介護にはあらゆる場面でお金が絡むもの。介護保険の仕組みがわかっても、実際さまざまな介護の場面でどのぐらいお金がかかるかは案外知られておらず、実際に困った経験がある人も少なくありません。
さまざまな介護の「困った」ケースを見て、自分の介護に役立てましょう。
<取材・文 興山英雄/協力 ファイナンシャルプランナー 山田静江さん>
実例

認知症と診断され、半年前に要介護1の認定を受けた一人暮らしの廣田さんの母親は、大の通販好き。
新聞チラシ、広告、カタログ、テレビ、ネットなど、あらゆる媒体で通販商品を注文してしまうが、注文したこと自体を忘れてしまい、宅配便で自宅に届くと「私はこんなものは頼んでない!!」と突き返すのだという。
母親の金銭管理は基本的に廣田さんが行うが、「通販は後払いですから、母の行為は止められないんです」。
注文があっても配送しないようにと、何度か通販会社にお願いしたが聞き入れてはもらえず……
「なかにはかなり高額な商品も送られてきます。何か効果的な対策はないものでしょうか?」
山田さんのワンポイントアドバイス
『グループホームなど施設入居も選択に入れてみては』
「おそらくお母様に『やめて』と言ったところで聞くものでもないでしょうね。『クーリング・オフ制度』を使って返品しては? と思う人もいるでしょうが、通信販売だとこれが使えません。
その対象となるのは、訪問販売やキャッチセールスなど、不意打ち的な勧誘で冷静に判断できないまま契約してしまった取引のみ。通信販売は自分から注文していますので、この制度は適用されないのです。
詳しい状況が分かりませんのでハッキリしたことはいえませんが、たとえば、お母様を注文できない状態に置くというのが得策かもしれません。
お母様の場合、一人暮らしをされているから独断で注文できてしまう訳ですから、グループホームを含めた施設に入所し、常に誰かにチェックしてもらえる環境を作ることもひとつの選択肢でしょう。
●こちらの記事も参考にしてください。
→ 認知症気味の母が、外商や詐欺のカモにされている…~介護体験談
プロフィール
山田静江(やまだ・しずえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP/FP技能士1級)。株式会社 WINKS 代表。日本FP協会埼玉支部幹事。
大学卒業後、都市銀行に入社。その後、会計事務所勤務、独立FP会社勤務を経て2001年にFPとして独立し、現在に至る。「損得ではない安心して暮らすためのプランニング」をモットーに活動している。
現在は介護や高齢者住宅問題のスペシャリストとして講演、執筆活動を展開している。
株式会社 WINKS