「親の介護、そろそろ必要になるかも」「自分が高齢になったら、いったい誰が面倒を見てくれるんだろう」。そんな不安に駆られたら、まず気になるのがお金のこと。でも、介護ってどれくらい費用がかかるものなのか、検討もつかない人が少なくないはず。
そこで、介護事情に詳しいファイナンシャルプランナーの山田静江さんに、『介護とお金』にまつわる素朴な疑問をぶつけてみました。
▽相談内容
賃貸マンションに5年住んでいる母親が老齢になり、廊下部分の手すりの設置や、風呂・トイレの改修工事を考えています。
賃貸マンションの住宅改修は介護保険の給付対象になるのでしょうか?
▽山田さんの回答
賃貸住宅での住宅改修は、すべてオーナー(住宅所有者)との交渉になります。
その上でオーナーからの了承が得られれば住宅改修は可能となり、介護保険の給付対象となります。
しかしながら、オーナーから住宅改修の許可をもらっても、退去時には元に戻す必要があったりするなど、さまざまな条件が付加されるケースも珍しくありません。手すりの設置や浴槽の交換など、住宅改修そのものを拒否されるケースもあります。
また、オーナーの意向に関係なく給付対象にならない住宅改修もあるので注意が必要です。
たとえば退去時の現状回復にかかる費用は、給付対象外です。オーナーとの話し合いで「退去時の現状回復」を条件に住宅改修をした場合、そこにかかる費用は自己負担になります。
では、共同トイレや廊下、階段など、賃貸住宅の共用部分の改修はどうでしょうか。
洗面所やトイレが共同となっている場合など、当事者(高齢者)の通常の生活領域と認められる特別な事情があれば、オーナーの承諾を得て住宅改修を行うことは可能であり、支給対象となります。ただし、オーナーが当事者に共用部分の住宅改修を強要する場合も想定されます。
そのため、支給対象になるかどうかは当事者の身体状況、生活領域、希望などに応じて判断されます。

プロフィール
山田静江(やまだ・しずえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP/FP技能士1級)。株式会社 WINKS 代表。日本FP協会埼玉支部幹事。
大学卒業後、都市銀行に入社。その後、会計事務所勤務、独立FP会社勤務を経て2001年にFPとして独立し、現在に至る。「損得ではない安心して暮らすためのプランニング」をモットーに活動している。
現在は介護や高齢者住宅問題のスペシャリストとして講演、執筆活動を展開している。
株式会社 WINKS