■書名:おひとりさまの終の住みか
■著者:中澤まゆみ
■発行:築地書館
■出版年:2015年2月
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自分らしい「終の住みか」を探すために

「住まい」の選択肢をしぼるためのチャート。『おひとりさまの終の住みか』より
人物インタビューや人権、移民などのルポなどを執筆していた中澤まゆみさんが、高齢者や介護の問題をテーマにし始めたのは、認知症の友人の介護のキーパーソンと後見人をしたことがきっかけになる。在宅生活から入院、退院、そしてグループホームへの入居……13年間、その友人の生活が変わるごとに高齢者ホームや介護施設の見学をしてきた。
次第に福祉・介護の分野に興味を抱き、取材を含めて30~40ぐらいのホームに足を運ぶことに。そんな中で見えてきた、『自分らしく安らかに最期まで暮らせる高齢期の「住まい」とは』――。
中澤さんは、これまでも「おひとりさま」をテーマに著書を出版してきた。おひとりさまの法律、終活、在宅生活……。ケアをしてくれる家族がいないからこそ、困ったとき、心身が弱ったときにどう対処するか、あらかじめ知っておくべきことがある。
特に、体が弱ってきてから、自宅のリフォームを考えたり、自分の状態に合った「住まい」を自ら探して転居するのは難しい。だからこそ元気なうちに、最期まで暮らせる家はどんな家なのか、知っておきたいと。
中澤さん自身は、年齢を重ねても自分の家で暮らしたい、という思いを持っている。しかし、だれもが最期まで自宅で過ごせるとは限らない。
そこで、「自分らしく」をキーワードに、自宅での暮らし方のほかに、ホーム、高齢者向け住宅、そして住まう人が運営していくようなコミュニティーハウスや医療つきの家など、さまざまな「終の住みか」を紹介している。
その内容のきめ細かさは、感動ものだ。高齢者向けの住まいは本当にさまざまな種類があり、その特徴、そしてメリット・デメリットがわかりにくいものだ。
だが、本著では確かな知識と取材をもとに、ていねいにひもといている。住まい探しのポイント、見学のしかた、契約の注意に至るまで、「ここを間違えたら大変なことになるから」と、当事者目線で語りかける。ホーム探しの本などは数々あるが、こんなに親身になって教えてくれる本はなかなかない、とありがたく思う。実際にホーム選びをする人たちのエピソードを交えながらの説明も臨場感がある。
そして、中澤さんが強く意識するのは、この「住みか」が「最期まで自分らしく暮らせる場所なのかどうか」ということ。死はだれにでもやってくる。その死をやすらかなものにしてくれるのもまた、住まいだ。
しかし、どの家なら安らかなのかは、人によって違う。自分らしさを自分ではっきりと把握することが、住まい選びの基本なのだということも教えてくれる。元気なうちにぜひじっくり読み、「自分にとってのいい家」を把握しておきたい。
○●○ 著者ミニインタビュー ○●○
高齢者ホームを「住まい」として見る
私がケアし、後見人となっている友人は、親戚にも縁が薄い「おひとりさま」です。もの忘れが多くなってからは、ひとりではうまく対処できないことが増えてきました。そんな中で介護のキーパーソンをするようになり、後見人にもなったことで、「終の住みか」について関心をもつようになりました。
当初は友人も「自宅にいたい」と言っていたので、地域で「最期まで在宅」ができる方法や情報を探しました。
しかし、入退院を繰り返したため、自宅生活が無理になることも視野に入れ、彼女と私が住んでいる世田谷区内の認知症高齢者グループホームは取材も兼ねてすべて見学しましたし、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームも、目をひかれるところはほとんど見ました。
高齢者住宅を「住まい」という視点で見ると、「暮らし方」の選択肢が広がります。選択肢はたくさんあったほうがいい、と思ったので徹底的に調べてみました。有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、さらに施設も、いろいろなものがあります。自分らしい「住まい」として暮らせるところをよく選んでいただけるといいですね。
また、高齢者ホームやグループホームは、住む人やその家族の意見で変えていくいこともできます。家族を運営委員にするような高齢者ホームなら、ぜひ出席して意見をぶつけてください。自分や家族がどう生きたいか、どう死にたいか、主体的に考えてほしいと思います。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
著者プロフィール
中澤 まゆみ(なかざわ・まゆみ)さん
ノンフィクションライター。1949年長野県生まれ。雑誌編集者を経てライターに。人物インタビュー、ルポルタージュを書く間に、友人女性の介護を引き受け、後見もすることになった。以後医療、介護、福祉、高齢者問題にテーマを移し、『おひとりさまの「法律」』『男おひとりさま術』(ともに法研)、『おひとりさまの終活』(三省堂)など、ひとり暮らしの老後について著作を深める。その後、『おひとりさまでも最期まで在宅』『おひとりさまの終の住みか』を出版。近著は『おひとりさまの介護はじめ55話(親と自分の在宅ケア・終活10か条)』(いずれも築地書館)。在住している世田谷区ではコミュニティカフェなどを開催。全国で講演を行う。現在、友人と母、ふたりの認知症の人を介護中。
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