親御さんといい信頼関係を築き、親御さんが「老後のために財産管理をしっかりしよう」と思ってくれたなら、「財産管理表」を作り、財産をすべて書き出すことをすすめてみましょう。
「財産なんてそんなにないから、書き出すまでもない」なんて、言われてしまうかもしれません。でも、預金通帳は何冊もあるし、加入している保険だって何種類もあるのでは?
老後の計画は、財産を把握することからスタートします。親御さんも、そして子世代も、年老いてから困らないように、「転ばぬ先の杖」を用意しましょう!
<構成・文:三輪 泉(ライター・社会福祉士)
協力:弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士 中村雅男>
まずは財産を全部書き出してみよう!
財産管理表は、預金、株式、保険、不動産など、財産をカテゴリー別に分け、金額やその他の情報を書き入れるものです。下の表などを活用し、欄が足りない分は書き足してください。面倒と感じるかもしれませんが、書き出すことで資産額がわかりますし、思わぬ財産を発見することもあります。
表は二部用意し、親御さんに作ってもらうと同時に、御自身の財産も書き出すといいでしょう。子が自分で作った自身の財産管理表を親御さんに見せ、お互いに隠すことがない関係を作ることも、さらによい信頼関係を築くための効果になりそうです。
ここには、プラスの財産だけでなく、ローンや借入金など、マイナスの財産も書いておくことが重要です。プラス・マイナスで自分の資産額が決まるわけですから、マイナス要因をしっかりと把握しなければ、老後の計画も立ちません。
書くときは、鉛筆かフリクションペンで。財産の金額は刻々と変わります。不動産などは評価額も変わるので、消して書き直せるほうがよいのです。また、新しい保険に加入した、預金を解約したときなどは、新たに項目を書き足したり、項目を削除したりする必要もあります。


*オアシスナビで財産を書きだせる「財産管理表」を作成しました。印刷して使ってください。
印刷はこちら →財産管理表
エンディングノートとしての機能も果たす
こうして書き出して、財産の現実を正面から見据えると、「理想の老後資金」(第1回目参照)からほど遠く、不安になるかもしれません。けれど、親御さんが物入りのときには、持てる資金と支出をにらみ、「買うものの金額を抑えようか」「不要な保険を解約しようか」など、いっしょに具体的に対策のサポートをすることができます。御自身の財産なら老後までまだ期間があるのですから、「もう少し貯金をして、財産を増やそう」「これからは月に●万円ぐらい節約しよう」など、“財産増額”の計画も立てられます。親子で財産管理表をつけるメリットはとても大きいといえます。
最近、エンディングノートをつける人が増えています。この財産管理表は、エンディングノートの一部にもなり、もしものことがあったときにもとても役立ちます。
ただ、他人に知られたくない内容も多いですし、防犯の問題もあるので、財産管理表は貸金庫などに確実に保管し、配偶者や兄弟など、本人が公開を納得する人だけに、その保管場所や内容を伝えるようにしましょう。
次回は、安全な財産の保管の仕方についてお伝えします。
プロフィール
弁護士 中村雅男(なかむら・まさお)
弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士。相続、遺言、成年後見、家庭のトラブル、不動産取引など民事全般から、商事、会社法務、行政事件、労働事件、 医療事件、交通事件、契約・交渉事件、一般刑事事件などを多数取り扱う。シニア世代の相談やトラブルへの対応経験も豊富。
ほがらか信託株式会社 代表取締役。
中村綜合法律事務所