有料老人ホームの契約や退去の際の金銭のやり取りに関しては、利用者側が不慣れなこともあり、トラブルが多いようです。国民生活センターに寄せられる苦情の例を見ながら、対処方法を考えてみてください。「老人ホームのお金トラブル事例」特集の今回は、退去を促されたのに、入居一時金が返金されないという苦情です。
<資料:国民生活センター>
一方的に退去を命じられ、返金もされない
【事例】入居制限の記載がなく仕方なく退去したが返還されない
入居制限について契約書での記載もないのに、入居者である母親が夜間に病院に運ばれた際、この状態なら施設では受け入れられないと言われた。一旦施設に戻ったがその後も退去してほしいと言われたので、しかたなく他を探し、入居1年足らずで退去することにしたら、100 万円の「契約金」はまったく返金されないうえに、退去後6カ月分の賃料も請求されている。施設側に退去を求められたのに自己都合とされ、減額交渉しても応じてくれない。
(相談受付年月:2010 年4 月、契約当事者:80 歳代、女性、大阪府)
入居中の入院についてのトラブルは非常に多いと聞きます。入院している間も、ホームの利用権を確保するため、利用者側にはさまざまな費用がかかります。それなのに、いざ退院となると、身体の状態を理由に、ホームに戻ることをしぶられる、拒否されるというケースもあるのです。理不尽ですね。
退去の要件について、入居前に必ず確認を
では、なぜこんなことが起こるのでしょうか?
有料老人ホームの利用者は、基本的には、そのホームを終身利用するための利用権を得ていることになります。だから、本来なら、ずっと入居していられるはずです。
しかし、入院が長引くと、収入として得られるはずの利用者の食事代や介護サービスのための料金が、長期にわたって得られず、ホーム側の経営に影響を与えます。
また、複雑な病気や介護が必要になって退院した場合は、それらに対応できるスタッフを確保できるかどうかの問題もあります。老人ホームは、介護はできますが医療の提供はできません。医療との連携があり、看護師や往診の医師がいる場合でも、専門性の高い病気の場合は十分な検査や治療、看護に対応できないことが多く、これは利用者の健康や命に大きく関わることすらあります。
こうして考えると、ホーム側が、入院が長引き、難しい病気にかかった利用者に「退去してほしい」というのも、やむをえないかもしれませんね。
ただ、入院や退去についての要件は、入居の際に、きちんと説明されていなければなりません。また、どんなことが困難で、どんな状態なら受け入れが可能なのか、あらかじめ伝えておく義務もあります。
このケースで言えば、「入居制限」はないものの、入居後に状態が変わったときの要件についても記載があるべきでしたね。退去後6カ月分の賃料を支払うべきかどうかについても、よく契約書を再読した上で、ホームと交渉したほうがいいでしょう。
入居の際に、入院のことは必ず聞いておく
何回もお伝えしているように、有料老人ホームと利用者とは、個別の契約を結びます。ホームによって考え方や決まりは異なりますので、それを利用者は事前にしっかりと理解し、納得してから契約をすることが鉄則です。
ただし、契約書に明記されていない事項、あきらかに利用者にとって不利になる事項については、ホームに糾弾してもいいですし、全国の消費生活センターに相談してもいいでしょう。
全国の有料老人ホームなどが会員となる、公益社団法人全国有料老人ホーム協会では、「入居中に入院した場合、またホームに戻れるかどうか」について、以下のように述べています。
「原則は、入院を入居契約の解除事由としていないホームであれば、退院した際に戻ることができます。中には、入院が一定期間(例えば3カ月等)にわたった場合を契約の解除事由としているホームもあるので、入居契約書や重要事項説明書で確認してください。」
いずれにしても、契約書をよく読んでから契約してください。
*このようなトラブルに関しては、地域の消費生活センターで相談を。消費生活センター等では、商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情や問合せなど、消費者からの相談を専門の相談員が受付け、公正な立場で処理にあたっています。
連絡先がわからなければ、0570-064-370で聞くことができます。
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