サザエさんたちと一緒にがんばりませんか?

■書名:磯野家の介護 もし波平がまだらボケになったら
■監修:澤田信子
■発行:株式会社 G.B
■出版年:2012年6月初版発行
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「波平」の気持ちにより添った心温まるアドバイス集
昭和24年から朝日新聞紙上で連載が開始され、25年に渡って続いた四コマ漫画のサザエさん。 いまも高い人気を誇るこの国民的漫画の主役、「磯野家」をキャラクターに借りて、主に認知症の介護についてのアドバイスを、温かな目線で紹介したのが本書。
「まだらボケ」は認知症の初期の状態で、しっかりしている時とボケたかなあという時が入り交じって周囲も判断や対応が難しい時期。本人も“何かおかしい”と気がついていることが多く、そのためにかえっていらだちが生じたり、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなったりするもの。
本書の主人公、磯野家の“家長”波平にも「まだらボケ」の兆候があらわれ始め、サザエさんやマスオさんも対応に大わらわ、という設定から、波平(“マダラーさん”というニックネームが献上されている)が引き起こす、ふだんとは違うさまざまな出来事がまずはコミカルなお話仕立てにして紹介された後、その出来事を理解する手がかりと、周囲がしてあげられることが具体的に解説されていく。
読んでいて心温まるのは、心ならずも“マダラー”になった「波平」の気持ちに寄り添った記述に随所で出会えること。たとえば、“マダラーさん”がよくやってしまう、ちぐはくな服の着方についてのこんな一節。
<服装には微妙な心理も絡みます。お年寄りの中には、「ワシがおしゃれなんかしたら笑われる」「アホになったのに服装にばっかりお金を使っていると思われる」などといって、まるで自分がきちんとした身なりをすることが悪いことのように罪悪感を持っている人もいます。特に「贅沢は敵だ」と戦中戦後をがんばってきた人たちにはその傾向が見られます。しかし人は、身なりがきれいになると不思議と気持ちも晴れやかになるものです。「父さんはおしゃれしてた方がずっとかっこいいよ」などのひと言で、マダラーさんの気分がずっと明るくなります•••>
戦後日本の復興期から高度経済成長期にかけての日本を支えてきた先輩世代への敬意抜きでは、ほんとうの意味での介護の気持ちは生まれないのかも知れない—–そんなことも考えさせられる「磯野家の介護」である。
サザエさんたちと一緒にがんばろうか—-そう感じてくれる方が増えますように。
<佐藤>
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著者プロフィール
澤田信子(さわだ のぶこ)さん。1949年、宮城県生まれ。看護士、社会福祉士。神奈川県立保健福祉大学名誉教授。看護や医療福祉の分野で幅広く活動している。