皆さんご存知の通り、2014年4月1日から、消費税が5%から8%に上がります。すでにスーパーや百貨店では、日用品や衣料品を中心に増税前の駆け込み需要が強まっているようです。
では、介護の費用はどうなのでしょう。増税で値上げされる介護サービスは?在宅と施設で増税負担の度合いは変わるもの?特養と有料老人ホームの入居費は?などなど、場合によっては増税前後で負担が大きく変わる可能性があるだけに気になるところです。
ということで、前回は介護保険サービス費について取り上げましたが、今週は「施設介護のお金」について。こちらの方が増税の影響は大きいと言えそうです。
<取材・文 興山英雄>
有料老人ホームは家賃以外、負担増に
さて、介護施設のなかで、最も消費税増税の影響が出るのは有料老人ホームです。
有料老人ホームで掛かる費用……入居時に支払う入居一時金、月々の賃料、管理費、食費、水道光熱費、介護サービス費のうち、賃料は原則、消費税非課税なので増税の影響はありませんが、それ以外の費用はすべて値上げになる可能性があります。
そこで、複数の管理・運営会社に取材したところ、値上げ項目や値上げ幅について「現在、検討中」というところが多かったのですが、中にはすでに増税による料金改定の案内を出しているところもありました。一例を見てみましょう。
増税に伴う有料老人ホーム利用料の改定例※群馬県高崎市の有料老人ホーム
利用料項目 |
消費税5%(~3月31日) |
消費税8%(4月1日~) |
家賃 |
74,000円 |
74,000円 |
管理費 |
52,500円 |
54,000円 |
食費(30日) |
56,700円 |
58,320円 |
光熱費 |
3,150円 |
3,240円 |
寝具リース代 |
3,150円 |
3,240円 |
合計 |
189,500円 |
192,800円(3,300円up) |
この有料老人ホームの場合、家賃以外は増税分(3%)をそのまま料金に上乗せしていますが、「これが消費税増税に伴う料金改定の標準的なパターン」(厚労省担当者)とのこと。
では、増税による月々の負担増はいくらになるでしょうか? 計算してみると、+3,300円、年換算では+39,600円となります。しかし、ファイナンシャルプランナーの山田静江さんは「今後の資金繰りを考えるうえでは、来年10月に消費税が10%になる可能性が高いので、そこも念頭に入れておく必要がある」と言います。
紹介した有料老人ホームの場合、消費税が10%になると、月々の負担増は8%時の3,300円から5750円に上がります。入居者にとっては痛い値上げとなりそうですが、増税が始まる今後は、「自治体の助成制度への申請漏れをなくし、ムダな出費は切り詰める。個人個人がこれまで以上に節約意識を高める必要があるでしょう」(山田さん)。
その一方で、現在、有料老人ホームへの入所を検討している人にとっても消費税の増税は気がかりな問題。なにより負担額を左右するのが、入居一時金(入居時に支払う前払い金)です。有料老人ホームは、入居の際、数百万円~数千万円、高級なところでは1億円程度の入居一時金をとる施設がありますが、実は、この入居一時金に消費税を課している施設と、課していない施設があります。その違いについて、厚労省の担当者がこう説明します。
「消費税をとらない施設は『一時金は家賃(非課税)の先取り分』とし、消費税をとる施設は『一時金は食費や管理費、その他の施設サービス費(いずれも課税対象)の先取り分』とする。この解釈の違いによって、施設ごとに消費税の扱いが変わってくるのです」
そこで、入居一時金に消費税を課している有料老人ホームの場合、契約のタイミングによってその負担額が変わってくるそう。厚労省の担当者が続けます。
「一時金は、入居者にとっては将来の各種施設サービス費の前払い分という扱いなので、増税後(4月1日以後)に入居契約を結ぶと、一律8%で換算された額が請求されることになります。一方、増税前に契約して入所すれば、一部、5%で換算された額が含まれますので一時金は少し安くなります」
有料老人ホームによっては、増税前に契約すると初期費用の負担が軽くなるということ。入所を検討している人は、入居一時金に消費税が掛かっているか、掛かっていないか、契約の前に確認する必要がありそうです。
*このシリーズの1回目、2回目、3回目はこちら