義父亡き後、ひとりで気丈に暮らしていた義母が、ついに84歳で大腿骨骨折。こうしたケガの場合は、患ったその日から急に介護が始まります。前知識もなかったR・Oさんは戸惑いますが、義姉たちの行動力と機転のすばらしさを得て、介護の体制を整えていきます。今回はそのいきさつや内容をお伝えします。
*この体験談の1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
デイサービスもショートステイもなじめず……
84歳で左大腿骨骨折をした義母は、すぐに手術をし、人工骨頭(人工関節のひとつ)を入れました。高齢者にとっては負担の大きい手術ですが、無事に終わり、リハビリも終えて、歩けるようになって退院してきました。
けれど、前と同じというわけにはいきません。足元が前よりおぼつかなくなっていますし、家事をやるにも負担が大きくなってきました。要介護認定を受け、要介護1に。ケアマネジャーさんは、今後のことを考え、家族以外の介護に母が慣れることを目標に、デイサービスの利用ができるようにと考えてくださいました。
そこで、できるだけ義母に合いそうなところに週1回、通うことにしました。
ところが、義母はデイサービスが苦手。とても穏やかで近しい人には親身になるのですが、元来、人見知りで、新しい人と知り合うのが苦痛という人です。毎日、入れ代わり立ち代わり違う人たちが通うデイサービスは、義母にとってそれだけでも大きな負担になったようです。それでも、せっかくケアマネジャーさんが考えてくれたのだからと、最初のデイサービス、そして次のデイサービスと、がんばって通ってくれました。が、いずれも数回でギブアップ。これ以上、無理に通うのはかわいそうだからと、家族全員が、デイサービスの利用をあきらめました。ショートステイも何度か試みましたが、これもダメでした。
そうなると、私の負担が大きくなる、と考えた義姉たちは、相談して、週に1回ずつ、通ってくることになりました。それも、昼前から夕食後までの長い時間です。短時間では、私の負担が減らないと考えてくれたのでしょう。3人が週1回ずつ来てくれれば、私は3日間休めます。本当に助かる、と思いました。
これに加えて、ケアマネジャーさんも、デイサービスの代わりとして、訪問介護をすすめてくださいました。義母はいやだろうな、と思いましたが、デイサービスに通わない分、私や義姉たちをわずらわせることがないようにと、訪問介護のサービスを使ってくれるようになりました。
長時間、姉たちが世話をし、私は週に4日を担当
その後も、腎盂炎を患い、88歳のときに右の大腿骨も骨折。左大腿骨もヘルニアになり、入院しました。
同居をしていれば、何かと義母が気になります。夫は会社員で、平日の日中はまったく介護に携わることができませんし、仕事柄、帰宅時間が遅くなってしまいます。「介護が必要になったら、僕もやるから」と言っていても、実質的には姉たちや私任せになってしまっていて、実際の介護の大変さや義姉たちへの感謝が感じられず、何度もその件で言い争いました。
何度かの話し合いの末に、休日は、介護を夫婦で担当することにしました。しかし、土日とも自分たち夫婦がみるとなると、休まるときはありませんでした。
このころから、私は精神的につらくなってきました。体調がすぐれず、満足なことができない自分がまた、情けなくなって……。そんな中、私の休養と義母の負担を考えて、義姉のうちのひとりが、「1カ月、母を預かるわ」と言ってくれました。うれしかったですね。結果的に、義姉が体調を崩して、実現とはなりませんでしたが。また、別の義姉は、「もうずいぶんがんばってくれたのだもの。あなたたち夫婦が無理なら、私がみるわ」と言ってくれたのです。これもうれしかったです。改めて義姉たちのそれぞれの気持ちを知ることができ、これからの介護体制の見直しの機会になりました。
まず、朝の9時30分から11時、つまり義姉たちが来るまでの1時間半は、日曜日以外、全部訪問ヘルパーさんにお願いすることにしてくれました。義姉たちは、週3日、夜21時までいてくれますが、私が義母の介護をする3日間は、18時から19時までヘルパーさんを頼み、食事介助などの大変な部分から解放してくれました。
そして今は、土曜日の日中もヘルパーさんにお願いし、私が担当するのは週に3回程度です。体も辛くないですし、気持ち的にもラクをさせてもらっています。土曜日は、唯一、夫婦でくつろげる日。昼食を外に食べに行くなど、気分転換をし、夫婦の関係性も保つようにしています。
このほか、週2回の訪問リハビリテーション、2週間ごとの訪問入浴、月2回の往診。さまざまな方々に助けていただいています。介護保険を超える部分の自費での介護サービスの支払いは、私たちが心配しないですむようにしてくれる義母や義姉の配慮もありがたく思います。
また、ケアマネジャーさんとの介護についての話し合いは、基本的に私に任せてくれますが、「ここぞ」というとき、義姉たちにも知ってもらいたいことを話すときは、一番上の姉が同席してくれます。話を聞いていてもらえれば、安心できる。そして、同じ気持ちで介護ができ、連携がうまくいく。ルールが積み重ねられ、今、軌道にのってスムーズに介護ができるようになりました。一時は、デイサービスやショートステイも考えましたが、無理をしないようにしながら、できるところまで在宅介護を全うしたいと思っています。
次回は、Rさんのご実家の介護についてお伝えします。
*写真はイメージです。
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プロフィール
R・Oさん(女性 51歳)主婦
大阪府在住。二世帯同居をしていた義父を見送った後、義母は自立して生活していたが、9年後に左大腿骨骨折、4年後には右大腿骨骨折して要介護4に。さらに腰や上腕も骨折して現在要介護5。夫婦のほか、3人の義理の姉が介護を担い、4人で協力し合いながら介護を続けている。周囲からは「理想の在宅介護」と言われる。実家の父母も弱って来ていて、今後は両立が課題に。
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