要介護5になってなお、嫁であるRさんの悩みを聞き、慰めてくれることもあるという義母。その介護を全うしようと決めたRさんは、今後の介護に思いをはせます。嫁ぎ先、実家、そして自分がもし介護される立場なら……。一生懸命に介護に取り組んできたからこそ、今後の人生にも、前向きに取り組めそうです。
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義母と家族の優しさを噛みしめるうちに、自分の気持ちにも変化が…
義母の介護を始めて9年半が過ぎました。要介護5になった義母は、93歳。起き上がることも人の手を借りないと難しく、介護ベッドに寝ています。が、しっかりしていて、にこやかで、やさしさは嫁いだときのままです。
義母にかわいがってもらった息子は27歳、娘は25歳になりました。昔のことを振り返りながら、いかにおばあちゃんが優しかったかを、思い出してはほのぼのとしています。子どもたちも、おばあちゃんのためなら、仕事が忙しくても駆けつけて何かしようという気持ちになっています。
しみじみ思うのですが、介護の在り方って、「人生の通信簿」みたいなものですね。義母の介護は誰も嫌がらない。それは、義母が子どもたちを優しい気持ちで育て、その背中を見てきた子どもたちが、母親のために何かしたいと自然に思えるようになっているのです。孫たちもしかり、ですね。義母の家族に対する接し方が、介護に表れているのです。
また、義母が「早くお父さんのもとに」と思っても、「もっとみんなと一緒に生きなさい」と、義父が言っているのでは? と思ってしまいます。義母は、義父に守られて生きているのかな、意味があって長生きなのかな、と感じています。
つまり、どう介護されるかは、自分の生き方と通じているということですよね。
実家の介護も見直して、いいきっかけをつかみたい
介護者の会などに出ていても、そのような話が出てきます。「親が子どものことを一生懸命にやらなかったのだから、自分がいい介護をされなくてもしかたがない」。そんな風に考えることもできるでしょう。しかし、最近は、自分のことを振り返り、「それでいいのか…?」と問い直すことが多くなりました。
実父は最近、要介護認定を受けたそうです。直接の連絡はとっていないのですが、心配になって、向こうのケアマネジャーさんに問い合わせて、わかりました。ケアマネさんは「大丈夫ですよ、嫁ぎ先の介護に専念してください。こちらは私がしっかりみていますから。お二人ともお元気ですからね」とのこと。
しかし、よく考えてみたら、やはりこのままではいけない。
実家の兄弟と親との関係は、私の嫁ぎ先の関係と似ています。兄弟こそ1人少ないですが、兄弟がいて、連れ合いがいる。となれば、長女の私が、嫁ぎ先の長姉のように、もう少し親の介護の全体を見て、弟や妹、連れ合いたちのお手本にならなければいけないのではないだろうか? そこまで真似できなくても、せめて母と向き合える自分を作らなくてはいけない。そうでなければ自分の人生を振り返ったときに後悔するだろうし、自分の通信簿としても、納得がいかない気がします。
思えば、ここ数年、実母にしてきたことは、中高生時代に気持ちを親にぶつけられなかったことの反動で、大人になってからの反抗期のようなものだったのかもしれません。でも、いつまでも反抗期でいてはいけない。
今年は、実母と向き合えるための成長をしたいと感じています。その力が湧いてくるかどうか不安で、義母に「パワーをくださいね」と言ってみました。そうしたら、「みんな仲良く、が一番だからね」と。義母に後押しをしてもらいながら、実の母親にもまっすぐに向き合うことができたら、と思います。
*写真はイメージです。
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プロフィール
R・Oさん(女性 51歳)主婦
大阪府在住。二世帯同居をしていた義父を見送った後、義母は自立して生活していたが、9年後に左大腿骨骨折、4年後には右大腿骨骨折して要介護4に。さらに腰や上腕も骨折して現在要介護5。夫婦のほか、3人の義理の姉が介護を担い、4人で協力し合いながら介護を続けている。周囲からは「理想の在宅介護」と言われる。実家の父母も弱って来ていて、今後は両立が課題に。
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