「人間らしく」暮らすための新しい介護の方法

■書名:逆デイサービスのはじめ方
■著者:池田昌弘 小野寺道子
■出版社:地域生活サポート研究所
■出版年:2005年8月初版発行
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施設から民家へ。通ううちに生き生きとした気持ちが戻ってくる
「逆デイサービス」とは、自宅から施設に通う通常のデイサービスとは逆に、福祉施設で暮らす方が地域の民家などに通う介護の方法のこと。施設の中では味わえない、自宅でくつろぐような時間を過ごすことで生き生きとした気持ちを取り戻してほしいという願いから始まったこのサービスは、法的な制度ではないが、新しい介護の方法のひとつとして、全国の福祉施設で試みが始まっている。
本書は、仙台市にある福祉施設「せんだんの杜」で逆デイサービスに取り組んできた編者がその経験から得た、逆デイサービスの意義から実践の方法までを簡潔に紹介したもので、この方法に興味のある方はもちろんのこと、はじめて見聞する方へも、このサービスの可能性を感じさせてくれる心のこもった内容になっている。
施設から民家へ通うようになった方々にどのような変化が起きたか—本書に登場するさまざまな事例を知ると、人間は環境によって「人間らしさ」を失ったり取り戻したりするのだなあということに改めて気づかされる。本書の第一章「逆デイサービスを始める前に」では、施設の現状を知りましょうという主旨でいくつかのチェックポイントが挙げられているが、以下に紹介するいくつかの問いかけを読むだけでも、施設という環境が陥りやすい“常識”(施設という特殊な環境の中での常識)を自覚することができる。
日常の服装が制服って、変じゃありませんか?
暮らしをともにする人と食事を作る人が違うのって、普通ですか?
暮らしなかで、館内放送が流れることは、普通ですか?
第二章では「せんだんの杜の実践」、第三章では「逆デイサービスの広がり」と、実践されているこのサービスの概要が紹介されている。福祉施設に勤務されている職員の方々が自ら問題意識を持ち、施設のあり方を根本から問い直していこうとする姿勢から生まれたこうした事例は、これから介護に取り組んでみようと考えている方々への心強い応援にもなることだろう。
<佐藤>
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著者プロフィール
池田昌弘(いけだ まさひろ)さんは、東北福祉大学大学院修士課程修了後、福祉の世界でさまざまな活動を経験、東北福祉大学や宮城教育大学などでも教鞭をとる。現在はNPOの全国コミュニティライフサポートセンター理事長、地域生活サポート研究所長などを務めている。小野寺道子(おのでら みちこ)さんは社会福祉法人東北福祉会「せんだんの杜」に勤務。20年以上、介護の現場での活動を続けている。