高齢者のお金を狙う悪徳業者から身を守るには、しっかりとした対策が必要です。巧みな勧誘を断るのが苦手な”人のいい”高齢者を、被害から守るために、心構えやテクニックをご紹介します。
<構成・文:三輪 泉(ライター・社会福祉士)
協力:弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士 中村雅男>
*資料提供:独立行政法人 国民生活センター
電話には出ない、出たら話を聞く前に切る!
悪徳商法業者にだまされないためには――。当然ながら、「接触しない」のが一番です。
電話勧誘販売なら、ナンバーディスプレイの電話を使い、知らない電話番号からかかってきた電話には出なければいいわけです。けれど、高齢者の場合は、電話が鳴れば出る、という習慣になっている方も多いでしょう。
もし、うっかり電話に出て、あやしい勧誘を受けそうになったら、「話を聞く前に電話を切る!」を徹底してもらってください。あれこれ話を聞くと、「これは脈があるかも」と相手は期待しますし、たくさん話を聞けば聞くほど、断りにくくなります。勧誘だな、と感じた瞬間に、「興味ありません、失礼します」と切ってしまいましょう。
「うちには同じ商品がたくさんありますから」「その商品を使って、あまりよくなかったから」などと、まことしやかな理由をつけるのも、逆効果です。相手に「この人は過去に似たような商品を買ったのだ」という情報を与えてしまいます。自分の情報を与えないことも、勧誘をきっぱり断るためには、とても重要です。
全国の消費生活相談をとりまとめる国民生活センターでも、この方法を推奨しています。
常に鍵を締めておく、ドアホンやインターホンを使う
訪問販売を断ち切るためには、やはり「接触しないこと」。まず、高齢者の家族は、高齢者に、日常的に鍵をかけておくように、お願いしましょう。かつて、日本では鍵などかけなくても、泥棒も訪問販売も来なかった時代もありました。けれど、今は防犯に気をつけるべき時代。身の安全を守るためにも、鍵をかけることを徹底してもらってください。
そして、ドアホンやインターホンがあれば、訪問内容を確かめ、会わずに断るようにします。顔を合わせなければ、断るのはそれほど大変ではないでしょう。
けれど、庭いじりをしているときに声をかけられたり、ちょっとした隙に対面してしまったりすることもあります。そんなときは、「いりません!」と叫んで、家に逃げ込むことしかなさそうです。
とにかく、話をしないこと。話を聞かないことが重要です。
「●●さんも買った」は気にしない!「●●さんがだまされた」を気にする
電話勧誘販売や訪問勧誘販売で、よくあるのが、「ご近所の●●さんも●●さんも使っていらっしゃいますよ」などというトーク。そう言われると、ご近所の手前、買わないと……、などと考えてしまう高齢者も多いかもしれません。しかし、これこそ、相手の思うツボです。
「だれが買ったとしても、自分が必要ないのだから、買わない!」と心に決めましょう。それに、実際にご近所の方に確かめてみると、「さっき、へんな営業が来たけれど、断ったわよ」などということも多いようです。
それより、「●●さんがだまされて大変だったみたい」という情報に敏感になりましょう。どんなふうにだまされてしまったのか、どんな風貌の相手だったのかなど、わかることがあれば、教えてもらい、用心したいものです。そして、あやしい勧誘があれば、ご近所の方同士、情報交換して注意するといいですね。
家族や地域の消費生活センターにも相談しよう
高価な買い物をするときには、必ず家族と相談するクセをつけましょう。「高いから言いにくい、だから黙って買ってしまう」のは、やめてもらいましょう。家族も、相談しやすい雰囲気を作ってあげることが大事です。
「自分も、高いモノを買うときには相談するから、おかあさんも●円以上のものを買うときには、買う前に連絡してね」などと言い、自分の買い物の失敗談などを笑い話にしながら伝えるなどし、気軽に買い物について話せるようにしたいものです。
国民生活センターでは以下の秘訣を挙げています。

心配なこと、困ったことがあるときは、早めにお住まいの地域の消費生活センターに相談しましょう。また、購入後も、クーリングオフ制度などを使い、商取引を解消することもできます。気軽に話してみてください。地域の消費生活センターの連絡先がわからない場合は、消費者ホットライン0570-064-370へ。
*「成年後見制度」については、第10回で説明します。
次回は「買え買え詐欺(かえかえさぎ)」という悪徳商法についてご紹介します。
プロフィール
弁護士 中村雅男(なかむら・まさお)
弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士。相続、遺言、成年後見、家庭のトラブル、不動産取引など民事全般から、商事、会社法務、行政事件、労働事件、 医療事件、交通事件、契約・交渉事件、一般刑事事件などを多数取り扱う。シニア世代の相談やトラブルへの対応経験も豊富。
ほがらか信託株式会社 代表取締役。
中村綜合法律事務所