そろそろ財産のこと、真剣に考えよう!
急に物入りになったのに、お金がない。たとえあってもどこからどう引き出したらいいかわからない……。老後にそんなことが起きると、困りますよね。特に、親御さんが高齢になってから病気やトラブルでお金が必要になったときなど、家族はとても困ります。だから、親御さんが元気なうちに財産のこと、ちゃんと把握しておきましょう。そして、この際ついでに、御自身の財産管理もしておきましょう。早めの財産管理は、豊かな老後のために大いに役立ちます。
このコーナーでは、8回に分けて、財産の管理のしかたについてお伝えします。
憂鬱ですか? いえいえ、「備えあればハッピー!」ですよ。
<構成・文:三輪 泉(ライター・社会福祉士)
協力:弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士 中村雅男>
毎日の支出がひとり世帯で月3万円以上不足
まず、そもそも高齢者はどれぐらい財産を持っていれば安心なのか、どうなってしまうと大変なのか。それを見据えるためのデータを紹介してみましょう。
まずは、毎日の生活にかかる費用を調べてみました。平成24年の総務省の家計調査によると、高齢者無職世帯(世帯主が60歳以上の無職世帯)の実収入は、社会保障給付を中心にして18万1028円、これに対する可処分所得は15万7838円。一方、食料、住居、光熱・水道などの消費支出は20万5629円。消費支出から可処分所得を引いた4万7791円分が、世帯の毎月の赤字になっています。その多さにびっくりしますね。

平成24年 総務省 家計調査より
また、60歳以上の単身無職世帯の1カ月の不足分は3万2288円。一人暮らしでは、1人あたりの不足がより多くなる計算です。

今の高齢者は、現在の平均寿命よりもっと長く生きると言われています。実際、特別養護老人ホームなどには、90歳以上の高齢者がとてもたくさんいます。となると、60歳から90歳まで生きると計算し、夫婦2人の月額の消費支出の不足分を4万8000円と仮定すると、4万8000万円×12×30年分で、1700万円以上が不足することになります。
老後豊かに暮らすには財産は3000万円必要?
このほかに、一般的に葬儀代が200万円×2人分で400万円、お墓がない場合は墓石代などが250万円となると、おおざっぱに考えて、日常的な支出のほかに650万円程度のお金をキープしておいたほうがよさそうです。
また、家計経済研究所によれば、在宅介護にかかる費用は、平均で月約6万9000円なのだそうです。

2011年 家計経済研究所「在宅介護のお金とくらしについての調査」より
高齢になった後の介護費用のキープも必要ですね。もちろん、リタイア後の元気なうちは海外旅行なども楽しみたいですし、家のリフォームなどにもお金がかかる可能性があります。
よく、「老後、豊かに暮らすには、夫婦2人で3000万円の蓄えが必要」と言います。ざっと試算したものと照らし合わせてみても、この「3000万円」という数字は、信ぴょう性があるように思えます。
さて、あなたの親御さんは豊かに暮らせそうでしょうか?
年金や介護保険も、今後は現状の水準が保たれるかどうか、不透明です。「備えあれば憂いなし」とは、まさに老後の資金のことかもしれません。
親御さんに浪費グセがあると感じている方は、まとまった預金を作るよう、上手に促すといいですね。次回は、親御さんの財産管理サポートのタイミングと持ちかけ方についてお伝えします。
プロフィール
弁護士 中村雅男(なかむら・まさお)
弁護士法人 中村綜合法律事務所 代表弁護士。相続、遺言、成年後見、家庭のトラブル、不動産取引など民事全般から、商事、会社法務、行政事件、労働事件、 医療事件、交通事件、契約・交渉事件、一般刑事事件などを多数取り扱う。シニア世代の相談やトラブルへの対応経験も豊富。
ほがらか信託株式会社 代表取締役。
中村綜合法律事務所