。
介護タクシー費用の具体例
介護タクシー料金の内訳例
●介護保険適用業者
運賃 定額制(一律500円など)、時間制(30分1000円など)
介助料 100単位(自己負担額100円 ※1単位=10円の場合)
その他 予約料、迎車料、車いす・ストレッチャー使用料など
●介護保険非適用業者
運賃 初乗り+時間距離加算(一般タクシーと同等)
介助料 500円~1000円程度
その他 予約料、迎車料、車いす・ストレッチャー使用料など
ここで実例を見てみましょう。神奈川県内を営業エリアにする「介護タクシーかいんど」の場合、運賃は定額500円で、介助料は109円(1割負担分)。車いすに乗る要介護者が、自宅から5km先の通院先まで同社の介護タクシーを利用した場合、「支払い総額は609円になります」(介護タクシーかいんど・担当者)とのこと。
一般タクシーと比べても非常に安い料金。しかし、介護保険適用業者の場合、以下の点を踏まえておく必要があります。
「まず、介護保険を利用する場合、タクシーでの移動先は医療機関か公的機関に限定されます。買い物やレジャー目的での利用では介護保険は適用されません。二つ目に、介護保険適用業者の多くは、介護タクシー専業ではなく、訪問介護との兼業の形をとっています。タクシーの発着が、訪問介護サービスの提供地域から外れてしまうと、運賃は『定額500円』から『30分毎1000円(+介助料)』に切り替わります」(介護タクシーかいんど・担当者)
さらに付け加えると、「介護タクシー業界の中でも、介護保険適用業者の数は非常に少ないのが現状です」(日本福祉タクシー協会)
続いては、介護保険が適用されない(介護保険非適用業者)場合の介護タクシーの料金について。こちらは、「一般のタクシー会社やNPO法人、個人事業主が営むケースが大半で、『メーター料金(国交省の認可運賃)+500円~1000円の介助料』を徴収するのが商慣習となっている」(日本福祉タクシー協会)とのこと。
東京都内の介護タクシー会社「いるか雲」の場合、運賃は『予約料(400円)+初乗り運賃(750円、2kmまで)+時間距離加算分(2km以降、272mにつき90円)+介助料(1000円)』。車いすに乗る要介護者が、自宅から5km先の病院まで同社の介護タクシーを利用した場合、「支払い総額は3900円ほどになります」(いるか雲・郡司知幸代表)。
介護保険適用業者に比べると負担増となりますが、利用目的は通院や公的機関への送迎に限定されませんので、使い勝手はこちらの方が良さそうです。
ただ、同じ利用条件(自宅から5km先の病院までの利用)で複数の業者を取材したところ、総額で5000円前後掛かる業者も複数見受けられました。東京都内のある訪問介護事業者によれば、「病院から2キロ先の自宅まで総額5万円を徴収された事例もある」とのこと。それは、運賃と介助料以外の部分……例えば迎車や車いす・ストレッチャー使用、階段昇降を伴う介助などの料金設定が、業者によって異なるためです。
次回は、業者選びで損をしないためのポイントを詳しく解説します。