家族みんなが楽しめる「特別じゃない介護食」をつくってみよう!

■書名:家族いっしょのユニバーサルレシピ〜かみやすい・飲み込みやすい介護食〜
■著者:山田晴子 赤堀博美
■発行所:女子栄養大学出版部
■発行日:2005年2月 初版 2013年5月 初版第5刷
>>『家族いっしょのユニバーサルレシピ』の購入はこちら
ひと工夫で「ふつう食」が「だれでも食べやすい料理」に!
「家族いっしょ」と「ユニバーサルレシピ」――「介護食のレシピ本」の中ではちょっと異色のタイトルに込めた思いを、著者の山田さんはこう綴っている。
<高齢であったり、なにかの障害があって、(中略) 家族とまったく違う食事が用意されるとしたら、そのかたは疎外感を抱くのではないでしょうか。元気いっぱいでなんでも食べられる人にくらべれば不自由があるかたも、調理のさいに少しくふうすれば家族と同じような料理が楽しめます。そのために知恵を絞りました>(「はじめに」より)
ユニバーサルという言い方には「万人向け」という意味を込めて。
<本書に「ユニバーサルレシピ=万人向け」という新しい言葉をつけたいと思ったのは、「介護」という言葉が“してあげる人”と“してもらう人”という特別な関係を表しているように感じたからです。(中略) 症状が進んできた場合には、刻み食や流動食が必要な場合も出てくるでしょう。それまでの長い期間をこのユニバーサルレシピを利用して、食べる楽しみを持ち続けていただければうれしく思います。>(同)
そんな願いを形にした本書の料理は、出来上がり写真を見る限りはいわゆる「ふつう食」とまったく変わらない――のだが、そこに「かみやすさ・飲み込みやすさ」に配慮したひと工夫が隠し味となって生きている。
たとえば、シャケは焼くと身が固くしまって飲み込みがむずかしいので、骨はのぞいて、ホイルでの蒸し焼きにしてみる。トンカツなら、かみにくい衣はソースなどでしっとりさせる、肉は薄切り肉を重ねて厚みを出してかみやすいトンカツをつくってみる、等々。
かみにくいもの、飲み込みにくいものを取り除けば、別の料理になってしまう。でも「かみにくいものはかみやすく、飲み込みにくいものは飲み込みやすいように」手を加えれば、みんなが同じ料理を楽しむことができる。同じ食卓を囲み、同じ料理を楽しむ――家族の気持ちが通じあう場は、こんなささやかな心遣いから生まれるのかもしれない。
料理は、スープから、前菜、主菜、デザートまで食卓ではおなじみのもの。家族いっしょの団欒タイムには欠かせない「なべ料理」をフォローしてあるところも、本書らしいアイデア。介護食のための参考書というより、一般の料理レシピ本と同じように活用できる幅広いラインナップが、忙しい日々にはありがたい。
誤嚥を防ぐためのヒントや介護用の食具などが紹介されているページも参考になる。
<佐藤>
>>『家族いっしょのユニバーサルレシピ』の購入はこちら
著者プロフィール
山田晴子(やまだ・はるこ)さん。栄養士。1986年、日本女子大学大学院修了。日本歯科大学附属病院、相模女子短期大学などで講師をつとめるほか、介護食アドバイザー通信講座でも指導を行っている。著書に『かみやすい飲み込みやすい食事のくふう』(共著)、『訪問現場で活用できるやさしい食事指導』など
赤掘博美(あかほり・ひろみ)さん。管理栄養士。1992年日本女子大学大学院修了。赤堀料理学園校長。日本フードコーディネーター協会副会長。一般向けの料理指導のほか、CMやテレビ番組での料理指導、料理の商品開発に関するコンサルティング、介護食の指導などを行っている。著書に『かむ・のみこむが困難な人の食事』『カラダにおいしい健康みそ汁レシピ』など