■書名:あの介護施設はなぜ、地域一番人気になったのか!!
■著者:糠谷和弘/齋藤直路 編著
■発行:PHP研究所
■出版年:2015年10月
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ホーム選びのポイントが満載! 17事業所の成功の秘密
キツイ、暗い、給料が安い!? これが、介護の仕事の一般的なイメージだろうか。介護の仕事をしている、と周囲に伝えると、それだけで「大変ねぇ」と言われる介護スタッフも多いと言う。
老人ホームに入居する側としても、介護スタッフがなんだか可哀想になってしまう。そして、みんな嫌々仕事しているんだろうか…?と心配にもなってしまうかもしれない。
けれど、介護の現場は意外に明るいのだ。中には、「高齢者の相手なんてつまらない」と思っている人もいるだろうが、「人生の先輩に教えていただくことばかり!」とウキウキと高齢者とお付き合いするスタッフも多い。
本書は、介護業界のマイナスイメージを払拭したい、との思いで、書かれた本である。ポジティブに介護事業に取り組み、働くスタッフもイキイキとし、経営的にも成果を上げている17事業者をピックアップ。その成功事例を伝えている。
たとえば、「自立支援を徹底し、これまでオムツに頼っていた人たちもトイレに行けるように支援する事業者」「終の棲家ではなく、家に戻ることをひたすら支援し続ける事業者」「毎日温泉入浴OK、ペットも飼えて、自宅のように過ごせる事業者」などなど。どれも非常に個性的だ。そして、そうした事業者は、どこも経営的にも健全なのだそうだ。

前作『あの介護施設にはなぜ人が集まるのか』。空き待ちがあっても入りたい施設を、糠谷さんが自信を持って紹介
ここに登場する事業者の多くは、糠谷さんが代表取締役を務める経営コンサルティング会社が運営に関わり、サポートしてきた事業者だ。内情を知り、じっくり関わってきたからこそ書ける内容になっている。また、コンサルティングを受けて変化した結果が描かれていると言ってもいい。同様に介護事業者を紹介する『あの介護施設にはなぜ人が集まるのか』(PHP研究所)の第2弾という位置づけでもある。
糠谷さんは、「それぞれの事業者が、特化したよさを持つことが、経営的にも成功を招く」という。食事も入浴もリハビリも全部一番を目指す、という施設は、どれも中途半端になる。スタッフも心身ともに疲れ、経営的にも芳しくなく、結局は地域一番人気のホームにはなれないことが多い。それより、スタッフが「どうやったら利用者さんの真の幸せを実現できるか」と知恵を絞り、こだわるポイントを決めた上で創意工夫をこらし、個性を際立たせている事業者のほうが、うまくいく。スタッフの目的意識がはっきりし、ポジティブに取り組む結果が、利用者さんたちを喜ばせ、安心させるからだ。そして、いい循環がいい空気を作るので、訪れる人たちも「このホームはいい」と感じるのだろう。地元の評判もよく、入居者が増えていくという。
実際、紹介されている17事業者のルポを読めば、どこも「こんな介護施設に行ってみたい!」と思える。ひとつとして同じようなサービスをしていないのに、どこに行っても楽しく過ごせそうな気がするのだ。家の近くにこんな老人ホームやデイサービスがあれば、両親や将来の自分も利用したいと考えてしまう。個性がきらめき、スタッフがイキイキと働いているホームが、やはり良いホームなのだと思えてくる。
この本には、老人ホームへの入居を考えるとき、ヒントになりそうなホーム選びのポイントが満載されている。ホームを探すときにも、ぜひ参考にしてほしい。
○●○ 著者ミニインタビュー ○●○
現実をまっすぐにみつめて
改革をしていける事業者がいい老人ホームをつくる
ここに掲載する17の事業者は、私たちが経営コンサルティングをしてきた約400の法人の中でも、特にキラリと光るものを持つ「地域一番」のところです。私たちが関与した部分もありますが、もともと改革の芽を持ち、それを自ら芽吹かせて、開花に結び付ける力をお持ちだった。我々は、その後押しをしたにすぎません。
いい経営をする法人は、過去の栄光に頼ることはありません。介護報酬を下げられ、人材も集まりにくくなった現状を見据え、売り上げも微減している現実をまっすぐに受け止め、なんとかしたいと行動する。そんなポジティブな事業者さんが、結局は花開くのです。時代は変わりつつあります。その変化をすばやくとらえ、プラスに導く力を持っているところが、よいホームといえるのでしょうね。
老人ホーム探しの方法はいろいろありますが、私は、ホームを数多く掲載している専門サイトで検索するのが非常に確実でスピーディだと思います。そうした中から候補をピックアップし絞り込んでいく。そして、その検討課程で、本書のような成功事例を読むのは、さらに効果的です。実際、見学に行くときのポイントも本書から拾えると思います。
介護事業の目的は、極論を言えば「利用者の幸せづくり」。しかし、その利用者の「幸せ」は、100人にいれば100通りに違います。介護施設も同様に、それぞれ違います。それを知ることで、発見もあるかもしれません。今回、本書で紹介した17事業所が、もしご自宅の近くにあれば、ぜひ、一度足を運んでご自身の目でもみて欲しいと思います。
著者プロフィール
糠谷和弘(ぬかや・かずひろ)さん
(株)スターコンサルティンググループ代表取締役 経営コンサルタント。1971年生まれ。大学卒業後、旅行会社を経てコンサルティング会社・船井総合研究所に入社。介護サービスに特化したチームを立ち上げ、11年間経営指導を重ねた後、チームで独立。介護事業所の立ち上げから組織マネジメントシステムまで、幅広いコンサルティング事業を展開している。著書はほかに『ディズニー流! みんなを幸せにする「最高のスタッフ」の育て方』『あの介護施設にはなぜ人が集まるのか』(いずれもPHP研究所刊)
*糠谷和弘さんに「経営の視点から見た良いホーム」について伺ったロングインタビューを、こちらに掲載しています。