介護をしているご家庭や高齢者ご自身にとっては、これまで使っていた介護サービスが使えなくなる、利用料金が上がったなどのことが起きたら一大事。逆に、利便性が良くなったなどのうれしい情報があれば、早く知りたいですね。
2018年度は、介護保険制度改正の年。介護サービス利用者に影響が出る重要な年です。
2015年度には大きな改正があり、苦労された方も多かったかもしれません。2018年度にはどんな改正が行なわれるのか、実際にどんな影響があるのか、気になるところでしょう。
東洋大学准教授の高野龍昭先生監修のもと、2018年介護保険制度改正のポイントを解説していきます。
<監修:高野龍昭(東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授)/ライター:三輪 泉(社会福祉士)>
2018年度介護保険制度改正のポイントとは
2018年度の介護保険制度改正は、3年に一度の介護保険制度の改正と、2年に一度の医療保険の診療報酬改定が同時に行われる年。事前の予想では大きな改定になると恐れられていました。
結果的には、それほど大きな変化は見られない内容におちつきましたが、安心してばかりはいられません。
今年の改正内容はおとなしめでも、実は「将来に向けた政府の考え方の変化」や「大きな変革のうねり」が見え隠れするものでもあります。
今後を考える上では、今回の改正の陰に隠れた「厚生労働省の真意」を読み取ることが大切なのかもしれません。
今回の厚生労働省による介護保険法等の改正のポイントは、大きくわけて2つあります。
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
2.介護保険制度の持続可能性の確保
「1.地域包括ケアシステムの深化・推進」には3つの、「2.介護保険制度の持続可能性の確保」には2つの具体的な内容が厚生労働省から示されています。それぞれにはどんな意味があるのでしょうか。
介護を受ける要介護者やその家族に関係が深そうな内容を中心に、順番に解説していきます。
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
高齢者の介護・健康の問題は、地域ごとに解決していく
「地域包括ケアシステムの深化・推進」の意図は、高齢者の介護や医療、その他さまざまな問題は、一番身近な地域で解決していこうということです。
国などが総括的に行うサービスでは、地域性が無視され、その地域に暮らす高齢者にとっての本当のニーズがくみ取れない場合があります。また、なかなか遠くまで行けない高齢者や介護家族にとっては、身近な地域に相談できる場所、解決できるサービスがあるほうが現実的。
そういう視点からの改正です。
市町村に財政的インセンティブを与える仕組みを創設
1-1 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進
(介護保険法)
高齢者の自立支援や重度化防止の取り組みを行う市町村への予算をアップ
これは、要するに高齢者の心身機能の悪化を防ぐような努力を保険者(市町村)に求めるということです。
介護事業者にとってはたくさんのサービスを提供できるほうが、介護給付費による報酬も多くなり、運営資金も潤います。
「よりサービスを多く提供できる」のは、使える介護サービスが多い要介護度の高い利用者です。
このことから、もし熱心なケアをすることで要介護者のADL(日常生活動作)が改善してしまい、要介護度の高い人が減ってしまったら、提供できるサービスも減り事業者は損をしてしまいます。
つまり事業者にとっては、高齢者は心身ともに元気にならないほうがいい、要介護度が高いほどいい、ということになってしまうのです。
介護保険はそもそも、本人の自立をサポートするためのもの。要介護度を軽くしたり、身体機能を改善するために努力しなければなりません。
それを実現している市町村と、実現していない市町村とは、財政に差をつける。維持・改善に向けてがんばっている市町村には、財政的インセンティブを付与しようというものです。そのために、自立支援、重度化防止に向けての計画を策定することも求めています。
実際、国は自立支援や重度化防止に成果を上げた市町村に与える財政的インセンティブのために、2000億円を確保しています。
大きな金額に見えますが、全国に市町村が1700以上あることを考えると、すべての市町村が努力した場合には、1市町村あたりの財政的インセンティブは1億円余りです。
それでは大きな事業はできず、自立支援や重度化防止のための努力が無駄に思えるかもしれません。しかし、そうではないのです。
A市とB市では、介護サービスの充実度が変わる?
これまで国は、市町村のやりかたによって、財政面で差をつけることはありませんでした。
それが、はじめて「財政的インセンティブ」という名称で、「努力して成果を上げた市町村には、当初の予算以上にお金を出す」と決めたのです。将来的には、「自立支援や重度化防止に努力しなかった市町村には罰金を科す」ことも考えられています。
これからは、市町村の努力次第で、介護のために使える市町村ごとのお金が変わってきます。
つまり、介護に熱心な市町村に暮らしている高齢者は、より充実したサービスを受けられるというメリットがあります。
その一方で、がんばりが足りない市町村に暮らしている高齢者にとっては、乏しいサービスしか受けられないというデメリットになってしまうことも考えられるのです。
自分や家族が住んでいる市町村の努力に大いに期待したいですし、市長などを選ぶときには、自立支援や重度化防止にどれぐらい力を発揮できるかも、重要な判断材料のひとつになりそうです。
介護療養病床(介護療養型医療施設)の廃止と介護医療院の新設
1-2 医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)
2024年、いよいよ介護療養病床が廃止に
「医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)」で注目したいのは、「介護療養病床の廃止」です。
療養病床は、病院または診療所の病床のうち、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるものです。
療養病床には、医療療養病床と介護療養病床があります。
このうちの介護保険施設である介護療養病床は、2006年の介護保険制度改正のときに、2012年までに廃止すると決まっていました。その後、2017年度末までに廃止するとの方針も決定していましたが、現実には介護療養病床に代わる施設がなく、結局「必要」ということになり、現在に至っています。
今回の改正では、この介護療養病床を2024年3月までに順次廃止するように決定しました。
何度も先送りになってきましたが、今回の改正では道筋が見えてきそうです。
「介護医療院」を新設し、重度要介護者・ターミナルを重視
これまで何度も廃止の決定をしてきましたが、代わりとなる施設がなかったことが問題でした。しかし今回、厚生労働省は新たに「介護医療院」を設置することとしました。
介護医療院は、要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設です。看取り・ターミナルの機能も兼ね備えます。
大きな枠組みとしては、これまでの介護療養病床と大きな違いがないように見えます。
しかし、これまでより1床あたりの面積の基準が広くなっているので、施設によっては、1部屋あたりの人数を少なく設定するなどの対応が必要です。また、重度の人が一定数以上入居していなければ介護報酬のうえでの加算が取れず運営が厳しくなります。
一定以上の人数の看護・介護職員が配置されていることが条件となることなども決められています。
これまで、療養病床といえども、軽度の人を受け入れることで、療養介護の点でラクをしていた施設もありましたが、その点でも厳しくなり、元気な高齢者の受け入れが制限されるでしょう。
比較的軽度な要介護者は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどへの転居を促され、その場合にはそこに訪問看護や訪問医療のサービスをひもづけることが求められます。
つまり、介護報酬が高いこの介護医療院には、胃ろうや呼吸器の必要な人、ガン末期の人など、本当に医療が必要な重度の要介護者を受け入れることを示唆しているのです。
そういう意味で、今回のこの改正は非常に理にかなった内容になっているといえます。
また、日本は急性期病院や高度急性期病院の比率が高く、回復期の病院(リハビリテーション病院など)の数が足りません。
特に最近では、急性期病院で入院できる日数が減少している中、そのまま自宅に戻ることが困難な人が増えています。
そんな人を受け入れ、自宅に戻れる健康状態を目指す回復期の病院、また、自宅に戻ってからの在宅医療・看護の必要性が非常に高まっています。
こうしたニーズに応えるために、今後は急性期、回復期などの病棟数のバランスを調整し、在宅医療との連携を密にするなど、医療と介護はますます密接に関わる必要性があります。
介護と医療の連携をよりスムーズにするための基盤づくりにも、国は力を入れていく方針です。
高齢者と障害者が同じ事業所で過ごせる
1-3 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等
(社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)
利用者同士の交流や助け合いに期待
これまで、高齢者が使える介護サービスと障害者が使えるサービスは分かれていて、通所や入居の施設なども別でした。
また、障害のある方が65歳以上になって介護保険の認定を受けると、原則として障害者向けの事業所を使えなくなります。その後は、障害者への知識がほとんどない高齢者向けの事業所に通わなければならない、という事態が起こっていました。
こうした弊害をなくし、高齢者と障害者が共生することで、これまでなかった交流も含めてよい方向に向けてサービスを一体化しようというのが、改正の主旨です。
高齢者と障害者の事業所が一体化すれば、たとえば、認知症の人が障害のある人のケアの一端を担うこともでき、認知症を持つ人の生きがいにつながります。
障害がありながら元気に暮らしている人なら、高齢者との会話や散歩などを一緒に行い、お互いに活性化できるというのも、よい面です。
事業所を一体化すれば、通える事業所も増えるわけで、家から近い事業所を選択できるというメリットもあります
多世代交流、利用者の活性化、利便性など、さまざまなメリットがありそうです。
対象は、現時点では訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの在宅サービスとなります。今後、この拡大が予想されます。
介護業界の人手不足改善や安定経営にもメリット
しかし、こうした表向きの理由のほかにも切実な理由があります。
介護・障害者福祉の分野においては、人手不足がますます深刻です。それぞれに分けて募集をしていては、必要な人員配置ができないこともあります。
たとえ施設の受け入れに余裕があっても、職員が足りないために入居者を受け入れられない場合もあるのです。
事業所を一体化すれば、職員の融通が利き、高齢者・障害者とも受け入れ体制が整います。
また、ひとつの事業では成り立たなくなりがちな事業所を、多角経営することで、経営保持がしやすくなるというメリットも考えられます。
事業所がつぶれてしまったら、利用者は大打撃です。こうした人材確保・経営的な視点でも、介護と障害者福祉の共生は必要ということなのです。
今回の改革とはまた別ですが、政府は今後、看護、介護、保育資格を乗り入れて、人員確保を目指す構想もあります。
これまで、「縦割り行政」が問題視されていましたが、いつまでも縦割りにしてはいられないという切羽詰まった状態になっているということです。
今後は「市町村の努力」や「職員の質の確保」に注目
しかし、こうした工夫を、国は「市町村に丸投げ」しているに等しく、市町村は今後さまざまな自助努力を必要とされるでしょう。
実際、すでに高齢者、障害者のほかに子育て世代や生活困窮者までを含めたサービスの展開を始めている市町村もあり、ますます市町村の役割が大きくなってきています。
同時に、職員の質の確保の問題も大きくのしかかります。
これまでは、高齢者だけを対象にしてきた介護サービス事業所も、障害者の知識や経験が必要とされます。高齢者に対する介護だけでも専門性が必要とされるのに、身体障害、知的障害者へのケアの専門性も望まれるわけです。
障害者の事業所職員に対しても同様に、職員の研修体制などが必要になります。
今後は現在通っているデイサービスなどに変化が出てくるかもしれません。介護事業所が今後どのような努力をしていくのかは注目していきたいところです。
2.介護保険制度の持続可能性の確保
この「介護保険制度の持続可能性の確保」の背景には、介護保険制度の財政難があります。
高齢者が急増し、介護保険制度を利用する人も増え続けている一方、少子化で労働力や介護保険料を払える人が減っているのが実情です。今後はますます、その現象が進んでいくでしょう。
そうあっても、介護保険制度を持続させるためには、何かしらの手を打たなければなりません。それには国民の理解が必要であり、さらには「国民も痛みを分けてください」というのがこの改正の意図だと考えるべきでしょう。
所得の高い高齢者は、自己負担額が増加
2-1 2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする(介護保険法)
年金収入等が年額340万円以上の人などは3割負担に
「介護保険の財源」と「サービスを利用する人数」とのアンバランスは、ますます激しくなってきています。
高齢者福祉政策が始まった1960年代では、65歳以上の人口が総人口に占める割合は5.7%でした。ところが、介護保険制度が始まった2000年には17.3%に。2016年には27.3%にものぼっています。
今後、ますます高齢化率が高まる現状において、介護保険料の財源を増やすことが大事になり、サービス利用者の負担率を大きくすることも必要になります。
そこで、2015年8月から年金収入額により2割負担を設定していますが、これだけでは将来的な不安材料が払拭できないことから、今回の改定で3割負担を設けています。
【利用者負担割合】
|
負担割合 |
年金収入等 340万円以上(※) |
2割⇒3割 |
年金収入等 280万円以上 |
2割 |
年金収入等 280万円未満 |
1割 |
※ 具体的な基準は政令事項で4月頃に決定
年金収入等340万円以上と想定されるのは、単身世帯の場合、「合計所得金額220万円以上」かつ「年金収入とその他の合計所得金額340万円以上」。年金収入のみの場合は344万円以上となります。
年金収入等280万円以上の想定は、同じく単身世帯の場合、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入とその他合計所得金額280万円以上」。年金収入のみの場合は280万円以上です。
現時点では、このように説明されています。
今回の改正では、実は2割負担の条件を満たす人を増やすことが検討されていました。つまり、2割負担のボーダーラインである年金収入等280万円のラインを引き下げるなどの方向性での検討です。
しかし、それでは生活が成り立たなくなったり、必要な介護サービスが受けられずに我慢を強いられる利用者が出てしまうことが懸念されます。そうしたことから、2割負担の収入の引き下げではなく、収入の高い人により高い負担をしてもらう、という内容になりました。
介護保険制度を持続可能にする手段としての負担増
収入が高い人にとっては、介護保険サービスの3割負担は痛手です。しかし統計で見れば、ここでいう「年金収入等340万円以上」でこれまでより負担増となる人は約12万人で、受給者全体の3%というわずかな割合。
受給者全体が496万人、2割負担が45万人とう数字を見ても、この3割負担を設定することで、いったいどれぐらい財政に余裕ができるのかは、はなはだ疑問です。
とはいえ、「現役世代並みの所得のある人は、所得の少ない人の分までカバーするべき」という流れが確実となりました。また、この「340万円」という設定はひとつのはじまりであり、今後はもっと引き下げられることも考えられます。
利用者負担を重くすることで、介護保険制度を持続可能にするのだ、という政府の意向を受け入れながら、国民は介護保険サービスを使っていくことになります。
収入によって介護保険料の納付額が変わる
2-2 介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)
40歳以上であれば介護保険料を支払っていますが、実際には給与などから天引きされていることが多いため、あまり実感のない人もいるかもしれません。
40歳から64歳のまだ介護保険サービスを使わない世代(第2号保険者)の介護保険料は、介護納付金として医療保険から天引きされるかたちをとっています。
この世代は、それぞれの医療保険者(国民健康保険、健保組合、共済組合、協会けんぽなど)から、医療保険とともに徴収されているのです。
給料から引かれて手取り金額をもらっていると、納付している感覚はなかなか持てないかもしれませんが、医療保険者であれば必ず納付をしています。
介護保険料の納付金額は一律で決められています。
しかし、「健保組合」に加入している大企業に勤務する人や、「共済組合」に勤務する公務員などは比較的収入が高いので、収入における割合でみると負担が少ないことになります。
一方、一般的には「国民健康保険」に加入する人は、大企業に勤める人より収入が少ない傾向にあり、介護保険料の負担を重く感じることになりがちです。
そこで、収入額に比例して介護保険料を決めることになりました。
負担増になる人は約1300万人となりますが、逆に負担が軽くなる人は、負担増より多い約1700万人です。
負担減となる人が多くなれば、財源の確保とは逆行するように思えますが、ただでさえこの第2号保険者世代は、教育費や住宅費など他の負担も大きい世代です。
持続可能という意味では、負担減の人が多くなることは有効といえるでしょう。
すでにこの制度は2017年度8月から導入されています。
ですが、急に負担が大きくなると混乱が起きるため、以下の表のように、まずは半分の額から始め、2020年度の全面導入を視野に入れ、段階的に増やしていくことが決まっています。
【総報酬割導入のスケジュール】
|
総報酬割分 |
2017年度~7月 |
なし |
2017年度8月~ |
1/2 |
2018年度 |
1/2 |
2019年度 |
3/4 |
2020年度 |
全面 |
利用者にも影響する「介護報酬改定」のポイント
法改正とは別に、介護報酬改定もこの時期に行われます。
介護報酬は各事業所にとっての収入源になることから、介護報酬の改定は介護事業所の存続にも関わる大きな問題です。
「財源がない」「介護サービスを使う高齢者が増加し続けている」という現状において、介護報酬を下げれば下げるほど、介護保険制度自体は持続可能になります。
しかし、そうなれば介護事業所の運営が立ち行かなくなり、中には閉所するしかなくなるところも出てきてしまうでしょう。
職員の給料も抑えざるを得なくなり、ただでさえ人手が足りない介護業界がますます人手不足になります。そして、利用者は十分なサービスが受けられないという事態にも陥ります。
そんな引き下げが懸念されていた介護報酬ですが、2018年度の改定において0.54%のプラスになりました。
たくさんの改定項目がありますが、利用者に関係するポイントをかいつまんでお伝えします。
◇資格が不要なった「訪問介護の生活援助」
訪問介護で受けられるサービスは、直接介護を提供する「身体介護」と、掃除や調理などの生活におけるサービスを提供する「生活援助」にわけることができます。
現在、ヘルパーがサービスを提供するためには介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などの資格が必要です。ですが今回の改正で、「生活援助」の部分であれば資格がなくても提供が可能になります。
しかし、たとえ「生活援助」のみとはいえ、介護のことを何もわからないスタッフにサービス提供を受けることは、利用者にとって不安です。
そこで、50時間程度の研修が必須となります。介護職員初任者研修の研修時間は130時間。これに比べるとコンパクトな研修なこともあり、研修内容に注目されます(詳細は2018年4月までに決定)。
◇福祉用具貸与(レンタル)価格の上限設定
介護業界では、細かく介護報酬が決められています。その中で唯一自由度が認められていたのが福祉用具でした。しかし、今回の改定で報酬上限額が設定されます。
利用者にとっては料金が明確になり、利用しやすくなりそうです。
◇通所介護(デイサービス)のサービス提供時間の見直し
デイサービスには、7~9時間、5~7時間、3~5時間という3つの区分があります。
問題となっていたのは、3時間10分の提供であっても、4時間50分であっても、どちらも「3~5時間」とできたことです。これを1時間ごとにすることが決定し、提供時間の実感値に合うようになります。
◇介護職員の処遇改善をベテランに厚く
介護業界は人手不足なこともあり、さまざまな面で介護職員の処遇が改善されてきました。
詳細は未定ですが、2019年10月の消費増税に合わせて10年以上現場で勤務している介護福祉士資格所有者には8万円の処遇改善をする予定もあります。
このような改善で、少しでも介護職員が満足に働いてくれるのであれば、それは利用者がより良いサービスを受けられること、すなわち利用者の満足にもつながります。
今回の介護報酬改訂では、介護事業所にとっては厳しい部分もありますが、利用者を適切にケアすればきちんと評価されるようになることが明確になってきました。
こうした改定により、介護業界がより健全になり、よりよいケアが行われることを望みます。

監修:高野龍昭(たかの・たつあき)先生
東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科准教授。専門分野は、社会福祉学、介護福祉学。通算19年の相談援助の現場実践を重ねる。著書に「これならわかる〈スッキリ図解〉介護保険第2版2015年版」(翔泳社)がある。2018年版「これならわかる〈すっきり図解〉介護保険第3版(仮)」(翔泳社)も出版予定。