<ライター:葦江(社会福祉士 認知症専門相談担当)>
レスパイトケアとは?必要性やその目的
レスパイトとは「休息」「息抜き」「小休止」という意味で、在宅で介護をする家族のためのケアです。
外部のサービスに一時的にケアを代行してもらい、介護から解放された家族に休息を与えることを目的としています。
食事や排泄、入浴などの介護は毎日ですし、仕事と両立している人も少なくありません。家族の人数が多く、役割分担や交代ができれば休息の時間もとれるかもしれませんが、なかなか難しいのが現実でしょう。
体と心の休まる時間がとれない状況が続くと、家族は体も心も疲労してしまいます。最悪の場合は、家族が倒れる、家庭内で事故が起こる、暴言や暴力、虐待に発展するなどの心配も。
そのようなことが起きないためにも、レスパイトケアは大切なのです。
日中のレスパイトケアにおすすめのデイサービス
レスパイトケアには、日中をカバーするサービスと、夜間もカバーするサービスがあります。
日中をカバーする代表的なサービスは、デイサービスでしょう。
高齢者のデイサービスには、短時間型から長時間型までさまざまなタイプがあります。
リハビリだけの2時間型や、入浴とリハビリ中心の半日型、生活介護全般とレクリエーションが中心の1日型デイサービスなどがあり、レスパイトケアが目的なら時間の長い1日型がおすすめです。
食事や排泄、入浴をデイサービスでお願いできれば、家族は介護負担が減るので自分の用事を優先したり休息をとったりができます。
また、看護師がいるので健康チェックにもなるメリットがあるでしょう。
夜間のレスパイトケアで利用できる介護保険サービス
次に夜間をカバーするサービスですが、医療保険で利用できるレスパイトケア目的の病院入院の他、介護保険でさまざまな形態の施設サービスを利用できます。
どのサービスを利用すればよいのかは、高齢者の状態やご家族の考えにもよりますが、介護保険サービスに詳しいケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談されることをおすすめします。
ショートステイ(短期入所療養介護)
介護老人保健施設(略称は老健)には1か月や3か月といった期間の入所と、短期入所療養介護という名称のショートステイがあります。
入所とショートステイのどちらでも、老健では理学療法士や作業療法士からのリハビリが受けられます。
そして退所に際しては、入所中のリハビリに基づき、自宅で生活するための動作訓練や必要なリフォームなど、理学療法士から具体的な指導が受けられるのです。
ショートステイ(短期入所生活介護)
もうひとつは、短期入所生活介護という名称のショートステイです。
短期入所生活介護は、主に特別養護老人ホーム(略称は特養)や、ショートステイ専用の施設、一部の有料老人ホームで利用できます。
生活介護が主で、理学療法士が行うような特別なリハビリはありませんが、穏やかに過ごすことが目的のショートステイであれば、短期入所生活介護が適切なのではないでしょうか。
小規模多機能型居宅介護
夜間をカバーできるサービスには、小規模多機能型居宅介護もあります。
小規模多機能型居宅介護は、デイサービス・訪問介護・ショートステイのようなサービスがセットになっていることが特徴で、計画に応じてショートステイのような泊りのサービス利用が可能です(ただし泊りだけの利用はできません)。
夜間の介護負担が重いなら施設サービスの検討を
夜間に眠れない高齢者だと夜中に騒いだり歩き回わったりしてしまうことがあり、家族は睡眠不足になってしまいます。
夜間の介護量が多い場合は、施設サービスの利用もレスパイトケアのひとつとして検討していただきたいものです。
しかし、「可哀想だ」と施設サービスの利用に抵抗を感じるご家族には、必ず次の2つのことを忠告しています。
1.家族が疲れ果てて介護ができなくなれば、介護が必要な高齢者は選択の余地もなく施設に入所するしかない
2.何の経験もなく、ある日いきなり施設で生活することになった場合の高齢者の精神的負担を思えば、環境の変化が受け入れられるときに施設を経験しておくとよい
要は、介護している家族がまず健康でなければ、高齢者の自宅での生活は維持できないのです。
ただし、施設によってサービスの目的が違うため、利用はケアマネジャーとよく相談してからにしましょう。
まとめ
レスパイトケアはご家族の介護負担を軽減して休息の時間を作るものですが、高齢者にとってもメリットがあります。家族と離れることでその関係を見直せますし、同年代と過ごすという社会体験もできます。
介護は家族がするもの、と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。ですが、適切な介護サービスをタイミングよく利用することは、高齢者と家族が安定した在宅生活を続ける上で欠かせない支えとなるはずです。