ところで、財産をどこに、どんな形で保管していますか? 安全に管理し、紛失したり目減りしたりしない方法を親御さんにアドバイスするのも、子世代の大事な仕事かもしれません。特に、大事な証書などはなくさないような工夫をしたいですね。
<構成・文:三輪 泉(ライター・社会福祉士)
協力:弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士 中村雅男>
銀行の印鑑や通帳はまとめてシンプルに
まとまったお金は銀行に預けていることが多いと思います。勧められるままにいろいろな金融商品を求め、同じ銀行で何冊もの通帳があるケースも多いのでは? ほとんどお金が入っていない通帳、まったく使っていない印鑑などがあることも、財産管理表を作るとわかってきます。
不要と思われる通帳は解約し、同じ銀行のお金は、極力まとめてしまったほうがラクです。印鑑も、通帳ごとにいくつもあると、迷ったりわからなくなったりするので、シンプルにまとめてしまったほうがいいでしょう。
もし、まとめてみて、ひとつの銀行で1000万円以上の預金があることがわかったら、別の銀行に分けて預け、リスクの分散をしましょう。
証券や保険なども見直し、不要なものは解約し、わかりやすくシンプルにします。年齢を重ねても、「あの銀行にはいくら入っていて、通帳はこれ、印鑑はこれ」とさっと取り出せるようにすることが大事。覚えておけるような形でまとめましょう。これらの作業は、高齢の親御さんだけではなかなか難しいので、親御さんの意見を第一に尊重しながら、子世代が手伝ってあげるといいでしょう。
ただしこのときも、親御さんに「お金が欲しくてやっているのでは?」「ごまかして搾取しているのでは?」と思われない工夫が必要。親御さんの配偶者や子世代の兄弟などと何人かで確認するなど、親御さんが納得する形で進めましょう。
投資的な金融商品は減らし、信託商品も検討
株式や投資的な商品で、ただ寝かせているような場合、資産が減っている場合は、親御さんと話し合い、解約したいものです。老後のお金は、固定金利の定期預金など、安全な金融商品を中心にキープするのが原則です。ただ、「株をやることで頭を使い、老化を防止しているのだ」という親御さんもいます。それなら、金額を少なくして継続し、リスクの分散と老化防止のバランスをとるよう、アドバイスをしましょう。
信託銀行や信託会社にお金を預けるのも、リスク分散・回避にはとても有効です。信託は、管理する銀行や会社の資産として信頼して託すもの。もし投資や事業の失敗、悪徳業者の搾取などで自分のお金を大きく失ったときも、信託にした分は残るわけです。詳しくは4月21日配信の第7回目で紹介しますが、これも頭に入れておきたいですね。
大事な書類は貸金庫や「防盗金庫」へ
大きな現金は銀行などに預けておくことになりますが、大事な証券や土地の登記簿等の書類はどのように保管していますか? 家の中にあちこち分散させてしまっていると、高齢者の場合、保管場所を忘れて、取り出せないこともあります。ほかの紙くずといっしょに捨ててしまっては大変です。大事なもので、あまり頻繁に手に取らないようなものは、銀行の貸金庫を借りて、まとめて保管しておくのが安全です。火災や盗難からも守ることができます。
書類を確かめるために銀行までいちいち出向くのが大変、というのなら、自宅に金庫を用意し、保管しておきましょう。火災や地震に備えて耐火金庫を用意する人もいますが、金庫そのものを盗まれてしまうことも考えて、耐火とともに防盗機能のある、床に据えつけるタイプの「防盗金庫」を用意したいものです。書類だけでなく、大事な貴金属や宝石、小さな美術品なども収納できる容量のものが便利ですね。
次回はありがちな財産トラブルと対策についてお伝えします。
プロフィール
弁護士 中村雅男(なかむら・まさお)
弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士。相続、遺言、成年後見、家庭のトラブル、不動産取引など民事全般から、商事、会社法務、行政事件、労働事件、 医療事件、交通事件、契約・交渉事件、一般刑事事件などを多数取り扱う。シニア世代の相談やトラブルへの対応経験も豊富。
ほがらか信託株式会社 代表取締役。
中村綜合法律事務所