このところ目立つのは、インターネットを利用した買い物などのトラブル。高齢者にはあまり関係ない、と思いきや、意外にもインターネットを利用する高齢者は少なくありません。親御さんが大きな損失を被らないように、気をつけたいですね。
<構成・文:三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
資料提供:独立行政法人 国民生活センター
65~69歳で6割、80代でも3割近くがインターネットを利用
今の世の中は、インターネットなしでは夜も明けない、というほどで、下のグラフを見ても、それは明らかです。
13~19歳をはじめ、40~49歳までは、90%以上の人が利用しています。高齢者はやはり少ない……とはいえ、よく見れば、65~69歳では近年は6割が、80代でも3割近くの人がインターネットを使っています。また、高齢者ほど過去数年での利用の伸びが大きいといえます。壮年時代にはどんぐりの背比べだったのが、だんだん利用者が急増しているのが目立ちます。ICT(コンピュータやインターネットに関連する情報通信技術)の利活用が広まるにつれ、高齢者のICTに対する考え方や利用状況に変化が生じたのでしょう。
インターネットの年齢階級別利用状況

(出典)総務省「平成24年通信利用動向調査」
また、折れ線グラフのように、高齢者がインターネットを使って支出をした金額も増えています。パソコンやスマートフォンに慣れている50代、60代が年齢を重ねていくのですから、今後、高齢者のインターネット利用も急増していくでしょう。
インターネットを利用した支出総額の推移(平成14年~22年;総世帯)

資料:総務省統計局「家計消費状況調査」
アダルトサイトに登録して困惑する高齢者も……
高齢者のインターネットの金銭トラブルは、若い世代と似たような傾向にあるようです。インターネットで注文した商品が届かない、料金があいまい、破損している、などなど。また、最近のトラブルで特に目立つのは、アダルトサイトに関してです。小学生にも悪影響があるといいますが、高齢者にだって、悪影響があります。
たとえば、国民生活センターに知らされたトラブルとしては、こんなものがあります。
「パソコンで湿疹の薬について検索していた際、一覧に出たサイトをクリックしたところ、アダルトサイトにつながった。無料とあったので、サンプル画像をクリックすると『登録完了』の画面が表示され、『正規料金は9万8千円だが、2日以内に支払うと6万8千円になる』と書かれていた。あわてて、サイトに記載されていた業者の携帯電話に非通知で連絡すると、『電話番号を通知して連絡し直すように』と言われてしまった。請求画面も消えず、混乱して夜も眠れない。どうしたらよいのか。(80歳代 男性)
80代なのにアダルトサイト!?と思いますが、つい好奇心でクリックしただけで法外な料金請求が来ることがあります。こうした内容は人に相談しにくいことも手伝って、大きな被害になりがちです。しかし、恥ずかしがることはありません。地域の消費生活センターなどに相談し、被害を防いでいただきたいですね。また、安易にアクセスし、クリックやダウンロードなどをしないように、ご自分なりに注意しましょう。
カード決済のトラブルも高齢者に増えてきた
高齢者は他の世代に比べて、カードよりも現金で購入することが多いようです。例えば、1 カ月に1 度以上クレジットカードを利用するユーザーの割合は、30 ~50 代で9 割近いのに対し、60 代以上では75.0%と低いのです(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング「支払手段に関するアンケート」2010 年12 月より)。
しかし、4人のうち3人は月に1回以上、クレジットカードを使うのですから、トラブルもそれなりに多いということになります。
国民生活センターの資料では、70歳以上の高齢者の相談として「名前を書くと1000円の買い物券がもらえるというので署名したら、クレジットカードが届いた」「ポイントカードと思って作ったら、年会費の請求が来て、クレジットカードとわかった」など、商品券がもらえる、ポイントがつくなど、会員の特典ばかりを強調したクレジットカードの勧誘で被害が発生するケースが目立ちます。また、ひとり暮らしの高齢者が、普段全く使っていないカードを偽造され、不正使用されたケースもあります。
最近では、カード会社が老人ホームの支払いにカードを使い、キャッシュレス化をはかるものもあります。こうなると、高齢者も自分がどれだけお金を払っているのかわからずに請求されることも考えられます。また、前述したように、インターネットショッピングの折にクレジットカード決済をする高齢者も増えており、ますますカード決済のトラブルは多様化しています。
カードが怖いのは、本人の意識が低いところで、高額の決済がされてしまうこと。高齢者なら、できるだけ生活の中で現金決済を選ぶようにし、家族はカード会社の郵便物などにも目を配り、不当な支払いがないかどうかをチェックしてください。
次回は投資で失敗するケースについてご紹介します。